不動産投資家にこそ株式投資に興味を持ってもらいたい理由

一般の人がアクセスできる投資手段の代表格が株式と不動産です。両者の相違点はいろいろありますが、長期投資ではむしろ共通点が多く、不動産から入った人にこそ株式投資に興味を持ってもらいたいと考えます。

不動産投資は「投資」より「経営」に近い

株式投資といっても、企業を綿密に調査する人からチャートだけで売買する人まで、方法は様々です。ここでは、企業の業績や配当など、いわゆる「ファンダメンタルズ」を重視する投資法について議論します。また、不動産投資は基本的に買い持ちで、家賃収入を目当てとする投資を対象とします。

成果がよりシンプルなのは、不動産投資でしょう。1,000万円で買った不動産から年100万円の家賃収入が得られれば、投資利回りは10%です。ただし、1,000万円を全額借入れで調達した場合、金利が5%だとすると、最終利回りは5%となります。

株式投資はより複雑です。配当利回りが3%だとしても、株価が1年で1,000円から1,200円に上昇すれば、最終的な利回りは23%です。ただし、株価は毎日変動するため、1,000円から800円に下落すると利回りはマイナスになってしまいます。

これだけ見ると、「不動産投資は安定、株式投資は不安定」と見えるかも知れません。それだけで、株式投資の方がリスクが高いと考えるのは早計です。

家賃収入は必ずしも安定的とは言えません。5室持っていて、満室で家賃収入が年100万円だとすると、1室空いただけで80万円に減少してしまいます。大家さんは、空室を避けるために改修を行うなど、様々な努力をしなければならないのです。

ここでは改修費用という「目に見えるコスト」に加えて、手間という「目に見えないコスト」が発生します。

不動産投資は、購入から運用・売却まで様々な手間がかかります。「怠け者」には向いていない投資手段です。逆に手間を惜しまない人なら、なるべくお金をかけずに入居者の好みに合う物件にすることで、利益を増やすことができます。投資と言うよりも経営に近い感覚です。

それに対し、株式投資は証券口座さえ開いてしまえば、あとはワンクリックで売買できてしまいます。「手間」は極限まで抑えられ、どんな怠け者でも「運が良ければ」簡単に儲けられてしまいます。

株式投資の本質はビジネスの「オーナー」になること

しかし、私は逆に不動産投資でコツコツ積み重ねができる人にこそ、長期の株式投資をして欲しいと思います。

株式投資は誰でも簡単に儲けられると言いましたが、それはカジノに行ってスロットを回すのと何ら変わりありません。1回ビギナーズラックで勝ったとしても、また次勝てる保証はどこにもないのです。

株式投資を資産形成のための「投資」と捉えるなら、重要なのは1回勝つことではなく「勝ち続ける」ことです。そのためには、手間を惜しまない企業分析力と、根気強く待ち続ける忍耐力が欠かせません。

それでも、これらの手間は不動産投資に比べたらわけもないことだと思います。

大量の書類に目を通してから現地に足を運んで契約をし、さらに手をかけて入居者を増やす必要がある不動産投資に対し、株式投資の情報収集はインターネットでできてしまい、購入はワンクリック。あとは何もしないで待つだけです。

待っている間に動いてくれているのが企業の経営者や従業員です。営利企業にとっては利益を上げることが至上命題ですから、そのために様々な工夫と努力をしてくれています。ビジネスモデルが優良であるほど、より効率的に利益を上げることができるでしょう。

つまり、株主になることで、お金を投じて後は見守るだけという、事実上の「オーナー」になることができるのです。

PER10倍=10%の利回り!

利益を出す企業の株価は、長期的には必ず上昇してきます。そのメカニズムも、不動産投資を理解している人なら腑に落ちやすいでしょう。

会社が出した「純利益」は、事業のコストや経営者・従業員の給与、借入金の金利などを支払った後に残る「株主の利益」です。それは本来、不動産の家賃収入と同じように、オーナーが手にするべきお金なのです。

しかし、純利益がそのままオーナーの手に渡ることはありません。一部は配当という形で支払われますが、残りは企業の手元に残ります。そのお金は、原則として企業がさらに利益を増やすための投資に使われるのです。不動産に例えるなら、得られた家賃収入を別の物件の購入に充てるということです。

不動産 株式
利益
  • 家賃収入
  • 純利益
分配
  • 全額大家へ
  • 再投資の有無は自分で決定
  • 一部を配当し、残りは再投資
  • 割合や再投資先は経営者が決定

素晴らしい経営者であれば、利益をうまく活用してさらに利益を増やすことができるでしょう。それまでの経験をうまく活かせば、どの事業に投資をすればより利益を上げられるか分かるはずです。

反対に、駄目な経営者はせっかくの利益を儲からない事業に投資してしまうことがあります。多角化による経営の失敗はその代表的な例です。このように、経営の巧拙により「オーナーの利益」の使われ方がリスクとなるため、株価は変動が激しいのです。

逆に言えば、素晴らしい経営者の素晴らしいビジネスに投資していれば、利益はどんどん増えていきます。家賃収入がどんどん増える不動産の価格は間違いなく上昇するでしょう。同じように、素晴らしい企業の株式は持っているだけで自分のお金を雪だるま式に勝手に増やしてくれるのです。

少し複雑な話になってしまいましたが、一番言いたいのは「純利益は株主のもの」だということです。こう考えると、PER10倍の企業の「利回り」(「益回り」と言います)は10%になります。これほどの不動産物件を見つけることは容易ではありませんが、株式市場では結構ゴロゴロしているのです。

※益回りはPERの逆数であり、PER20倍の株式の益回りは5%です。

不動産に同じ物件はないが、株式は同じものを購入できる

私は「株式投資の方が不動産投資よりも優れている」という気はありません。どちらもメリット・デメリットがあり、最終的には自分に合ったやり方を選ぶのが一番だと思います。もちろん、両方やっても良いでしょう。

当社が株式投資のアドバイスを行っているのは、たまたま私が企業・株式分析に専門性があり、インターネットでアドバイスをするのに適していたからです。

不動産投資はどうしても個別の物件への投資になります。自分が「いい」と思う物件があったとしても、全く同じ物件は世の中に2つとありません。そのため、アドバイスをするなら、それぞれに深入りする必要があります。

一方の株式投資なら、私がいいと思った企業なら、全く同じものを会員の皆さまに購入していただく事ができます。これだったら、一度に多くの方にアドバイスする事が可能です。

当社は「いい企業を安く買う」ことを徹底し、条件を満たした銘柄に集中投資することで高いリターンを目指すサービスを提供しています。投資信託と比べると多少の手間はかかりますが、レポートを読んで実践することで、リターンだけではなく投資に対する正しい知識を身につけることができるでしょう。

多少時間がかかったとしても、コツコツと勉強して長期的な資産増加を目指す方と一緒に「スノーボール計画」を推進していきたいと考えています。真面目な不動産投資家ほど、その条件を満たしているでしょう。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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