日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位に転落してしまったというニュースが出ました。
これを聞いて、日本経済や日本株に不安を抱いている人も少なくないと思います。
今回はその不安に一つの方向性を示したいと思います。
GDP、ドイツに抜かれても気にすることなし?
かつてはアメリカに次いで世界第2位の経済大国であった日本ですが、中国に抜かれ、そしてドイツに抜かれて4位になってしまいました。
次にはインドが迫っていて、日本が5位になるのも時間の問題だと言われています。
中国やインドに関しては、人口が日本の10倍以上なので、GDPで抜かれることは当然のことであり、貧しかった国が豊かになっていくのは世界的にも良いことだと言えます。
一方、ドイツの人口は約8,000万人で、日本よりも少ないです。
そのドイツに抜かれてしまったということは、日本の経済が弱まったということなのでしょうか。
ドイツの経済状況が良くてGDPが日本を抜いたのかというと決してそうではありません。
今回のGDPは経済の良さとは違う要因によるものが非常に大きいものなのです。
為替
GDPはドル換算されます。
皆さんご存知の通り、今は円安となっています。
1ドル=100円から1ドル=150円になると、中身は変わっていなかったとしても、ドルベールで見たGDPは3割下がってしまいます。
ドルで計算する以上、為替を考慮する必要があります。
ドイツはユーロなので、ユーロと円の為替を見てみましょう。
この1年で、1ユーロ140円くらいから160円くらいまで、14%ほど円安が進んでいます。
2020年は120円くらいだったので、そこからすると3割ほど円安になっています。
為替の影響だけでもGDPに3割の違いが出ているということです。
物価
GDPは名目GDPであって、ユーロで見た時の増減、円で見た時の増減、という形になります。
日本でもインフレが進んでいますが、ドイツではさらにインフレが進んでいて、物の値段が上がっています。
2023年のインフレ率は、ドイツが約6%に対して日本は約3%です。
ヨーロッパは物価高となっていて、給料が増える人たちは良いですが、増えない人たちは生活に苦労するほど物価が上がっています。
背景にはロシアとウクライナの戦争があり、ドイツにはロシアからパイプラインで天然ガスを送っていましたがそれがストップされて、エネルギーの価格が上がってしまいました。
生活に関しては、日本よりもドイツの方が苦しい状況にあると思います。
よって、GDPがドイツに抜かれたということは気にする必要はありません。
日本はアフターコロナで外国人観光客の増加などポジティブな面もある一方、ヨーロッパは景気も悪く、このGDPのニュースは冷静に見る必要があります。
日本のGDPが伸びないワケ
日本のGDPがここ30年ほど伸びていないことも事実であり、悲観すべき部分も確かにあります。
しかし、日本が貧しくなっているかというと、必ずしもそうではないと思います。
海外では貧富の差が大きく、ホームレスやスラムもあったりします。
しかも、実は日本はお金持ちの国でもあります。
個人金融資産は2,000兆円を超え、世界第2位となっています。
なぜ、金融資産は多くあるのにGDPが低いのでしょうか。
それは、年齢構成を考えれば明白です。
GDPは1年でどれだけの付加価値を生んだかということです。
付加価値を生むのは、基本的には生産年齢人口です。
GDPは、生産・消費・給料(分配)の3つで測ることができますが、これらの動きが大きいのは働き盛りの人たちということになります。
働き盛りの人口が多いとGDPが伸びやすいということになりますが、日本は高齢社会です。
高齢者はほとんどの人は働きませんし、給料ももらいません。大きな消費もあまりしません。
ということは、必然的にGDPは下がっていくことになります。
一方で、老後のために貯金をしていたりすると、金融資産は積み上がっていくという状況です。
つまり、今の日本は、お金は持っているけどあまり使っていないからGDPが低いということであり、そこまで悲観する必要はないということです。
株式投資とGDP
株価とGDPは連動するものではありません。
株価は、目先では上がったり下がったりするランダムウォークですが、長い目で見た時には企業の利益と連動します。
バブル期の頃からすると、長期にわたって、特に上場企業に関しては利益を増やしてきています。
『21世紀の資本』を書いたトマ・ピケティ氏が提唱している、「RはGより大きい」、つまり、投資によるリターンはGDPよりも大きい、という論理が働いていると言えます。
株価とGDPが連動しないもう一つの理由として、株式が必ずしも日本国内だけで考えるものではないということがあります。
国内で稼ぐ企業もありますが、海外で稼ぐ企業もあり、海外での利益は必ずしもGDPに反映されていなかったりします。
つまり、日本企業が海外売上比率を高めれば高めるほど、利益は上がってもGDPは上がらない状況となり、GDPと株価の差は大きくなります。
さらに、海外での売上には円安が貢献しています。
円安は名目GDPを下げるマイナス要因であると先述しましたが、企業にとって円安は大きなプラス要素となります。
円安になるほど海外で売りやすくなり、利益が増え、株価が上がるということになります。
海外で稼ぐ企業に投資すべき
GDPの一側面として賃金があり、国内で働いている人たちにとっては賃金が上がらないということも事実ですが、株式に投資をしていたら、円安によって企業が海外で稼いでくるとしたら、株価は上がっていくことになります。
冒頭の、「日本株に投資していて良いのか」という問いに対する答えとしては「良い」ということになり、特に海外で稼ぐ企業への投資は大賛成となります。
今、半導体業界が盛り上がっていますが、この半導体がまさに海外で稼げる分野で、日本企業が他には真似できない技術を持っていて、世界中で使われる半導体の部材や製造装置を作っています。
一見国内向け企業に見えても、海外に進出して株価を上げている企業もあります。
その最たるものがユニクロです。
ユニクロの海外店舗の割合はもはや67%です。
売上高で見ても5割を超えています。
日本国内では成長は難しいですが、海外に進出してさらに稼いでいて、当然株価も上昇しています。
このファーストリテイリングの歴史というものが、日本企業が辿るべき道といっても過言ではないと思います。
【割を食う労働者】
このGDPと株価の論理で、最も割を食っているのが労働者です。
企業の利益が増えても賃金が増えていないですが、その低賃金が海外での競争力を高めている側面もあります。
海外で利益を出す企業に投資をすれば、少なくとも賃金で割を食っている部分は補填できると考えることもできます。
日本株は第3ステージへ?
日本株を超長期で研究している岡本和久という方は、明治時代の殖産興業での上昇、第二次世界大戦で停滞、高度経済成長期、バブル崩壊後の停滞、これを経て2000年頃からの日本経済は第3次の上昇局面にあるのではないかと述べています。
感覚的な部分も多いですが、確かにそう思える状況でもあります。
国内にとどまっている企業の成長は難しいと思いますが、日本株がダメということはなく、海外進出を上手くやっている企業は利益を増やし、株価も成長するだろうと考えられます。
悲観に流されず、ポジティブで豊かに
株式投資は、株価が成長することを前提として行うものなので、物事を悲観しすぎる人はなかなか上手くいきません。
ニュースの悲観的な論調に惑わされることなく、ポジティブに投資を続けることで、豊かさが手に入ると思います。
GDPについては分かりませんが、個人金融資産2,000兆円を上手く投資して増やすことで、国として豊かになっていけるのではないでしょうか。
今後も長期投資に役立つ情報を発信してまいります。更新情報や有益な情報をお届けしますので、以下のボタンから無料のメールマガジンへご登録ください。
コメントを残す