大きなリスクを取ることでリターンを高める「β」は、ハイリスク・ハイリターン投資の源泉です。他方、市場の乖離によってもたらされるリターン「α」は、長期的な成功のために不可欠な要素です。
株式市場は変動幅が大きいほど期待リターンが高まる
株式市場がリターンをもたらす根本的な要因は、人間の心理にあります。人間は不確実なことや眼の前の痛みを必要以上に嫌う傾向があるのです。もともとは危険を避けて生き延びるために必要だった心理ですが、それがそのまま投資においても反映されています。
例えば、1年後に確実に100円がもらえる場合と、50%で90円、50%で110円がもらえる場合では、前者が選好されることが多いとされています。10円多くもらえる可能性よりも、確実に100円がもらえる方が好ましいと考えるのです。
ここで、110円のところを120円に引き上げてようやく前者と後者を選ぶ人が同数になったとしましょう。前者の期待値は100円、後者の期待値は105円になり、期待値の差である5円(105-100円)が株式市場の根本的な収益源になります。
つまり、株式市場が不確実である以上、上記で言うところの5円はトータルで見た時に期待できるリターンということになります。実際に長期の総体的な株式市場のリターンは6~7%と言われており、インデックスに長期投資すると良いとされる根拠になります。
期待リターンは、不確実性(変動幅)が大きくなるほど大きくなります。後者の選択肢が下方50円だとしたら、上方が160円(期待値105円)ではおそらく前者(確実に100円)を選択する人が多くなるでしょう。後者の上方を200円としたときに釣り合ったとすると、期待値の差は25円となります。変動幅が大きいことにより期待値を上げる要素をベータ(β)と言います。
確実に100円 | 50%:50%=90円:120円 | 50%:50%=50円:200円 | |
期待値 | 100円 | 105円 | 125円 |
超過リターン | 0円 | 5円 | 25円 |
ここ数年の相場で大きな利益をあげている人は、変動幅(β)を上げて利益を高めている人が一定数いると考えられます。つまり、大きな損失を被るリスクを負いながら、結果的に上昇相場となったことで、大きな利益をあげたのです。
具体的には、株価の変動の大きい新興企業への投資や信用取引です。リーマン・ショック後マザーズ指数は5倍になっていますから、指数を買うだけでもそれだけ儲かり、信用取引をしていればなおさら大きく資産を育てられたでしょう。
しかし、これは「たまたま」相場が上昇したことによる側面も否めません。特に、市場が割高感を示しつつある現状では、このような投資をしていると大きく資産を減らしてしまう可能性もあります。
もちろん、変動幅を大きくして資産を増やす方法を否定するわけではありません。ただし、それは思惑が外れると大きく資産を減らしかねないということも認識しておくべきです。投資は、つまるところリスクとリターンのバランスをどこに持ってくるかという問題に帰着します。
市場平均を上回る「α」の探し方
ところで、株式の価値と株価という側面に目を向けると、単にリスクを増やすだけではないリターンを追求することができます。(これをベータに対してアルファ(α)と呼びます。)
通常、株価は長期的なリターンが6~7%、PERにして15倍程度に収まることを目指して決まってきます。表面上のPERの差異は長期的な利益の見通しを踏まえたものであり、それらを調整すると同じような数値に収れんするはずです。
しかし、まれに説明がつかないほど低い(または高い)株価が付いている銘柄が現れます。それらに投資することで、6~7%の平均を上回るリターンを獲得することができるのです。
この非合理な株価水準を生むのも、投資家の心理に他なりません。下落局面では、多くの人が本性に従い目の前の含み損を回避しようとして売りを重ねます。すると、株価は必要以上に値下がりしてしまうのです。この現象は相場全体でも個別銘柄でも起こります。このような時に大勢に逆らって買うことで、私たちはαを獲得することができます。
もう一つは、将来の成長性が過小評価される場合です。人は遠い未来のことになればなるほど、判断を避けたがります。10年後に高い確率で大きな利益をあげるとわかっていても、すぐに利益が出ないのなら我慢ができません。成長している企業であっても、少しでも成長率が鈍ろうものなら、多くの投資家はしびれを切らして売ってしまいます。それが繰り返されると、成長株なのに割安という状況が生じるのです。
バフェットが中核とするのは、まさに成長性の過小評価です。このような銘柄は過小評価が続いた後、実際に利益を伸ばすことで見直されて、やがて短期の利益を目論む投資家によって株価が引き上げられます。このうまみをわかっているからこそ、バフェットは「永久保有」と断言できるのです。
「β」と「α」をうまく活用してリターンを高めるには
上記をまとめると、以下のようなになります。
- 不確実性が要因となり、株式は平均6~7%のリターンを生む
- 変動性を高めることで期待リターンを上げることができるが、同時に損失リスクも大きくなるリスクをはらむ
- 大勢が売っている時に買うことで、あるべき株価を大きく下回り、リスク以上の高いリターンを生むことができる
- 遠い未来の成長は過小評価されがちであるが、利益を積み上げることでやがて見直されて大きく伸びることがある
以上の要素を踏まえることで、私たちが相場の流れの中でどのように振る舞うべきかが自ずと見えてきます。
- 株価変動はリターンを高める味方である
- 大勢が売っている時に買うことで、市場平均を上回るリターンを生むことができる
- 目の前の動きに一喜一憂せず、未来を見据えることでやがて高いリターンを得られる
これらを念頭に置いていれば、多少の失敗や株価変動に一喜一憂せず、長期的に資産を増やしていくことができるでしょう。
※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。
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バフェットの唱える永久保存は判りますが、配当は100株も100万株も同じ配当率。つまり現金に換えなければ利益にはならないということ。それなら100万株の購入資金はどうやって手にいれるの。
コメントありがとうございます。
株式投資には元手の確保が不可欠です。バフェット流の買い持ち戦略ならなおさらです。したがって、株式投資以外の収入があることが望ましいと言えます。バフェットも、傘下の保険会社からの収入が元手となっています。