【JR東日本】株価下落!今後はどうなる?

今回はJR東日本についてです。

先日、年初来安値を更新するなど株価が下がっています。

JR東日本の株価が下がっている理由と抱えるリスク、そして成長性について考えてみたいと思います。

なぜ下がった?

出典:株探

JR東日本の株価ですが、2~4月は順調に上がってきましたが、5月くらいから失速し、直近では大きく下がって年初来安値を更新してしまいました。

株価が下がる時というのは一般的には業績が悪いことが多いのですが、JR東日本に関しては必ずしも業績が悪い状況ではありません。

出典:JR東日本 決算説明資料

2024年3月期は前年と比較すると売上高では13.5%増、利益は3.5倍くらいに伸びています。

 

コロナ禍では、人々が自宅に籠ったり出勤しなかったりして業績が厳しかったことは確かです。
しかし、今では当たり前に出かけるようになって業績が回復してきました。

決算上は特に悪いところは見当たりません。

 

株価に与える影響が大きいのは今期の予想の方ですが、そちらも増収増益となっていて、問題があるようには見えません。

出典:JR東日本 決算説明資料

 

増収増益の予想の中でなぜ株価が下がったのでしょうか。

コロナ前を超えず

一つ言うなれば、”物足りなかった”という部分はあるかと思います。

コロナ前の2019年3月期には実は過去最高の売上・利益を記録していて、(経済面で考えると)コロナが終了した今期の予想が注目されていましたが、コロナ前の数字には達しておらず、このあたりが物足りなさを感じさせているのではないかと思います。

コロナ前の水準まで戻ることを期待されていましたが、そこまでは戻らないということがはっきりしたというところです。

 

決算発表が4月末ごろにあり、その直後には株価は下がりませんでしたが、その後はズルズルと下がっていきました。

金利上昇の懸念

しかし、それだけでは6月に入ってからの大きな下落の説明にはなりません。

直近の下落に関しては、6月14日の日銀の政策決定会合で金利が引き上げられる可能性があり、JR東日本もそれなりに借金を抱えている会社なので利払いの負担が大きくなることが考えられ、決定会合の前にポジションを落としておこうと考える投資家もいたのではないかと思います。

年初来安値を更新している銘柄を見てみると、NTTやJR東海、大和ハウス、ANAなどとなっていて、借金が多い会社の株価が似た動きとなっているようです。

 

ただし、金利の上昇がファンダメンタルズに影響を与えるは少ないと考えています。

JR東日本は確かに多く借金をしていますし、コロナ禍で借り入れも増やしましたが、その大部分は長期の固定金利の債券となっていて、しかもコロナ禍の安い金利で借りられているので、目先の日銀の金利が上がったとしても利払い自体はほとんど増えないと思います。

JR東日本 決算説明資料

JR東日本の有利子負債は、コロナ前は約3.1兆円だった借金が今は約4.8兆円に増えていますが、利息は1.93%から1.47%に下がっていて、しかも平均年限が12.65年となっていて、平均的に見れば12年はこのくらいの金利という手堅い財務状況です。

リスク0ではない

JR東日本が売られている理由としては、金利の上昇や業績が悪いということではなく、目先の業績がこれ以上大きく上がりそうにないという点に対する投資家の「飽き」のような部分であり、あくまでサイクルの一部なのではないかと思います。

国内の経済も悪くはないですが案外奮わないというところなので、このあたりのマクロ環境もネガティブな影響を与えているかもしれません。

 

もっとも、JR東日本にリスクが無くなったわけではなく、借金があることは確かですし、金利が上がると多少は影響があります。

また、台風や地震など自然災害のリスクもあります。

「運輸」だけじゃない!

とはいえ、そういった極端なことが起きなければ基本的に安定してかつ成長できる企業だと捉えられます。

過去の業績を見ても、じわじわと伸びてきた企業です。

業績が好調な理由としては、旧国鉄時代にあった多くの高金利の借金を返し続けてきたことによって利払い負担が減ってきたこともありますし、鉄道事業だけでなく鉄道以外の事業、特にJR東日本の場合は不動産事業がどんどん強くなってきています。

出典:JR東日本 決算説明資料

運輸事業で前年度1,707億円の利益に対して、不動産・ホテル事業で1,001億円の利益となっていて、その他の事業も含めると、利益の半分くらいは運輸以外の事業からということになっています。

今後ますます不動産やその周辺事業に力を入れていくことは確かかと思います。

楽天銀行と協力して、JR東日本の銀行口座を開けば切符が割引になるということも行いました。

逆に運輸に関してはコストを減らす動きをしています。

出典:JR東日本 決算説明資料

費用を1,000億円減らすことを目標としていて、既に850億円までは減らしたということです。

テレワーク等も進み、運輸事業の売上をこれ以上伸ばすことは難しいものの、その分費用を減らして利益を確保しようとしているようです。

ローカル線の収益性の悪い鉄道に関しても、バスへの転換なども含めた協議が行われています。
また、みどりの窓口の廃止など、批判もありながらもコスト削減の面で進めているのだと思います。

今後の好材料

明るい話としては不動産のことがあります。

出典:JR東日本 決算説明資料

元々持っていた土地に収益不動産ビルなどを建てて、それらが安定的に稼働すると年1,200億円入ってくるということになります。

さらに、その周辺都市の開発を進めていくデベロッパー的な立ち位置でやるといいます。

運輸に関しても、まだ先の話ではありますが、羽田アクセス線など期待される話もあります。

 

JR東日本には既に収益化している土地もありますし、まだ使っていない土地もかなりあります。

出典:JR東日本 決算説明資料

バランスシート上には8,753億円しか計上されていませんが、含み益が約1.6兆円あり、合計で約2.4兆円もの不動産が現時点であるということになります。
これらを収益化させたり、あるいは一部売るなどして実現利益化するとすることでJR東日本の収益の改善も見込まれますし、そもそも2.4兆円の不動産を持っていながら時価総額が2.9兆円で、純資産に対する時価評価はかなり低くなっています。
PBRは1.06倍となっていますが、含み益を加味すると実質的には0.6倍くらいとなり、割安感はかなりあります。

 

また、運賃の値上げの手続きも進んでいるようで、実際に値上げということになれば、株主にとってはプラスの話になります。
運賃が上がったからといって電車を使わないということにはなかなかならないと思われますし、料金改定の話は業績予想などには含まれていないので、上振れの要素でもあります。

心配する必要はない

JR東日本は多くの機関投資家も見ているので妥当な評価が付きやすい企業だと思います。

出典:株探

株価はコロナ禍で大きく下がったものの、その後はじわじわと上がってきています。
直近で下がっているのも、中期的に見れば上昇の曲線の範囲内にあるように見えます。

現在PERが13.8倍ということですが、過去のJR東日本のPER水準を見ると、まともに利益が出ている局面では13倍というところが最も下のラインで、これ以上下がらないとは言えませんが少なくとも高い水準ではないでしょう。

 

自然災害などのリスクはありますが、それを除くと大きな心配は無い銘柄と言えます。

株主優待もありますし、利回りも2.03%と(高くはないですが)悪くはない水準です。

どちらかというと安定的で初心者向けの銘柄ということにはなりますが、今回の下落で心配するような銘柄ではないでしょう。

 

目先では、JR東日本やNTT、トヨタなど大きな銘柄が下がってきていて、これまで続いていた大型株の流れが収束しつつあるように感じます。

一方で下がった時にはチャンスのある銘柄を探していくことが大事となります。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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1 個のコメント

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