今回は、タワー投資顧問の運用部長を務め、かつて長者番付で1位になったこともある清原達郎氏の本『わが投資術』を紹介します。
この本に書かれている投資法は、個人投資家の皆さんにとって役に立つと思います。
タワー投資顧問はどんな会社?
当社と同じ「投資顧問」という名が付いていますが、つばめ投資顧問は純粋な”助言業”を行っているのに対し、タワー投資顧問はどちらかと言うと”運用会社”に近いものです。
一般的な投資信託ではなく、一部のお金持ちや法人が買うようなファンドを運用しています。
会社としては小さいですが、扱っている金額は最大で3,000億円ほどにもなっていました。
清原さんはそのタワー投資顧問の運用部長を務め、ファンドマネージャーとして活躍していました。
とはいえ、一介のサラリーマンが個人資産800億円で長者番付で1位になれたのは、ヘッジファンドという業界の特殊な仕組みがあります。
ファンドマネージャーが出した利益の一部が会社にもたらされ、会社に入った利益の大部分はファンドマネージャーに渡るというものです。
例えば、運用益の20%が会社に入るものだとして、3,000億円を運用して20%の利益を出したとすると、利益は600億円となり、その20%の120億円が会社に入ります。
その大部分がファンドマネージャーのものになるので、100億円くらい得られることになります。
儲ける時は大きく儲けますが、一方で成績が奮わなかったらすぐクビになったり、激しく叱責されたりする世界です。
清原さんがいよいよ引退するということで、今回本を出版したそうです。
ファンド自体は1998年から25年間やられていて、その間にファンドは当初の基準価格から91倍に膨れ上がりました。
年間リターンに換算すると19%くらいになります。
年間19%というと、ウォーレン・バフェットの実績と同じくらいになります。
清原さんはファンド設立時に個人資産5,000万円を投じ、リーマンショック時の会社の危機にまた私財の30億円をつぎ込み、それが最終的に800億円にまでなりました。
運用リターンに関してはバフェットと同じくらいですが、運用手法はバフェットとは大きく違い、かなりリスクを取った運用をしています。
「ロング・ショート戦略」という、一方で株を買いながらもう一方で空売りをしているような、組み合わせで収益を狙うやり方です。
空売りに関しては、本人も本の中で述べていますが、あまりうまくいかなかったようです。
ITバブルの時に空売りを仕掛けましたが、予想外にに株価が上がり続け、かなり窮地に陥ったそうです。
結局はバブルがはじけて事なきを得ましたが、本格的に儲けることができたのはやはりロングだったように見えます。
中小型株戦略
では、どのように株を保有していたかというと、大まかには中小型株を買っていました。
中小型株というと、今は無視されている傾向がありますが、5年ほど前はグイグイ上がっている期間もありました。
日本では、小さい企業も多く上場していて、証券アナリストも全てを把握できず、本当は良い企業なのに誰も見ていなくて割安に放置されていることがままあります。
もちろん、中小型株一つ一つの会社を見ると事業が上手くいくか分からない部分も多く、小さい会社になればなるほど経営者次第となるので、投資するのは一か八かという部分もあります。
しかし、その中の一部の企業は大きく伸びることがあります。
清原さんは「中小型割安成長株」と呼び、例えばPER5倍程度で、”もしかしたら成長するかも”というところに目を付けていたということです。
PER5倍というと、多くの人が衰退するのではないかと思っているような数字です。
これが実際には衰退せず、PERや利益を伸ばすことができれば、株価が何十倍にもなる大化け株となり得るのです。
この大化け株を百発百中で当てることはもちろん不可能なので、いくつかポートフォリオを組んでその中で大化け株が出るという形になります。
タワー投資顧問が目を付けた銘柄として、初期の頃のニトリがありました。
当時のニトリは説明会も行わず、情報が無かったのですが、そこに取材に行って似鳥会長はすごい人だと確信して買ったということです。
とにかく、中小型で、割安で、成長の可能性がある、というところに投資をして、その中に一つでも当たりがあれば大きく増えるということになります。
逆張り
タワー投資顧問の投資のもう一つの特徴として「逆張り思考」があります。
バリューを重視し、人が殺到している割高な銘柄ではなく、世の中から見過ごされた銘柄に目を付けるという点ではバフェットの投資法と似ていると言えるかもしれません。
この考え方で、リーマンショックの時には当時安くなっていたREITや、会社の不祥事で上場廃止危機にあったオリンポスに投資するなどして大きな利益をあげました。
コロナショックの時に投資をしたのは銀行株だったそうです。
銀行株は今かなり好調となっていて、その恩恵を受けていることになります。
逆張りも簡単ではないですが、上がっている銘柄を買う方法(トレンドフォロー)にも危険性があります。
確かに、上がっている銘柄を買うので、買った次の日には利益が出たりもしますが、ある時急に反転して下落が止まらなくなります。
トレンドフォローをしていると、いつ大きく落ちるか分からないので、チャートに張り付いていなければならなくなります。
個人投資家は逆張りの方がやりやすいのではないかと清原さんは述べています。
失敗から学ぶ
本の中には清原さんの失敗も書かれています。
特に厳しかったのはリーマンショックの時で、株価が暴落したので顧客である投資家が資金を引き上げようとし、さらに当時信用取引も行っていて、取引先のゴールドマンサックスが信用取引できる金額を引き下げたため、ファンド閉鎖の危機に陥りました。
この時は、私財を投じたり顧客を説得するなどしてなんとか繋ぎ止めたということです。
この話の教訓として得られるのは、信用取引は危ないということです。
本の中にも「信用取引は絶対にやるな」ということが書いてあります。
本の中では、失敗について以下のように語られています。
人間は3種類いて、1つは自分の犯した間違いから学ぶ人、2つ目が他人の間違いを他人事だと思わずに自分事として学ぶ人、3つ目が自分の間違いから学ばない人です。
この中で一番良いのは2つ目の他人の間違いから学ぶ人ですがこれを実践できる人はほんの一握りで、普通の人は自分の失敗から痛いほど学ぶしかないと言っています。自分で真剣にやって失敗したらそこから得られる学びというものは非常に多く、そういう失敗を繰り返して投資家として成長するしかありません。
今こそ中小型株
私は今こそ中小型株への投資のチャンスだと思っています。
世の中は日経平均の銘柄や半導体銘柄に注目していますが、一方で中小型株は忘れ去られていて、この中には当然成長が期待できる銘柄もあります。
トレンドフォローの投資家はホットなところにいる必要がありますが、目先の利益を気にしなくて良い個人投資家は、せっせと仕込めるタイミングだと思います。
清原さんが説明したやり方は、今大きく割安で、将来成長するかもしれない銘柄を20銘柄くらい持っておいて、下がった時は下がった順に買っていけば下手なことにはならないということです。
小型株に投資をするなら、百発百中を目指すのではなく、「当たるかもしれない」くらいの心持ちで臨むのが良いかと思います。
そもそも、「小型株を買える」ということが個人投資家のメリットでもあります。
大きなファンドが時価総額数百億程度の銘柄を買おうとすると、自分の買いが株価を引き上げて身動きが取れなくなってしまいます。
最初は小型株のファンドであっても、大きくなるにつれてたくさんの銘柄に分散しなければならなくなり、特質性のあるファンドとして意味をなさなくなり、ただのインデックス買いのようになってしまいます。
これで苦しんでいるのがひふみ投信で、元々は中小型株の投資信託として大きなパフォーマンスをあげていましたが、ファンドの規模が大きくなり小型株が買えなくなってしまって、アメリカ株を買ったり大型株を買ったりと、方針が定まらなくなっています。
個人投資家なら、ファンドを買うのではなく、自分で組み立ててやった方が良いと清原さんは言っています。
”わが”投資術を確立せよ
投資の世界では、誰かが良いと言うから良いというわけではありません。
みんなが良いと言い出した時にはもうその相場は終わっています。
多くの人が地味だとかつまらないと言って寄り付かないところにこそ旨みが潜んでいるはずだと、本にも書かれています。
投資格言にも、『人の行く裏に道あり花の山』というものがあります。
投資が上手くなりたいのであれば、これを心に留めて、最後は自分を信じて投資を続けていただけたらと思います。
信用取引や空売りは、プロである清原さんですら苦しめられたものであり、やはりおすすめできません。
タワー投資顧問の最大の成功要因は25年間も生き残ったことだと思います。
最も大事なことは運用を続けることであり、それを忘れずに投資に励んでいただきたいと思います。
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