グレアムやバフェットと並ぶ有名なバリュー投資家に、ジョン・テンプルトン(1912 – 2008)がいます。彼の投資哲学は、割安なものに投資するのはもちろんのこと、揺れ動く市場での振る舞い方を教えてくれます。私が最も参考にしている投資家と言っても過言ではありません。
悲観の極みは最高の買い時
ジョン・テンプルトンが遺した有名な言葉があります。それは市場の流をわかりやすく示したものであり、バリュー株投資家がいかにふるまうべきかを集約したものです。
強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔の中で消えていく。悲観の極みは最高の買い時であり、楽観の極みは最高の売り時である。
市場の歴史を振り返ると、ここに書かれていることが幾度となく繰り返されています。それでもなお繰り返すということは、もはや普遍的な法則と言っても良いものでしょう。
言葉で言うのは簡単ですが、悲観の中で買うのは強靭な精神力が要求されます。誰もが将来に対して不安を抱いているなかで、自分だけが逆の方向へ歩かなければならないのです。
しかし、多数派と違う動きをしなければ、大きく儲けることはできません。バリュー投資は根本的に孤独との戦いであり、それを許容できる人だけが成功できると言っています。
多数派に染まらないためにも、テンプルトンやバフェットは、金融の中心地であるニューヨークから離れたところに拠点を構えました。(テンプルトン=バハマ、バフェット=オマハ)
見通しが最も暗い銘柄はどれか?
銘柄選びに関しても彼は徹底的にバリューを追求しています。「8割引きになっていなければ良いバーゲンとは言えない」と言うほど、割安さにこだわっていたのです。
それほど割安な銘柄は簡単に見つかるものではありません。割安な銘柄を見つけるために、バリュー投資家は「不人気銘柄の賢い買い手」でなければなりません。不人気銘柄を買うと言う点では、グレアムも全く同じことを言っています。
「人は『見通しが最も明るい銘柄はどれか』と聞いてくるが、本当は『見通しが最も暗い銘柄はどれか』と聞かなければならない」というのは、まさに彼の投資哲学を言い表したものと言えます。
もちろん、闇雲に見通しの暗い値下がり銘柄を買っていては落とし穴にはまってしまいます。単に値下がりした銘柄が本質的な価値よりも割安という保証はありません。割安な銘柄を見つけたら、その原因を明確にしなければならないのです。
むしろ彼は、値下がりの原因を積極的に活用することにより、本質的な価値に対する「ミスプライス」を見つけ出すことに執念を燃やしました。ミスプライスの原因が一時的なものであれば、その株は本来の価値に対して割安だと断定することができるのです。
世界中から割安株を探す
テンプルトンのもう一つの特徴は、米国に限らず世界中で割安株を探し求めたということです。1960年代のまだ経済的に力を付ける前の日本株に投資を行い、大きな利益を挙げました。同様に、発展途上の韓国株への投資も行い成功しています。
お金に国境は関係なく、割安なものは割安です。外国株や新興国株への投資は情報不足に悩まされますが、彼はそれを逆手に取りました。つまり、情報不足こそミスプライスの源泉だと考えたのです。
もちろん、それにはリスクが伴います。だからこそ、徹底的に調べることで真実を突き止め、多数派と違う動きを採ることで大きな利益を挙げることができたのです。
日本株と言えば、のちにバブル崩壊により株式市場は大打撃を受けますが、テンプルトンはそれよりもずっと前に日本株から手を引いていました。一時的な大きな利益は逃したかも知れませんが、結果的に重大な損失を避けることができたのです。
「日経平均が10万円になる」とまで言われた過度の楽観のなかで強気相場の終焉を予期し、まさに冒頭の言葉どおりに行動した結果だと言えるでしょう。亡くなる直前には、目の前に迫ったリーマン・ショックを予見していたとも言われています。
テンプルトンの投資哲学を著した『テンプルトン卿の流儀』は私のお守りのようなものです。これを読むことで精神的な強さが養われます。ご一読をおすすめします。
※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。
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