すかいらーくは優待銘柄として有名です。
100株保有すると年間4,000円分のすかいらーく系列店舗で使える株主優待カードがもらえます。その権利を取得するためには、6月26日時点、つまり本日(公開日)中にすかいらーくの株式を購入する必要がありますが…
しかし、冷静に考えて本当にすかいらーくの株を購入すべきか?注意点はないかを分析していきます。
優待の内容
まずは優待の内容を解説します。保有株式数に応じて株主優待カードが送られます。
出典:すかいらーく
24年6月現在の株価はおおよそ2,200円ですから、100株保有した場合の優待利回りは約1.8%となります。300株では1.5%、500株、1,000株では1.4%となります。株主優待カードはすかいらーくの各種ファミリーレストランなどで使用できますから、多くの人にとって嬉しい優待です。6月末時点に100株保有していれば、9月中旬ごろに2,000円分の優待カードが届きます。
ちなみに、すかいらーくの配当金は、今期は期末配当のみの見通しです。6月末時点で株式を保有していても配当はもらえないので注意してください。
好調とは言えないすかいらーく
次に、すかいらーくのビジネスについて見ていきます。業績の推移を見ると、絶好調とは言えません。
出典:マネックス証券
コロナ禍で外食需要が消滅し、2020年には233億円の赤字となりました。その後一時的に回復しましたが、2022年はロシア・ウクライナ情勢の影響で原材料費や物流費、光熱費の高騰により再度赤字に転落しました。現在、売上はコロナ前とほぼ同じ水準まで回復しましたが、利益は今ひとつ回復していません。最大の要因は原材料価格高騰による原価率の悪化です。
2018年・2019年の営業利益が200億円前後だったのに対し、現在は150億円前後ですから、依然として苦戦していると言えます。すかいらーくはコストアップの要因を抑制するために様々な取り組みを行っています。例えば、大量購買長期契約による原価低減や、生産物流拠点の効率改善などです。
すかいらーくのグループ店舗数は、コロナ前の2019年は約3,200店舗でしたが、2023年末時点で2,976店舗です。不採算店舗を閉店し、現在は再度出店を加速させる目標を掲げています。2027年には約3,300店舗に増やす計画です。また、セルフレジ展開や配膳ロボット、テーブル端末の導入により、従業員の負担軽減と顧客の利便性向上を図っています。
さらに、既存店の最適化も行っています。消費者動向や人口変動を分析し、より適したブランドへの業態転換を行っています。例えば、バーミヤンだった店舗がガストに変わるなど、グループ内でブランド変更を行っています。また、各種プロモーションやメニューの変更、値上げによって客単価の増加も図っています。
店舗増加で苦い経験
このように、既存店の業態変更と新規出店の加速によって成長を目指していますが、過去には同じ戦略で業績悪化によって最終利益が130億円の赤字となりました。当時の店舗数は約4,600店で、店舗拡大が利益確保に繋がらず苦戦しました。結果、経営陣による企業買収(MBO)によって上場廃止、米ファンド大手のベインキャピタルの傘下に入り経営再建を進めました。
現在は、原材料の調達から消費者に料理を届けるまでの効率性を重視した経営に舵を切っているため、新規出店の拡大戦略も適切にコントロールできれば成長に寄与する可能性があります。 資料を見る限りは、原材料の調達から 消費者に料理を届けるまでの様々なところで、 効率性を考え、それをコントロールしている様子がわかります。
投資するべきか?リスクは?
まとめると、以下のポイントが挙げられます。
- すかいらーくの株主優待は系列レストランで使える商品券
- コロナ禍で大きなダメージを受けたが、DX化や店舗業態の変更で収益の拡大と効率性の向上に挑んでいる
- 過去には店舗増加をコントロールできずに上場廃止に至ったが、現在は調達から提供までを細かく管理している
株価の動きを見ると、23年は業績回復に伴って株価が上昇していますが、24年に入り2,100円から2,500円の間で推移しています。
出典:株探
6月26日現在のPERは約68倍です。
はっきり言って成長性を考えても割高です。この割高な株価を支えているのは「優待に期待した個人投資家」です。株式所有者分布を見ると所収株数の70%が個人株主です。
出典:すかいらーくIR
優待に期待した投資家がなかなか売らない、これが高いPERの源泉になっていると考えます。
ここで投資リスクを考えると、そもそも優待が廃止・縮小になった場合は株価が大きく下落する可能性が考えられます。
実は2020年の9月までは100株保有すれば6,000円分の優待カードがもらえました。しかし、コロナ禍の業績低迷によって100株保有で4,000円、と改悪されました。
この発表があった翌日には株価は12%下落しています。市場全体を見渡せば経営効率の改善に向けて株主優待廃止の流れがあります。このリスクは十分に知っておくべきでしょう。
業績の面を考えても、市場縮小の悪影響を受ける可能性があります。富士経済グループの国内飲食店市場の推移予測を見ると2030年には2019年比で35%縮小する見込みです
出典:富士経済グループ
すかいらーくはこのリスク回避ために海外進出を行っていますが、国内店舗が3,000あるのに対し、海外店舗店舗は79店舗です。まだまだ国内市場の縮小をカバーできるほどではありません。
国内市場で生き残るためには、付加価値の拡大、つまり価格改定は必須の条件だと考えます。しかし、スカイラークが掲げるミッション(企業が存在する意味)は「一人でも多くのお客様に安くて美味しい料理を気持ち良いサービスで快適な空間で味わっていただく」です。他の外食サービスと比べて相対的に価格が安いことで、利益率が悪化。店舗数は増やさないといけないが人口減少(市場縮小)の影響を大きく受けて業績が伸びない、このようなシナリオにならないことを祈るばかりです。
国内にはグループ店舗数10,000を超えるゼンショーHDや、店舗数1,000ながら過去最高利益予想のサイゼリヤなどの競合が存在しています。そもそも外食産業は成熟(衰退)市場であり、強力なライバルがいることも注意すべきです。
投資判断としては、株主優待をもらうこと以外は目的ではない、というのならば止めはしません。しかし、市場縮小と株主優待頼みの株価推移(割高さ)が気になる方にはお勧めできない企業だと考えます。これらの情報をもとに投資判断をなされてください。
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執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
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プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
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