暴力的な株価変動を受け入れた先に成功がある

どんな投資家も、株式市場の荒波に抗うことはできません。短期的な変動は時に理不尽ですが、長期的には企業の業績を反映します。市場の変動を受け入れた先にこそ、長期投資の成功があるのです。

マザーズの変動から見る株式市場の二面性

米中貿易戦争の不透明感が漂い、軟調な相場が続きます。この1ヶ月ダウ平均は3%、日経平均は5%、香港ハンセン指数は10%値下がりしました。新興市場に目を向けると、東証マザーズ指数は年初のピークから25%下落しています。

株価の下落を受けて、保有株の含み損が膨らんでいる投資家は少なくありません。特に、小型株に積極的に投資するスタイルの個人投資家のダメージは甚大なものがあります。

(東証マザーズ指数)

ただし、これくらいの下落は新興市場にとって序の口です。マザーズ指数は、2006年から2008年の2年間で2500ポイントから250ポイントまで90%の下落を経験しています。インデックスとしては異例の下落率です。

暴落のきっかけは「ライブドア・ショック」です。堀江貴文氏に代表される、イケイケの新興企業の社長が跋扈し、小型株が盛り上がって多くの個人投資家を引き寄せました。しかし、堀江氏が逮捕されると急激にその熱が冷め、やがて暗黒の時代が訪れます。2008年9月にはリーマン・ショックが発生し、市場にトドメを刺しました。

しかし、当然ながら全ての新興企業が悪いということはありません。順調に業績を伸ばす企業も現れ、株価は回復に向かいます。マザーズ指数は直近のピークでは底から5倍になり、その過程で多くの億万長者を生みました。

マザーズほどではないにしろ、株式市場には急激な下落が頻繁に起こります。投資家は、いくら素晴らしい分析力を持っていたとしても、市場の流れには逆らえないのです。

一方で、上記の事例から長い目で見れば株価は業績を反映することもわかります。一時は回復不能にも見えた新興市場も、まともに業績を高める企業があったからこそ回復を遂げたのです。もちろん、反対に対して高すぎる株価はやがて修正されることになります。

このように、株式市場は極端な二面性を持っています。時に理不尽で暴力的な株価変動を見せながら、やがてはまともに業績を反映するのです。多くの投資家はこの相反する性質に振り回されることになります。

暴力的な株価変動を受け入れた先にある果実

いくら株式市場が気まぐれだからと言って、その本質を知っていれば極端に恐れることはありません。私たちバリュー投資家がすべきことは非常にシンプルです。

何より割高なものには手を出さないことです。市場の気まぐれで、割高なものが更に値上がりする局面に出くわすことがあります。それを見て、なぜ買わなかったのかと後悔することも少なくありません。しかし、実態の伴わない株価は砂上の楼閣であり、やがて崩壊することは歴史が証明しています。

一方で、割安と思われるものを買ったとしても、なかなか上がらないどころか大きく下がってしまうことも珍しくありません。そうなると、意気消沈して自信をなくしてしまいます。

誤った分析であれば修正する必要がありますが、そうでないのなら株価変動を受け入れなければなりません。理不尽な株式市場の流れには、何人たりとも抗うことはできないのです。

ここに、長期投資の本質があります。多くの人は、短期的な利益に固執してしまいます。これは人間の心理的な性質であり、個人投資家も機関投資家も関係ありません。そして、目の前の株価が下落していると、つい逃げ出したくなってしまいます。

多くの人が逃げ出すと、株価は下落します。すると、そこに企業の価値と株価との間に乖離が生まれます。しかし、下落相場で損失を被った投資家はなかなか戻って来ず、割安な状況はしばらく続くのです。

バリュー株投資家は、まさにこのような時に勇気を持って買いを入れるべきです。多くの人が目の前の利益に固執し損失を避けるからこそ、長期の利益を手放してしまいます。そこに大きなチャンスが生まれるのです。

多くのビジネスと同じように、他の人が受け入れ難いことを受け入れることは、結果的には大きな利益を生みます。長期投資家は、目の前の株価変動や含み損を受け入れることで、やがて大きな果実を得ることができるのです。

AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスがバフェットに「なぜみんなあなたの投資戦略を真似しないのか?」と尋ねたことがあります。それに対するバフェットの答えは以下のようなものでした。

ゆっくり金持ちになりたい人なんていないよ。

逆に言えば、ゆっくり金持ちになることを受け入れられるならば、あなたもバフェットのようになれるということでしょう。私はそのような投資家の姿勢を応援したいと思います。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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4 件のコメント

  • 株価は長い目でみた場合、業績に比例するとありますが,それは米国のことであって日本では通用しないようです。バフェットさんに利益の出し方をどうして教えてあげないのか尋ねたら、みんなすぐに金持ちになりたい人ばかりだよ。と、答えが返ってきたそうです。私の大好きな銘柄、日立とか東芝とか三菱とか売り買いやっていたけど、東芝は別として日立なんかは30年前に比べて3分の1になってます。もちろん全部手放しているけど。よって実際に比例している銘柄、していない銘柄何対何のわりあいかわかりますか。私は30年はやっているけどそんな簡単に業績の良い銘柄を安く買うだけどは日本ではまず無理でしょう。米国ではリーマンショックから今は立ち直っているでしょう。日本はどうですか。答えは簡単だよ。

    • コメントありがとうございます。
      「業績が株価に連動するのは米国のことであって、日本では通用しない」という事実は、これまではあったかもしれません。しかし、その要因は日本株が業績に対して割高だったために起きた現象です。業績が好調でも、割高な銘柄はやがて値下がりします。現在の日本市場はバブル崩壊後の20年を経て割高感が修正され、株価は適切に業績を反映するようになってきています。
      どうぞよろしくお願い申し上げます。

  • 安く買って高く売るは、株の売買の原則だから確かに言うとおりだとは思います。
    興味はありますが、会費が、小口投資家にとっては結構高い。安く買って、じっと待っているのなら、その間の会費は無駄に感じてしまいます。利潤に対する割合的なシステムにならないでしょうか。

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