年収1,000万円はお金持ちになれない!?

「お金持ちかどうか」を示す基準のひとつに年収があります。年収1,000万円もあれば、給与所得者の上位4%程度となり、高所得者と言えるでしょう。しかし、年収だけを見てお金持ちと言えるかというと、決してそうではありません。

「年収1,000万円貧乏」は本当に起こる

サラリーマンで年収1,000万円と言えば、比較感だけで言えばかなりの勝ち組です。実生活でもお金に困ることはなく、年に数回家族で海外旅行に行くのも苦にならないでしょう。それだけもらっているのだからと、ブランド物の時計や外車を購入することもあると思います。

しかし、そんなエリートが定年退職や会社の倒産・リストラにより不意に破綻してしまうことも珍しくありません。

なぜそんなことが起きてしまうのでしょうか。それは、年収1,000万円クラスには3つの落とし穴があるからです。

  1.  税金
  2.  ブランド志向
  3.  住宅ローン

税金

サラリーマンは、年収2,000万円を超えなければ確定申告をすることはまれだと思います。ゆえに、自分がいくら税金を払っているか無頓着な人も多いです。

日本は所得に対して累進課税を採っています。所得が増えれば増えるほど、税率が上がっていく仕組みです。所得税だけでなく、住民税・社会保険料も上昇します。

年収1,000万円だと、税金・社会保険料控除後に残るのは約750万円です(配偶者と15歳以下の子ども2人のケース)。一方、年収500万円だと400万円になります。年収で500万円の差があっても、使えるお金は350万円しか違いません

自営業者であれば、さまざまなものを「経費」とすることで、課税所得を抑えることができます。しかし、サラリーマンが節税対策でできることは限られています。「高所得者」から税金を取ることには世論の批判も起きにくいので、政府は取れるところからしっかり取ろうと考えているのです。

上記のような理由から、本当のお金持ちは「所得」ではなく「資産」に焦点を当てます。日本の税制では、資産に対する課税は所得への課税よりも有利になっているのです。

ブランド志向

高所得者は周囲の人も高所得者であることが大半です。したがって、つい見栄を張ろうとしてブランド物の時計や外車を買い、都心の高級住宅地にも住みたくなるものです。

時計や外車など、1度きりの出費ならかわいいものです。本当に問題となるのは固定費です。特に住んでいる場所は問題となります。賃貸であれば、家賃だけで都心と郊外で下手をすれば倍ほど違ってきます。月10万円と20万円の差であれば、年間120万円の違いです。

また、教育費も大きく、幼稚園から大学までオール私立とオール公立では1,500万円程の違いが出ると言われます(2,500万円対1,000万円)。子どもが2人いれば、1年あたり160万円の差です。

家賃と教育費だけで、合計280万円も違ってくることがわかります。これに少しずつ贅沢すれば、あっという間に上記に示した350万円に到達してしまいます。これで1,000万円というのが大して高所得でもないことがわかるでしょう。

住宅ローン

今、銀行は住宅ローンの過当競争状態になっていて、それなりの収入があれば、かなりの金額を借りることができます。年収1,000万円でも1億円借りることは難しくありません

住宅ローンの支払は、資産を買っているので「消費」ではないと考えてしまう人もいます。しかし、住宅を「資産」にするか「消費」にするかはその内容によって大きく変わります。

最も重視すべきなのは立地です。立地のいいところであれば資産価値は下がりにくいですが、中途半端なところは一番やっかいです。特に、大規模開発されたタワーマンションは、今は人気があるかもしれませんが、年齢層の偏在と供給過剰により、子どもが独立して定年退職するころには資産価値が大幅に下がっている可能性があります。現在の多摩ニュータウン状態です。ちょうどその頃に修繕費が必要になったりしても、売るに売れず出費だけが嵩んでしまうかもしれないのです。

資産価値を考えるなら、中途半端な物件ではなく、いっそ都心ど真ん中の億ションを買うことをおすすめします。そういう物件は、中古価格がむしろ上昇する傾向が高いのです。ローンの支払は苦しくても、いざ引越す時には高値で売れ、その後の生活に余裕を持つことができます。

年収の20%を投資に充てよう

「年収1,000万円貧乏」にならないためにはどうしたら良いでしょうか。それは、所得ではなく資産に焦点を充てることです。それなりの金額の資産があれば、何かあっても金銭的に困窮することはないので、安心して生活することができます。

資産を増やすには、簡単に言うと3つの方法しかありません

  1.  所得を増やす
  2.  支出を減らす
  3.  投資をする

ここでは年収1,000万円を前提としているので、所得については触れません。支出を減らして投資をすることがこの記事の本題ですが、あまりせこせこしたことを提案するつもりはありません。ケチケチしても、楽しい人生を送れないと考えるからです。

そこで、私が提案するのは「年収の20%を投資に充てる」ことです。それ以外の部分は自由に使っていいので、好きなことに遠慮無く使うといいと思います。

方法としては、まず年収の20%(200万円)を給与天引きで別口座に入れます。ここですぐに投資することはしません。なぜなら、投資はタイミングが重要であり、一番いいタイミングで投資を行うには現金を持っているのが一番いい方法だからです。

貯蓄をしただけでは、お金持ちになることは難しいです。毎年200万円を貯蓄したとしても、30年で6,000万円です。お金持ちを金融資産1億円とすると、まだ4,000万円不足しています。これを増やすには投資をするしかありません

投資には様々な方法がありますが、当社ではバリュー株投資を推奨しています。あのウォーレン・バフェットも手掛け、長期の資産形成にはもってこいの手法です。この手法では、価値のある優良株に割安なタイミングで投資するので、保有したままでも資産価値は守られます。頻繁に売買をするのではなく、貯まったお金でまた次の割安銘柄に投資しながら資産を増やしていくのです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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