昨年2月に推奨を開始した日本板硝子(5202)の推奨を終了しました。推奨開始からの上昇率は36.4%でした。
同社は2006年に英ガラス会社のピルキントンを約6,000億円で買収しました。売上高が2倍もある会社を買収したことで「小が大を呑む」と話題になりました。
しかし、その後の経営はうまくいかず、買収により発生した借金とのれん・無形資産の償却に苦しむことになります。買収後の10年間で実に6回もの最終赤字を計上しました。
その後リストラ等により何とか収益性を立て直し、事業そのものは軌道に乗ってきました。財務状況も着実に改善し、やがて利払費やのれん・無形資産の償却額が減少することは明白だったのです。
その端緒が見えたのが、2018年3月期の決算発表です。6期ぶりの復配となり、2019年3月期の営業利益・純利益は過去10年で最高になる見通しです。ポジティブサプライズとなり、決算発表翌営業日にはストップ高を記録しました。
企業の成長を見通すのは簡単ではありませんが、財務状況の改善やコスト削減はある程度の確実性が見込めます。改善後の業績を踏まえると大きく割安であり、その確実性を重視した投資でした。
以下、推奨時のレポートを公開します。
【投資のポイント】
- 日本板硝子(5202)は、自社の2倍以上の売上を持つピルキントンを2006年に買収するも、以後巨額買収の負担に苦しむ。
- 時間の経過とともに、買収に伴う無形資産の償却負担や金利の支払いが減少するため、自然に財務は改善に向かう。リストラを経て汎用品から高性能品にシフトできれば、規模を追わずとも収益性を向上させることが可能。
- リーマン・ショックのような劇的な景気後退に襲われない限り、売上高6,000億円に対して時価総額730億円は圧倒的に割安。V字回復銘柄として推奨。
【推奨理由】
日本板硝子(5202)は、その名前の通りガラスメーカーです。主に建築用や自動車用のガラスを製造しています。板ガラスのシェアは、旭硝子(5201)やサンゴバン(仏)と並び世界トップクラスです。
かつては旭硝子に次ぐ国内2番手にすぎませんでしたが、そこから一気にグローバル企業へと押し上げたのが2006年のピルキントン(英)の買収です。当時は、売上高が自社の2倍以上にもおよぶ「小が大を呑む」買収として話題になりました。
しかし、この買収が日本板硝子を苦しめることになります。
ひとつは、買収に伴う金利負担の増加です。当時は現在のような低金利ではありませんでしたから、買収資金の借入れに対して多額の金利を支払わなければなりませんでした。昨年度時点でも、金利負担は180億円にものぼります。
もうひとつは、のれんや無形資産の償却・減損です。会計の話なので少し難しいかもしれませんが、要するに高く買ったものを毎年少しずつ分割して費用にしないといけないということです。これにより、会計上の利益が押し下げられます。
さらに、2008年のリーマン・ショックによる景気悪化の不運も重なり、同社の業績は低迷を続けます。ピルキントン買収以降の10年間に6度もの最終赤字を計上しました。資本の減少に歯止めがかからず、2010年には約500億円の公募増資も実施しています。
経営も混迷を極めます。もともとドメスティックな会社でしたから、自社よりも大きい外国企業をコントロールする素養はなく、現地の社長は外国人・日本人とめまぐるしく交代しました。
しかし、ようやく最近になって明るい兆しが見え始めたようです。現地法人のコントロールを現地に任せる方式を採り、軌道修正を図っています。また、過剰設備や不採算事業をリストラし、企業グループのスリム化を行っています。
もっとも、リストラを行ったことがかえって赤字を拡大させ、昨年度は過去最大の最終赤字を記録しました。しかし、リストラによる損失は一時的なものであり、その後の業績を改善させる効果があります。
注目したいのが、時間の経過に伴う経営指標の改善です。これまで、ピルキントン買収に伴う「無形資産の償却」として毎年約80億円を計上してきましたが、これが今年度より30億円に減少します。借入金の返済も進み、金利負担も減少するのは既定路線です。
リストラと償却費・金利負担の減少により、売上が横ばいになったとしても、年間100億円程度の業績改善効果が見込めると考えます。劇的な景気後退にでも襲われない限り、V字回復を遂げることは難しくないでしょう。
ガラスメーカーの最大のリスクは、中国勢による低価格攻勢です。汎用のガラスは、中国メーカーによる低価格商品が大量に製造され、国内で捌ききれないものが世界市場に溢れています。「普通のガラス」を作っていたのでは、中国勢には太刀打ちできないでしょう。
そこで、日本板硝子は「VA(Value Added)品」の拡大を目指しています。規模を追うのではなく、利幅の大きい高性能品を強化しているのです。例えば、現在建設中の「宇宙船」と呼ばれるアップルの新社屋に同社の製品が採用されました。このような取り組みを今後も増加させる方針です。
高性能品を開発するには研究開発が不可欠ですが、これまで財務に余裕がなく、あまり力を入れることができませんでした。そこで今週、日本政策投資銀行とメガバンクが出資するファンドから種類株で400億円の資本を調達し、借入金の返済と開発投資に充てることになりました。
市場は株式の希薄化を懸念し、株価は大きく下落しましたが、種類株は基本的に現金で返済する方針のものです。資本が減少していたため、万が一に備えて財務体質を強化する目的もあるでしょう。
競争環境や景気悪化のリスクはありますが、ビジネスの中身に問題のある会社ではありません。利益が出るようになれば、売上高6,000億円に対して時価総額730億円はあまりに安いと言えるでしょう。「圧倒的な割安株」として推奨いたします。
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