買った株が上昇して浮かれていませんか?株価が上がったからと言って、その投資が「正しかった」とは限りません

投資に関して間違った考え方を一つだけ選ぶとするなら、私は、株価が上がったからよい投資をした、と信じられていることを挙げる。

これは以前に紹介したピーター・リンチの著書からの引用で、私も長期投資をする上では必ず認識しておくべきと考えることです。この間違った考え方を正すことで、失敗を避け、成功を逃さない確率を上げることができます。

株価の上昇は「根拠のない自信」を増幅させる

「上がった株が正しいと思う。」これは、おおいに精神的な問題です。しかし、誰しもこのような状態に陥ります。自分が買った株が上昇すれば、やっぱり自分は正しかったと有頂天になり、下落すれば自信を失ってしまうでしょう。

しかし、短期的な株価はその企業の価値とは関係なく変化するものです。その要因は相場全体の変動や、本質的な価値とはあまり関係のないニュース、あるいは単にその業種全体として変動しているからという場合もあります。これらは、価値を重視するバリュー株投資家にとっては「意味のないこと」です。

もちろん、どんな理由であれ持ち株の価格が上がるのはいいことです。価値とは関係のない要因で株価が上昇し、本来の価値を実現することも少なくありません。その「幸運」を享受することをためらう必要はありません

危険なのは、株価が上昇したことでその銘柄や自分自身に根拠のない自信が芽生え、本来の価値を上回ってもその株を保有し続けたり、勢いで無謀な銘柄にまで投資してしまうことです。こうなってしまうと、本来必要なその企業に対する「ストーリー」の検証がおろそかになってしまいます。

裏付けのない株価上昇の行く末

わかりやすい例として、民事再生法が適用されて上場廃止になったタカタを挙げます。

同社は、エアバッグの事故により多額の負債を背負い危機的な状況に陥っていましたが、事業そのものは順調であり、割安と見る向きもありました。そのため、問題の発覚後に、一時的に2倍以上に大きく値を上げる場面がありました(下記チャートの2017年1月頃)。

しかし、ご存知の通りその半年後には株式は紙くずになってしまいました。この上昇に飛びついた投資家の多くは多額の損失を被ったことでしょう。

タカタの株価は上がりすぎ

2017.01.05

また、新興市場でよく見られる現象としては、全く利益を出していない企業でも、期待先行で株価が上昇するケースがあります。中には、どれだけ頑張っても利益が出そうもない会社も散見されます。価値の面では全く裏付けがなくても、時に株価は上昇するのです。

やっかいなのは、株価は上昇するほどさらなる上昇を呼び込むことです。短期の投資家にとっては、「上昇している」というだけで十分買う理由になります。こうして、バブルは形成されていくのです。

しかし、歴史が示している通り、バブルはやがて弾けます。短期の投資家は、バブルの崩壊からいち早く逃げることを考えてビクビクしていますが、そこに参加しないバリュー株投資家は常に価値を見つめ、保有銘柄のストーリーだけを気にしていれば良いのです。

下がった時ほど自信を保て

慎重なバリュー株投資家が気にしなければならないのは、むしろ反対のケースかも知れません。買った銘柄が下がってしまえば、誰でも自信を無くしてしまいます

そのような時は、下がった理由を徹底的に調べることです。それが自分の考える「上がるストーリー」を壊すようなものであれば、諦めて売却する必要がありますが、そうでないのなら値下がりは買いのチャンスが広がったと考えるべきなのです。

一番勿体無いのは、せっかく調べて割安だと思って買ったのに、値下がりで不安になって手放し、本当の上昇を逃してしまうことです。これではいつまで経っても資産を増やすことはできません。

バリュー株投資は、株価の動きに投資するものではなく、企業の価値に投資するものです。株価の動きに惑わされず、企業の本質を見極め、最終的に自分を信じ切ることができれば、長期投資で怖いものはなくなるでしょう。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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1 個のコメント

  • 教えましょう  5日線割った所でクローズしていれば何も失敗ではありません。いつまでも持ち続ける姿勢に問題があるのです。上昇してくれも拝んでも自分の意思と関係なく株価は動きます。これさえ判っていれば何ま心配することはありません。損しても微々たるものだ。拝んで利益が得るのは坊さんぐらいでしょう。そういえばこちらも坊さんが来る時期です。手紙が届いていました。

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