バフェットの相棒、チャーリー・マンガ―に学ぶ投資の理念

11月28日に、ウォーレン・バフェットの相棒として知られるチャーリー・マンガー氏が99歳で亡くなりました。まずはご冥福をお祈りいたします。

マンガーの著作や発言に触れると、その卓越した知性が際立つと感じます。

特に、バフェットのバークシャー・ハサウェイ社の株主総会では、一般の株主を前に5時間以上にわたる質疑応答を行い、ウィットに富んだユーモアを交えつつ、マンガーはその頭脳明晰さを発揮していました。

目次

マンガーの歩み

1959年には共通の友人を介してバフェットと出会い、二人は意気投合し、何時間でも話し続けるほどの深い関係となりました。
この対話の中でバフェットも投資の考え方をアップデートしていたのだろうと感じます。

1962年には、マンガーは経済的自由を確立したいという思いから、自ら投資パートナーシップを立ち上げました。
この投資は、小規模ながらも富裕層からお金を預かって運用する形態で、当初は成功を収めていたとされています。

しかし、1973年から74年のオイルショックの時期に株価の下落に直面しました。
集中投資の、下落時の下落幅が大きいことやリスク分散が難しいことなどのマイナス面が露呈し、大きなドローダウンを経験したと言われています。
その後、マンガーは自らの投資パートナーシップを閉鎖の方向に動かしました。

 

1978年には、バフェットとの繋がりを通じてバークシャー・ハサウェイ社の副会長に就任し、バフェットの投資に大きな影響を与え続けました。
バフェットの従来の超割安投資(シケモク投資)とは異なり、マンガーは将来に渡って素晴らしい利益を生み出す企業に焦点を当てる投資哲学を提唱しました。
具体的には、シーズキャンディーズの買収や、コカコーラの大規模な投資などが挙げられます。
バフェットもこれに従い、自らの投資アプローチを変えていったとされています。
二人の異なるアプローチがお互いを尊重しながら成果を生み出していった関係が、彼らの成功につながったのでしょう。

バフェットとは違う?マンガ―の投資

マンガーの投資哲学を掘り下げてみましょう。

彼は、少数の素晴らしい企業に焦点を絞り、それらが大幅に安くなった時だけ買うということを基本としていました。
企業の将来性に焦点を当て、それが大幅に安くなった時(金融危機やリーマン・ショックなど)に投資するべきだと考えていたようです。

マンガーは自らが理解できる範囲でのみ投資し、理解できないものには手を出さないようにしていました。
世の中の全てを理解することはできないので、自分の理解できる範囲にだけ焦点を当てて、その中で本当に素晴らしいものにだけ投資するという、非常に限定的な投資を行い、だからこそ成功した部分もあると思います。

バフェットもITバブルの際には、よく分からないIT銘柄に投資せず、結果的に痛手を免れた経験もあります。

 

一方でマンガ―は、勝算が高いと判断したところには大きく賭けるとも言っています。
本当に良いと思った銘柄には大胆に投資することで高いパフォーマンスを出していました。

 

とにかく大事なことは素晴らしい企業を見極めることで、それは自分の理解できる範囲でやるべきだというのがマンガ―の考え方です。

バフェットの投資は財務諸表などの数字を見て行う傾向にありましたが、マンガ―は企業の将来を想像することに重きを置いていました。
将来を想像するためには、世の中の様々なことを知っていなければならない、つまり「教養」が必要であると言っていて、もはや投資家というよりも哲学者に近い印象を受けます。

 

私も、投資は学ぶ機会だと考えていて、マンガ―の考えにも非常に共感する部分が多いです。

マンガーの名言

マンガ―の名言を15個、ご紹介します。

1.成功とは、忍耐強く待ち、時が来たら、積極的に行動するということです。

まさにマンガ―の投資を表す言葉です。
これを実践するためには、チャンスがチャンスだと分かるまで理解する必要があります。

2.いつでも素晴らしい投資先が見つかればいいのですが、残念ながらそうはいきません。

ありとあらゆる銘柄があっても、自分の理解できる範囲にチャンスはなかなか訪れないので、分からないのなら待つべきだということです。

3.難しすぎるときは、別の案件に移ります。それ以上単純な方法はないでしょう。

ソクラテスの言う「無知の知」のように、分からないということを認識することが大事ということです。

4.チャンスを逃したことは気になりません。だれかが自分よりも少し金持ちになってもいいではありませんか。そんなことを気にするほうがおかしいのです。

 

5.人を破滅させる三つとは、薬物と酒とレバレッジです。

マンガ―ほど頭が良い人にとっても信用取引は危険だということです。

 

6.最も大事なことは、株は会社を保有しているつもりで保有することです。

これは、バフェットも頻繁に強調しています。
株を買うのではなく、長期的に考えた場合、その株を成長させるのは企業のビジネスであると言っています。
目先の株価に振り回されず、企業のビジネスに焦点を当てることが大切です。

7.良い投資家になる方法を理解すれば、良いビジネスマンになれるし、逆も同じです。

ビジネスを見るということは、ビジネスマンが知るべきことと同じであり、投資とビジネスは強く関連していると言えます。
投資を学ぶことで企業の実態や将来性を理解し、ビジネスにおいても有益な知識を得ることができます。

8.良いビジネスのほとんどは、『今日の痛み、明日の利益』的な活動です。

ビジネスを長期的に成功させるには、耐え抜き、力を蓄え、将来に利益を生むことが必要です。

9.人に予想を頼むことはありません。デスクで吐き気をもよおしたくはないですから。

10.群衆をまねすれば、平均に回帰することになります。

特に個別株に投資する人にとっては、自分の道を貫くことが必要な資質だと思います。

 

11.優れた株の選択ができるようになるためには、ある程度の一般教養が必要だと思います。

ビジネスが成功するかどうか判断するためには世の中のいろいろなことを知っている必要があり、教養を少しずつでも身に着けていくことがやがて優れた株の選択につながっていくということです。

12.みんな計算ばかりして、考えていません。

PERや利益予想などに着目しがちですが、もっと先を見通して、ビジネスの永続性などを考えることも大事です。

13.ウォーレンはよく割り引きキャッシュフローの話をしていますが、彼が計算しているところを見たことがありません。

これは意外に思うかもしれません。
DCF法などの計算方法はありますが、これは実はかなり恣意的な部分が大きいのです。
大事なことは計算よりも、知識や知恵を使って企業の将来を見通し、判断することです。

14.自分がバカなヤツだと認めている人が好きです。間違いを犯して嫌な経験をしたほうが、良いパフォーマンスを上げられるようになることは分かっています。ぜひ覚えておいてください。

一番危険なのは、「自分は間違わない」と思っている人です。
間違いを犯して、学び、その経験を次に活かすことが重要です。

15.唯一の法則などない。投資家は、企業と人間の本質、様々な数字について多くを知る必要がある。……それさえ知っていれば成功するといった類いの、魔法の法則の存在を信じてはならない。

書店やネット上には『コレだけやれば〇%利益が出る』というような言葉が溢れていますが、そんなものはありません。
様々なことを知って、最終的に自分の中で知恵として判断することが投資家に求められる資質だと言っています。

 

 

 

長期投資家の皆さんへアドバイス

自分の理想の投資先をイメージすることが大切です。
自分が投資したい企業やビジョンを考え、それに合致する企業を見つける努力をし、もし本当に素晴らしい企業だと思える企業があればそこに投資することが正しい選択になるでしょうし、もし金融危機などが起きて、一方でその企業は大丈夫だと思えるならそこで大きく投資することが投資家として成功する秘訣だと思います。

 

理想の投資先をイメージしているだけですぐにチャンスが巡ってくるわけではありません。
様々な企業を見て、あれこれ考えてみることも大切です。
しかし、理想的な投資先をイメージし持っていることで、やがてそれに合致する企業に出会うことができるでしょう。
その判断は、自分の知識や教養、考え方が総合して導き出される結論ということになります。

 

私はこの『知の総合格闘技』としての投資が非常におもしろいと感じています。
ぜひ皆さんも体感していただきたいと思います。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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