もう市場に惑わされない。「α」を探せ!

株価の動きは大きく2つの要因に左右されます。「市場要因」「個別要因」です。

市場要因とは、それぞれの銘柄に起きていることとは関係なく、市場の動きに合わせて動くものです。日経平均やTOPIXが上昇した時に同じように上昇することで、金融用語では「β(ベータ)」と名付けられています。

一方、個別要因は市場要因とは関係なく、個別銘柄の要因で動くものです。好調な業績が反映されて、市場全体が下がった時も上昇していれば、それは個別要因によって動いたということです。金融用語では「α(アルファ)」と呼びます。

「本質的な価値」は幅を持つ

市場要因は、予測することが非常に難しいものです。景気や為替、政治など、世の中の経済に関わるあらゆるものが市場を動かし、常に変動しています。

もちろん、市場は個別銘柄の集合体なので、インデックスも企業の価値を反映しつつ、一定の波の中で変動します。この波を上方に大きく上回るのがバブルと呼ばれる現象です。

市場の変動は、逆に個別銘柄へも影響を与えます。市場が好調な時に適正とされるPERは高くなりがちです。適正なPERには正解はなく、全く同じ会社を評価するにしても、適正なPERがある時は10倍、ある時は20倍と言われても決しておかしなことではないのです。

そのため、私がよく言う「本質的な価値」は市場の変動によって幅を持つのです。したがって、すでに適正水準にあると考えられる銘柄でも、株価は上がったり下がったりを繰り返します。

 

予測できない市場要因では成功は難しい

バリュー株投資は、本質的な価値よりも割安なものに投資し、株価が本質的な価値にまで上昇することを目指す手法です。しかし、本質的な価値の範囲内で買っても、市場要因によりそれなりに利益をあげることも少なくありません

投資信託の多くは、市場要因によりアップダウンを繰り返しているにすぎません。ほとんどの投資信託は多数の銘柄を組み入れていますが、ほとんどの銘柄は「適正範囲」の中にあるため、その動きはほぼ市場要因で説明できてしまうのです。

市場要因を極めた投資が、「日経レバ」など、インデックスにレバレッジをかけるだけの投資手法です。これは市場要因を単に増幅させて利幅を取ろうとするもので、多くの短期志向の個人投資家が活用しています。

しかし、すでに述べた通り、市場要因の予測は非常に難しいものです。常に市場に目を光らせていたとしても、予想だにしないところからリスクが顕在化することもあります。

もし、市場の予測が可能だとすれば、日経レバなどへの投資で大金持ちになっている人もいるはずです。しかし、一時的に勝つ人はいるにしろ、成功し続けている人を見たことがありませんし、今後も出てくることはないでしょう。

適正範囲にある銘柄を持つことは、これと同じことをしているにすぎません。もちろん、米国のダウ平均やS&Pが長期的に上昇していることから、インデックス投資でもそれなりの利益をあげられるのでしょうが、大きな利益をもたらすわけではないでしょう。

市場要因を排除し、「市場に惑わされない投資」を

一方のバリュー株投資は、適正範囲から大きく外れた銘柄に集中的に投資するものです。適正範囲から外れている銘柄は、長い目で見た時に適正範囲に戻ってきます。これは、市場要因に左右されることはありません。

つまり、本質的な価値よりも割安な銘柄に投資していれば、市場の変動に惑わされることはないのです。これこそが「α」を探す本質と言えます。

もちろん、今のような市場が絶好調の時は乗り遅れることもありますが、株を持っていればβのうまみは享受できますし、好調な相場がきっかけで適正範囲まで上昇することもあります。運良く上昇したタイミングで売ってしまえばいいのです。

売却した後に上昇して「早すぎた」と思うこともあります。しかし、適正範囲に入ってから売却したのなら、その後の上昇は市場要因であり、あくまで「運」でしかないのです。

当社では、適正範囲から外れた銘柄の投資を行うことで、究極的には「市場に惑わされない投資」を目指しています。引き続き、お付き合いの程よろしくお願い申し上げます。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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