10月24日まで、日経平均株価は過去最長となる16営業日連続上昇を記録しました。株価水準は21年ぶりの高値を記録し、一部ではバブルを懸念する声もあります。
株価はまだバブルとは言えない
バブルとは、経済的な裏付けがないのに、資産価格だけが上昇する現象のことです。その定義からすると、今の株価は決してバブルではないと考えます。
日経平均の予想PERは15倍台と標準的で、数十倍~百倍以上をつけていた1990年頃の「バブル景気」や2000年頃の「ITバブル」とは明らかに異なるものです。
企業は確実に利益を伸ばしています。経常利益は20年前の約3倍となり、このことが同じ株価でもPERが適正な範囲にとどまる要因となっています。特に、リーマン・ショック以降各社はコスト削減を進め、利益を出しやすい体質になりました。
そこへ世界的な景気拡大の波が押し寄せました。日本も1960年代後半の「いざなぎ景気」を超える、戦後2番目に長い景気拡大期にあります。ちなみに、最も長いのは2002年から始まる「いざなみ景気」で、ITバブル崩壊からリーマン・ショックまで続きました。
金融緩和がガソリン、中国の投資がエンジンとなり経済が回る
景気は何もしなくても循環するものですが、最近の景気拡大には少なからず人為的な要因が寄与しています。各国の金融緩和と中国の投資拡大です。
世界各国は、リーマン・ショックで大きく落ち込んだ経済を活性化させるため、金利を下げ、市場に出回る資金を大幅に増加させました。これを金融緩和と言います。企業や個人はお金を借りやすくなり、経済は徐々に回復しました。
既に先進国の失業率は最低水準になるなど、経済は十分に回復したと言えます。それでも急に緩和をやめるとショックが大きいことから緩和の縮小は後手に回り、いまや「カネ余り」と言われるような状況が発生しているのです。
余ったカネをうまく吸収しているのが、中国による投資拡大です。かつては公共工事が中心でしたが、現在は液晶や半導体といった民間企業によるハイテク分野への投資も積極化しています。現代の経済はグローバル化しているため、そこに連なる世界中の企業への受注が急増しています。
お金が溢れている一方で、中国による投資が世界的な「実需」を生み、一見すると何不自由ない好景気を演出しているのです。
好景気と不景気は表裏一体
この好景気に死角はないのでしょうか。
懸念されるのは、金融緩和の縮小です。金融緩和が縮小すれば、余ったカネは吸収されます。FRB(米連邦準備理事会)は既に金融緩和の縮小に舵を切っていて、ECB(欧州中央銀行)もそのタイミングを探っていると言われています。唯一の例外が日本で、2%のインフレ目標を達成するまでは金融緩和を続けるとしています。
金融緩和が続けば、やがて経済実体の伴わないバブルが発生します。歴史が示している通り、バブルはいつか必ず弾けます。バブルが大きいほど、弾けたときのダメージは大きくなるため、各国の中央銀行は金融緩和からの出口戦略を練らなければならないのです。
中国の投資もいつまでも続くわけではありません。今の好調な投資は、2015年に経済が落ち込みかけた際に政府が発破をかけたことが大きいと考えています。液晶や半導体に対して強い需要があれば良いのですが、スマートフォンが一通り普及した今、そこまで強い需要があるとは思えません。
実需ではなく見込み生産だとすれば、やがて在庫が積み上がり生産は大幅に減少します。そうなれば世界的な経済の流れが停滞し、景気拡大はストップするでしょう。
経済学者のように詳細な分析は行えませんが、確実に言えることは「景気は循環する」ということです。拡大した景気は、どこかで必ず縮小に転じます。景気が悪化すれば企業業績は低迷し、株価は下落に転じるでしょう。
誰も買わない時に買い、誰もが買う時に売る
足元では、好調な経済環境を背景に株価は上昇しています。
投資家の心理を考えると、株価の上昇メカニズムは単純です。上昇し始めた段階では弱気派もたくさんいますが、そこからさらに上昇すると強気派は自信を強め、弱気派だった人の一部も強気派に転じることで、株価はさらなる上昇に向かいます。要するに、上昇が上昇を生むのです。
しかし、ほとんどの人が強気派になったところで、急に上昇は止まります。なぜなら、もう新たに買う人がいなくなるからです。新たに買う人がいなければ、株価は上昇しません。そうなると下がるしかありませんから、投資家は我先にと売りに転じ、大きな株価下落へとつながるのです。
このメカニズムを分かっていれば、誰も買わない時に買い、誰もが買う時に売るのがより良い戦略であることが分かるはずです。投資では確実なことはほとんどありませんが、唯一正しいのは「安く買って高く売る」ことです。
上昇相場を横目に、投資家として何もしないことは簡単ではありません。しかし、バリュー株投資家としては、ここでじっと我慢できるかどうかが正念場と言えます。一時の利益に心を奪われるのではなく、長い目で資産形成を行いましょう。
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