現役世代と退職世代では投資のやり方を根底から変えなければならない

投資は目的や状況によってその人に合ったやり方があります。同じバリュー株投資でも、それぞれが置かれた状況によって違ったやり方があってしかるべきです。特に、現役世代と退職世代の運用では大きな違いがあります。

この記事では「現役世代」「退職世代」を以下のように定義します。

現役世代給与などの定期的な収入があり、そこから投資資金を捻出できる。投資期間は10年以上の余裕がある。
退職世代貯蓄や退職金などのまとまった資金を運用し、追加の資金拠出は望めない。年齢を考えると、10年は長すぎる

大きな違いは「定期的な収入があるか」「10年以上の超長期で考えられるか」です。世代だけでなく自分がどちらの状況に近いか考えながら読んでみてください。

現役世代:「割安買い+ホールド」で時間を味方につける

長期投資家を悩ませるのは、「相場がいつ急落するか」ということです。いくら割安株を買ったとしても、相場全体の下落を一時的には逃れることができません。資産も目減りしてしまうでしょう。

しかし、いくら急落したとしても、相場はやがて回復します。何年かかるかはわかりませんが、時間に余裕のある現役世代にとっては大きな問題ではありません。優良・割安銘柄を持っている限り、相場の回復をじっと待っていればいいのです。

「定期収入」「時間の余裕」は、現役世代の大きな強みです。積み上がる預金から順次割安銘柄を買い付ければ、時間の経過とともに資産は増加していくでしょう。割安と確信できる銘柄を持っている限り、多少上下しても慌てて売る必要はありません。

定期収入があれば、相場下落時にも割安な価格で買いを続けることができます。逆に、相場過熱時には無理に割高なものを買わないことで、相場下落のショックを和らげることができるでしょう。

現役世代にとって、相場変動は無視して良いものです。どんな相場にあろうとも、絶対基準で割安なものを淡々と買い続ければ、10年も経てばきっと成果が出るでしょう。ドルコスト平均法の応用とも言えます。株価の変動に気を揉む必要もありません。

バフェットが実践しているのはまさにこの方法です。彼がCEOを務めるバークシャー社は保険会社ですから、保険料という定期収入があります。その収入を投資に充てるからこそ、買い持ちの姿勢を崩さずにいられるのです。

退職世代:「配当+ヒット&アウェイ」でリスクを回避

退職世代の運用は、貯蓄や退職金などまとまった資金があることが強みです。一方で、それ以上の積み上がりが難しく、年金で生活費が賄えなければ資産を食いつぶす形になります。

時間をかけて増やすと言っても、待てる時間には限界があります。死ぬときに資産額がピークを迎えても仕方がないのです。

現金の積み上がりが見込めず、時間を味方につけるのが難しいとなれば、資産が目減りするリスクを可能な限り回避しつつ、資産増加のチャンスに抜け目なく乗る必要があります。

リスクを抑えるという観点では、安定配当の高利回り銘柄をうまく使うと良いでしょう。キャッシュフローが安定していて、かつ利回りの高い銘柄の下落余地は限定的です。配当収入があれば、生活費による資産の減少も抑えることができるでしょう。

もちろん、配当だけでは資産の増加には限界があります。大きな資産増加を目指すなら、キャピタルゲインを活用しなければなりません。

現役世代のような買い持ち戦略は必ずしも適切とは言えません。現役世代なら相場の回復をただ待っていればいいのですが、退職世代にはその時間の余裕が与えられていません。回復するのが10年後では遅いのです。

そこで提案するのが、「ヒット&アウェイ」方式です。明らかな割安銘柄に投資し、一定の上昇率(例えば30%)に達した時点で機械的に売却します。そこからさらに上がる可能性はありますが、必要以上の欲を出さないことで相場が崩れるリスクを回避するのです。売却資金は、再び大きく割安な銘柄が現れるまで待機させます。

この戦略を実行するには、保有銘柄を入れ替えつつ、常に資金余力を用意しておく必要があります。追加資金が見込めない以上、余力がなければ割安銘柄を買うチャンスをみすみす逃すことになってしまいかねません。

退職世代の奥の手:限定的な信用取引の活用

ただし、資金余力を残していたとしてもその金額には限りがあります。リーマン・ショックのような暴落はバリュー株投資家にとってはまたとないチャンスですが、資金が少なければそのチャンスを活かすことはできません

そこで活躍するのが信用取引です。信用取引とは、現金や株式を担保にして、元手より大きい金額の取引をすることです。

よく「信用取引は危険」と言われます。信用倍率2倍の取引をしたとすれば、利益が2倍になる一方で損失も2倍になり、株価が下落すると「追証」が発生してしまうことがあるからです。私自身も、原則として信用取引に手を出すべきではないと考えます。

したがって、信用取引を使うのはよほどチャンスが差し迫った時に限るべきと前置きします。

一度暴落していれば、その後の下落余地は限定的と見ることができます。業績の安定した割安株ならその傾向が強く、信用買いのリスクを抑えることができます。

信用取引には担保が必要ですが、そこで活躍するのが上記の安定配当銘柄です。担保となる株式の値下がりは追証のリスクを上昇させますが、値下がりリスクの小さい安定配当銘柄なら担保として適しています

それでも、リスク管理のために信用倍率は1.5倍程度までに抑えることが肝心です。また、割安であっても一気に上限まで買うのではなく、少しずつ買うのが望ましいでしょう。買い始めてからさらに値下がりしない保証はどこにもないのです。

 

自分の状況がどちらに近いか、イメージが掴めたでしょうか。もちろん、これだけで全ての状況を説明できるわけではありません。ぜひ様々なパターンを想定しながら、ご自身に合った方法を見つけてみてください。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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