米国市場はカジノ的!?「バフェットからの手紙」を読む

「アプリよりアイスだ」
これはバフェットが10年後にどちらが生き残っているかと問われた時の言葉とされています。

バフェットはこの半世紀で莫大な資産を株式投資によって築き上げてきました。
その真髄が濃厚に語られているのが、『バフェットからの手紙』と呼ばれるバークシャー・ハサウェイ社のアニュアルレポートです。
そのアニュアルレポートの最新号が先日発刊されました。

今回はその中身に触れながらバフェットの投資の真髄を解説したいと思います。

生成AIブームで半導体銘柄が高騰。ITバブルと同じ?

バークシャーはバフェットが経営する投資会社で、投資会社のアニュアルレポートは日本の有価証券報告書と同じように開示されるもので、インターネットでも見ることができます。

バークシャー・ハサウェイ アニュアルレポート(Google翻訳版)

今回のアニュアルレポートには、かなり衝撃的な言葉が並んでいましたが、特に「米国市場はカジノ的だ」という言葉はニュースなどでも取り上げられました。
”カジノ的”と聞くと、バフェットが今の米国市場に対して危険な香りを感じているのではないかと思ってしまいますが、ヘッドラインに踊らされることなく、しっかりと中身を読んで真意を読み解くことが大切です。

 

今、日本株が非常に好調です。

特に好調なのが半導体関連で、東京エレクトロンやアドバンテスト、レーザーテックといった半導体銘柄が日経平均を大きく引き上げています。

また、バフェットが日本の商社株を買ったことで日本の割安株に注目が集まり、これも日本株を上昇させる要因となりました。

 

半導体を取り巻く雰囲気は2000年頃のITバブルに酷似しています。

インターネットが始まった頃、日本でも「IT革命」ということで、とにかく「ドットコム」と名の付く会社がもてはやされて株価がどんどん上がりました。

 

しかし、バフェットは当時、IT銘柄には一切手を出しませんでした。
周りの投資家からは、「バフェットの時代は終わった」ともささやかれました。

ところがそのITバブルは崩壊し、バフェットはその難を逃れることができました。

 

もちろん、今のエヌビディアなどの上昇が当時のITバブルと全く同じというわけではありません。
なぜなら、エヌビディアはきちんと利益を出していて、その利益がどれだけ上がるかというところに人々が熱狂しているからです。

ITバブルの時は、とにかく「ドットコム」と付いている企業だったらどこでもよくて、利益どころか売上すらほとんど出ていないような企業もありました。

それに比べると今回の半導体株の高騰は中身があるのでかなりマシな状況です。

「流行」より「定番」

ここで大事になるのが、バフェットの「アプリよりアイスだ」という言葉です。

正確には、バフェットがある会社のアイスを見ながら、「この○○社のアイスは(パソコンやスマホなど)アプリケーションより長く残るだろう」と言ったということです。

 

これは世の中の真理をついた言葉だと私は思います。

新しいものや流行りのものは、確かに流行っている時は大きく上がったりしますが、流行が終わると影も形も無くなってしまいます。

それに対して、定番となったお菓子は、今も昔も変わらず残っています。

バフェットは、そういう定番品に投資するべきと言っているのです。

 

定番品には成長性が無く、エヌビディアのようなホットな銘柄に投資した方が儲けられると思ってしまうかもしれませんが、ここにバフェットが重視している大事な考え方があります。
その考え方が今回のアニュアルレポートにも記されています。

バークシャーの投資ルールの 1 つは、これまでもこれからも変わりません。
それは、資本を永久に失うリスクを決して負わないことです。
アメリカの追い⾵と複利の⼒のおかげで、私たちが活動する舞台では、⼀⽣のうちにいくつかの良い決断を下し、重⼤な間違いを避けることができれば、これまでも、そしてこれからもやりがいを感じられます。

どれほど儲ける可能性があろうとも、大きく損をすることになってしまうと、継続的な資産の増加を阻んでしまうということです。

いくら倍々ゲームで増やしていって、瞬間的には仮に1億円になったとしても、その次に半分になってしまっては元も子もなく、そういったリスクを負わないようにすることがバフェットの投資法です。

10年後にどうなっているか分からないものに投資するよりも、10年後も高い確率で残っているものに投資した方が、失うリスクを避けることができ、その失わないものの中で少しでも良いものを選ぶというものがバフェットの投資の考え方です。

バークシャーにおける私たちの⽬標はシンプルです。
私たちは、基本的で永続的な良好な経済性を享受している企業の全部または⼀部を所有したいと考えています。
資本主義の中で、⾮常に⻑期間繁栄するビジネスもあれば、陥没⽳に陥るビジネスもあるでしょう。
どちらが勝者でどちらが敗者になるかを予測するのは、思っているよりも難しいです。
そして、答えを知っていると⾔う⼈は、たいてい⾃⼰妄想か蛇油のセールスマンのどちらかです。

バークシャーでは、将来的に⾼い収益率で追加資本を投⼊できる稀有な企業を特に⽀持しています。
これらの企業のうちの 1つだけを所有し、ただじっと座っているだけでも、ほぼ計り知れないほどの富を⽣み出すことができます。
そのような保有資産の相続⼈であっても、可能性はあります。 ‒ 時には⼀⽣を余暇に過ごすこともあります。

バフェットですら、勝者・敗者を予想するのは難しいと言っています。
まして、エヌビディアが本当に勝つのか、ITの世界でどこが覇権を取るのかということを予想するのはまだまだ難しいでしょう。

バフェットはこのような難しい判断が多くある中で、厳選して投資しています。

世の中で騒がれているものとは一線を画して、自分で見て、経験して、目利き力を付けて、本当に良いと思えるものを選び、良いと判断したら黙って持ち続けることで莫大な富をもたらすということです。

これは簡単なようで非常に難しいことです。
どちらが勝者になるか判断するのは難しいとしながらもそこからさらに厳選しなければなりません。
そのためには多くの企業を見て、良し悪しを判断する目利き力を身につけることが大事で、期間も短期的ではなく長期的に見る必要があります。
ただ、それができた暁には多くの富を得ることができると言っています。

 

バフェットがその投資を体現してきたのが、コカ・コーラとアメックスということになります。

Coke と AMEX はどちらも、その主⼒製品と同様に世界中で知られる名前になりました。
液体の消費と疑いのない経済的信頼の必要性は、私たちの世界にとって時代を超越した必需品です。

「時代を超越した必需品」というものがどれほどあるでしょうか。
生成AIのブームも確かにすごいもので、時代を変えるかもしれません。
ただ、10年後にそれが中心にいるかというと難しいところがあるかと思います。

 

強いて言うなれば、ITの世界で時代を超えて中心にいるのはMicrosoftではないかと思います。
生成AIのブームでも中心にいますし、パソコンも使われ続けています。
時価総額も、過去20年間もトップに君臨している稀有な企業です。

このような企業を見つけることができたのなら、あとは持ち続けるだけだとバフェットは言っています。
目を磨くということが長期投資には必要となってきます。

コカ・コーラとアメックスからの教訓?本当に素晴らしいビジネスを⾒つけたら、それを継続してください。
忍耐は報われます。

そして、1 つの素晴らしいビジネスが、避けられない多くの凡庸な決定を補うことができます。

バフェットも、判断を誤ったり、買った株をすぐ売ったりもしています。
一つの素晴らしいビジネスさえ保有していれば、その一つのビジネスで最終的には大きな資産を育ててくれるということです。

これは投資に限らず企業経営にも言えると思います。
良いものを見つけたらそれを継続することがビジネスでも勝ち筋になるでしょう。

「米国市場はカジノ」の真意

巨額の資⾦と業績の確実性の両⽅で市場の掌握に即座に対応するバークシャーの能⼒は、時折⼤規模な機会を提供してくれるかもしれません。
株式市場は初期の頃に⽐べて⼤幅に拡⼤していますが、今⽇の積極的な参加者は、私が学⽣だった頃よりも精神的に安定しているわけでも、教育が進んでいるわけでもありません。
理由は何であれ、今の市場は私が若かった頃よりもはるかにカジノのような動きを⽰しています。
カジノは現在多くの家にあり、毎⽇住⼈を誘惑しています。

これは、カジノのように、上がったり下がったりが激しくなっているということを言いたいのではないかと思います。
AIやシステムトレードの影響で、上がる時は大きく上がり、逆に下がる時も大きく下がるということになります。

通信の速度とテクノロジーの驚異により、瞬時に世界中が⿇痺しやすくなり、私たちは信号機以来⻑い道のりを歩んできました。
このような瞬間的なパニックは頻繁には起こりませんが、必ず起こります。

こういう警告は、コロナショック直前の2019年のアニュアルレポートにも書かれていて、もちろんコロナショックを予見していたわけではありませんが、市場が浮ついているという感覚は持っていたのではないかと思います。

私は、バークシャーはこれまで経験したことのない規模の⾦融災害に対処できると信じています。

あくまでバークシャーは大丈夫だが、リーマンショックのような金融危機が起こるとも読み取れる記載になっています。

基本は変わらない

私たちは今回のアニュアルレポートを読んで、本質に立ち返ることも必要だと思います。

暴落はいずれは来るものです。
大事なことは暴落が来た時にどうするかということで、そこで慌てて売ってしまうのは最悪の選択だということです。

バフェットの教訓としては、暴落はチャンスで、その時に「永久的なの堀」を持っている素晴らしい企業を買えば、長期間の中でやがて資産は増えるだろうということです。

 

これだけ上昇が続くと、基本的な教訓を忘れがちです。

ただ、バークシャーの現金は過去最高に積み上がっています。
収益機会が見つからないとも取れますし、下がった時に大きく動くつもりなのかもしれません。

このあたりを注視しながら長期的な目線で考えていきましょう。

 

投資をしているといろいろなことがありますが、無茶な投資をしたり、浮かれて一気に資産を溶かすようなことは決してしないようにしましょう。

10年後も大丈夫だと思えるものを買って、それを持ち続けるということを忘れずに投資を続けていきましょう。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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