3月に任期満了を迎える日銀の黒田総裁が続投する見通しとなりました。任期は5年を超えて続投するのは異例のことです。
「円安維持」と「政府債務比率抑制」が目的
黒田総裁は、アベノミクスの主砲と言っても過言ではありません。これまでに例のない金融緩和やマイナス金利の導入を決定し、その後の円安・株高の展開を導いたのです。続投によりサプライズはないものの、金融緩和継続の見通しから市場の反応は概ね好調です。
長らく続いたデフレからの脱却を宣言したことは、日本経済にとって大きな転換点となりました。中期的に見れば、金融緩和を主導した黒田総裁の功績は大きかったと言えるでしょう。
しかし、ここからの続投は誰も想像することのできない茨の道と言えます。
日銀が本来目指しているインフレ率2%の見通しは一向に達成できそうにありません。市場もすっかり懐疑的になり、インフレ期待により進んだ円安は終焉しかけています。
日銀はなぜかたくなにインフレ目標を維持しようとしているのでしょうか。それには大きく2つの課題があると考えます。
1つは、円安の維持です。デフレの国の相対的な通貨価値は上昇しますから、インフレ目標を取り下げると、待っているのは円高です。アベノミクス以前に1ドル=70円台まで円高が進んだのは、長引くデフレによる影響が否定できません。円高になると企業業績が低迷して株価も下落する可能性が高く、政権への打撃は必至でしょう。
2つ目は、政府債務比率の抑制です。インフレの状態であれば、名目上の税収やGDPは増え、相対的な債務残高を抑えることができます。日本政府の債務対GDP比率は200%を超え、先進国で最悪の水準です。これを少しでも抑えなければ、安定的な金融・財政政策に支障が出ることは間違いありません。
【参考】世界の政府総債務残高(対GDP比)ランキング(世界経済のネタ帳)
金融緩和の効果はやがてなくなり、副作用は高齢者を直撃する
それなら、これまでうまく行っていることだし、金融緩和を継続すればいいじゃないかと思いますが、そうは問屋がおろしません。
金融緩和は「カンフル剤」です。元気のない人(経済)にカンフル剤を打てば元気を取り戻しますが、効果がずっと続くわけではありません。そして、経済は循環するものですから、いつか好景気が終わり不景気が訪れます。
金融緩和を続けたままでいると、やがてカンフル剤が効かなくなります。そんな時に不景気の波に襲われると、打つべきカンフル剤がなくなってしまい、経済はその後長期低迷を迫られる可能性があるのです。そうなると、再び「失われた10年」がやってきてもおかしくありません。
さらに大きな恐怖が財政問題です。日銀がやっている国債の買い取りは実質的に「財政ファイナンス」(国債を中央銀行が引き受けること。先進国は一般的に禁止している。)ですから、これが続くと国債や円に対する信頼が失われてしまいます。
外国人投資家は、すかさず国債や円を売るでしょう。すると、急激な円安・金利高騰・インフレに見舞われます。物価も上昇し、ハイパーインフレのような状態になってしまう可能性があるのです。そんなことは起きないと言う人もいますが、論理的に考えると決して荒唐無稽な話ではありません。
ハイパーインフレは、確実に一部の人にとって悪い影響を及ぼします。働き口のある人は物価の高騰に比例して給与も上昇するため影響は限定的ですが、預金や年金で生活している人は物を買えなくなってしまいます。
実際にルーブル安・物価高が続くロシアでは、年金生活のお年寄りは電車代が払えないためひたすら歩いたり、家庭菜園で何とか食いつないでいるのです。同じような状況が日本で起こらない保証はどこにもないのです。
このような状況に備えて私たちができることは、まずはしっかりと働くこと、そして蓄えた資産をインフレに強い株式や不動産、海外資産にすることです。割安な優良株や外国株は、比較的手の届きやすい資産防衛手段となるでしょう。
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