日経平均なぜ下がる?相場を知るために最低限抑えるべきポイント

ここのところ日経平均株価の調子が良くなくて、特に直近にかけて大きく下がってきています。

なぜ株価が下がるのかポイントを抑えていれば、少しでも不安を和らげて、変に慌てることなく適切な行動を取ることができるようになるはずです。

投資を始めたての方、あるいは投資を行ってきたけれどもどのように相場を見れば良いか分からないという方にとって必見の内容ですのでぜひお読みください。

みんなは何を見てる?

出典:Google

株式市場は”経済の温度計”と呼ばれ、経済の調子が良い時や、個別の株に関してはその企業の業績が良い時には株価が上がることになります。

しかしこれは目先に関しては必ずしも当てはまりません。

いくら経済や企業の調子が良くても、株価を動かしているのは端的に言うと「需給」なわけです。
買いたい人がより強気な場合は株価が上がり、売りたい人が弱気だと株価が下がります。
したがって、目先の株価は人々の心理によって動くことになり、そこに明確な根拠があるわけではありません。

ニュースなどで、後になってから株価の動きの解説があったりしますが、それはあくまで”後から”言えるもので、その前の段階ではどちらに動くかは分かりません。
実際に出てきた数字と株価はリンクしないことも多く、株価の解説は後講釈にしかならないということです。

 

一方で、世の中の投資家が何に注目しているかを知ることで、「なぜか分からないけど株価が下がっている」という最も不安な状態に陥ることは避けることができます。

インフレ・金利

今、人々が注目していることは、インフレ金利です。

少し前にさかのぼりますが、コロナショックの時にアメリカの中央銀行は、悪くなりそうだった景気を良くするために金利をほぼ0というところまで引き下げました。

出典:FRED

しかし、金利を引き下げるとバブルやインフレを引き起こすことになります。
実際に金利の引き下げやサプライチェーンの混乱によってアメリカのインフレ率はどんどん上がっていきました。

物の価格が上がると、特に年金受給者などの生活が不安定になるので、インフレを抑えるために、要因の一つである金利を大きく引き上げました。

株式市場的には、金利の上昇は株価の下落要因となります。
例えば、お金を借りて投資を行っている人は金利が上がると簡単にはお金を借りられなくなり、株式市場に流れるお金は減ることになりますし、割引率の計算によって企業の評価(=株価)は下がることになります。

割引率などの話はここでは割愛しますが、詳しく知りたい方は「ディスカウントキャッシュフロー」について調べてみてください。

金利上昇を受けて、2022年から1年間、S&P500は下落基調が続きました。

出典:Google

その後、2023年後半から今にかけて、インフレはある程度落ち着いてきたので今後は金利を引き上げず、むしろ利下げに移るような動きも見せています。

 

インフレが収まったことが確認できたら利下げを行うことになるため、人々はインフレ率に注目することになります。

出典:Investing.com

2021年から2022年にかけてインフレ率が非常に高く、そこからすると下がってはきました。

しかし、2023年後半から2024年にかけて、思いのほかインフレ率が下がらないという状況が続いています。
FRBは安定的なインフレ率として2%を目標としていますが、そこまでは下がらず3%くらいのところでとどまっています。

人々の予想よりインフレ率が下がっていないということです。

インフレ率が思ったより下がらないということになると、金利も下がらないということになり、金利が下がることを見越して上がってきた株価が続かないということになります。

中東情勢

インフレが今後どのようになるかが重要となりますが、経済はどう動くかはかなり捉えにくいものです。
その中で一つ明確な要素が出てきていて、それが中東情勢の悪化です。

イスラエルがガザを攻撃した時点ではまだローカルな規模でしたが、イランとイスラエルが争うということになると、かつての中東戦争の様相を呈してきます。

中東情勢が大きく影響するのが原油価格です。

出典:CNBC

2023年にインフレの影響で上昇していたところから落ち着いてきていたのですが、また上がってきています。
原油価格が上がるとあらゆるものの価格が上がってしまうので、ただでさえ下がりにくくなっているインフレ率がさらに下がりにくくなり、株価の下落を招いている状況です。

FRB

FRBの議長は元々ハト派(利下げ推進派)と言われていたのですが、最近のインフレの状況を見ていると金利を引き下げられそうにないので、タカ派の発言を強めています。
今後、利上げとまではいかないものの、利下げもなかなか行わないのではないかと見られていて、これが株価を軟調にしている要因となっています。

FRB議長の発言は注目すべき点であり、それを受けた金利の状況、そしてその裏にあるインフレの状況が重要になります。

 

結局、インフレや金利に対する見方は人によって様々なのですが、ただ、人々が注目しているところはこういった指標であるということは知っておくべきでしょう。

半導体

短期的な話としてもう一つ重要なのが半導体の状況です。

今、世の中はChatGPTなどの生成AIブームで、半導体銘柄が非常に盛り上がっています。
実際に生成AIのために半導体がより多く使われることは間違いないはずなのですが、目先の業績でどれだけ盛り上がっているかを示す一つの指標として直近で発表されたASMLの決算があります。

出典:REUTERS

ASMLはオランダの会社で、半導体の製造に使われる露光装置でEUV光を使う部分ではシェア100%と言われている会社です。
そのASMLの純利益が四半期ごとに見た時にネガティブになっています。
さらに、少し先の状況を示す「受注」も予想より伸びていないということです。

となると、市場が懸念することは、生成AIで盛り上がるはずだった半導体市場が、実はそこまで盛り上がっていないのではないかということです。

 

半導体市場がそこまで盛り上がっていないとなると、大きな影響が出るのが日経平均です。
これまで日経平均を引っ張ってきた銘柄の多くは半導体銘柄だからです。

出典:nikkei225jp.com

この日経平均ヒートマップで、面積が大きいほど日経平均に与える影響が大きいということになりますが、例えば東京エレクトロン、アドバンテスト、そしてソフトバンクグループもアームを持っているので半導体銘柄と言えますし、信越化学工業、レーザーテック、ディスコと、数々の半導体銘柄が占めています。

今回のASMLの決算を受けて、これらの半導体銘柄の株価が下がっている状況となっています。

 

人々の注目するところとしてはこの半導体の需要の動向となっていて、その中でもTSMLや、台湾のTSMCの決算が重要となっています。
これらの日経平均に与える影響は非常に大きいです。

長期投資の理想

ここまで短期的な話をしてきました。
しかし、短期的な市場の焦点は次々と移り変わっていくものです。

今はインフレ・金利、あるいは半導体というところに注目が集まっていますが、今後違うところに焦点が移る可能性も十分に考えられます。

 

例えば中期的な話をすると、金利の引き上げによって景気が悪くなるのか、そこまで悪くならずにソフトランディングできるのか、という着目点があります。

 

相場の動きを予想することは非常に難しいですし、景気に関してもいつ、どのくらいの規模で、良くなるのか、悪くなるのかを予想することはなかなかできません。

その中で足元の株価をどう見るのかというと、一つの方法として、人々がどのようなことに注目しているかを知ることによって相場の温度感のようなものを理解すると良いのではないかと思います。

 

目先では今回お話してきたような注目点があり、株価も上がったり下がったりしますが、私たち長期投資家が買いたい企業というものは、長期的に価値を生み続ける企業です。

金利や景気に変化はありますが、そういうものにとらわれずに目の前のお客さんに対して役に立つ商品やサービスを提供し続ける企業がやはり長期的に業績を伸ばし続けられると考えています。
そういう企業を買えたのならば、安心してその企業を見守っていれば良いのです。

 

今回のテーマとは逆説的になりますが、そういった企業を見つけられたなら、短期的な株価の動向は気にする必要がほとんど無くなります。
これが、私たちが理想とする状態ということです。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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