【生保業界のビッグモーター?】FPパートナー株価70%下落!買える?

FPパートナーは”生保業界のビッグモーター”だと取り上げられ、株価も大きく下がっています。

ビッグモーターは自動車をわざと壊して保険会社に修理代を水増し請求していました。
今回FPパートナーがビッグモーターになぞらえられた理由としては、保険会社と蜜月関係にあると指摘されているからです。

FPパートナーが報道された内容を解説し、今後FPパートナーはどのような状況になっていくのか考えてみたいと思います。

”生保のビッグモーター”と呼ばれる理由

きっかけはこの東洋経済オンラインの記事でした。

出典:東洋経済オンライン

FPパートナーは「マネードクター」というブランドで展開している保険代理店です。

保険代理店のビジネスは、お客さんからの保険の相談に乗り、各保険会社の商品から合ったものを選んで販売するものです。
保険代理店は保険会社から販売手数料を受け取り、それが収益となります。

保険会社としては、保険代理店にたくさん保険を売ってもらった方が儲かることになりますし、保険代理店としても販売手数料が貰えるので、保険会社と保険代理店はwin-winの関係が成り立ちます。

しかし、FPパートナーは会社が儲かる保険を選んで販売して、お客さんに対する真摯なアドバイスとは言えないのではないかということが問題となっています。

「マネードクター」の仕組み

改めてFPパートナーはどのような会社なのか見てみましょう。

FPパートナーは2023年に上場し、すぐに東証プライムに上場するほど勢いのある会社です。

出典:マネックス証券

業績も右肩上がりに成長していて、直近でも増収増益を見込んでいます。

FPパートナーの特徴としては、まさに「マネードクター」というブランドに位置づけられたものがあると思います。
保険に限らず、お金に関するあらゆる相談を受ける”かかりつけ医”という位置づけです。
このブランドを作ってコマーシャルを流し、知名度が上がってきました。

オンラインでの相談も強化していますが、多くのビジネスはオンライン上でお客さんとアポイントメントを取りつけ、全国にいる販売員(募集人)が実際にお客さんのいる場所に出向いて保険や金融商品の説明をするというものです。

店舗を持たずにファミレスやカフェなどで相談を受けているという特徴があります。

ファミレスなどで保険の話をしていることが増えている印象ですが、FPパートナーの募集人なのかもしれません。

飛ぶ鳥を落とす勢いであり、見込み顧客を集める力を他の保険代理店よりも持っていて、FPパートナーの従業員である保険の販売員の人たちは見込み顧客に対してどんどん保険を販売しに向かいます。

給与体系としては”フルコミッション”で、固定給は無く、どれだけ保険を販売したかによって給料が決まるという体系です。
これは外資系の保険会社や証券会社なども近い仕組みとなっています。
要するに、個人が多く売るほど給料が上がるというものです。

このビジネスモデルは保険会社としては都合が良いものです。
募集人にはたくさん儲けたいという人がいて、まずは保険会社がFPパートナーに対して、自社の保険を販売してくれたら成功報酬を多く渡すということを提案してきます。
FPパートナーとしてはあくまで中立な立場で、保険会社からの報酬に関わらずお客さんに対して良いと思える商品を販売するというのが真摯なものにはなりますが、やはりビジネス上儲かる商品を売ることになってしまいます。

まして上場したばかりでこれから業績を伸ばしていかなければならない企業なので、報酬を多く払ってくれる保険会社の商品を贔屓するのは必然の流れかと思います。

金融商品の販売ビジネスというものは、多かれ少なかれ会社が儲かる商品を売るということが大前提としてあります。
保険代理店は、特定の保険会社を贔屓にしてはいけないということにはなっていますが、建前だけのものとなっています。

また、保険商品は差別化がほとんどできないもので、お客さんとしてはどの保険会社の保険を選んでもそれほど差はありません。
保険代理店が儲かる保険だったとしても、損をするというわけではありません。

悪目立ちしてしまった

どこの保険代理店も似たようなことを行っている中で、今回FPパートナーのマネードクターがやり玉にあがったのは、あまりにもやり方が露骨で悪目立ちしてしまったところがあるのではないかと思われます。

顧客に対して不利益があるわけではなく、新規の顧客も既存顧客からの紹介という形で獲得していることも多いです。

ただ、同じ保険をFPパートナーからしか買えないというわけではないので、ビジネスモデルとしてはどこでも真似できるものであるとも言えます。

FPパートナーは成長に舵を切りすぎて、コンプライアンスに関してはかなり緩い部分はあるようです。

成長は続くか?

FPパートナーは今後どうなってしまうでしょうか。

出典:東洋経済オンライン

金融庁が調査に入るという報道もされていて、もし金融庁からのお咎めがあったとしたら、保険会社もこれまでのようになりふり構わずお金を払っていたものが消極的になり、販売手数料も下がっていくので、目先ではFPパートナーの業績は下がっていくのではないかと思います。

今のPERは今期予想に対して12.5倍となっていますが、もし業績が悪化することになれば、PERが上がり、割安感はほとんどなくなってくると思われます。
今期の1株あたり利益が200円くらいですが、これが150円くらいになったとするとPERは16倍、100円になったとしたらPER30倍ということになります。

今の株価が高すぎるということはありませんが、しばらくは今期の予想に対して下方修正が入ったりする可能性が十分にあると考えられます。

株価が下がっているからといって買いに入ると危険だというのが私の意見です。

では長期的に考えるとどうでしょうか。

知名度があり、見込み顧客については困らない状況があるのであれば今後も業績を伸ばしていけるのではないかという観点もあるかと思います。

ただ、FPパートナーで退職者が増えているという報道もあります。

出典:ダイヤモンドオンライン

FPパートナーは知名度があるので、見込み顧客を獲得することはそれほど難しいことではなく、募集人としては新規の営業や飛び込み営業をする必要がほとんどありません。
その分、販売した時の報酬はそれほど高くないということです。

自分で新規開拓ができてどんどん売ることができる優秀な人にとっては他の会社でやる方が良いということです。

優秀な人材から抜けていってしまうというビジネスモデルなので、これまで業績を伸ばしてきましたが、これを続けられるかというと難しい部分が多いのではないかと私は考えています。

最終的な判断はご自身の考えと投資の時間軸に沿って行ってください。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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