株価急落の今こそ学ぶべき「金融相場」と「業績相場」

株式市場は大幅な下落が続いています。しかし、お金の流れについてきちんとした知識を持っていれば、何も焦ることはありません。大まかな流れは同じことの繰り返しです。

「金融相場」と「業績相場」

今回の下落要因について様々な憶測が流れますが、大きなものは明快です。それは「米長期金利の上昇」「米中貿易戦争による景気減速懸念」です。

株価の決定要因は、大まかに以下の数式に当てはめられます。

株価=業績÷金利

企業業績が向上すると、株価は上昇します。これは感覚的にわかりやすいでしょう。さらに、金利が低下すると、市場に多くのお金が流れるため株価の上昇要因となります。(実際はもっと複雑ですが、動きを覚えていれば良いでしょう。)

業績向上による株価上昇を「業績相場」、金利低下による株価上昇を「金融相場」と言います。その反対を「逆業績相場」「逆金融相場」と呼びます。これらは以下のような流れで繰り返します。

金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場→金融相場→・・・

リーマン・ショック後のFRBのゼロ金利政策やアベノミクスによるマイナス金利は「金融相場」を生み出しました。その後、企業業績が回復し、今年に入るまで「業績相場」が続いています。

しかし、FRBが金利を引き上げたことで、そろそろ「逆金融相場」の様相を呈しつつあります。さらに、米中貿易戦争の深刻化が企業業績へ与える影響も懸念され始めました。まだ好調な業績が続いているため踏みとどまっていますが、実際に数字に現れ始めると「逆業績相場」がやってくるでしょう。

もっとも、貿易戦争の影響が出て本格的な逆業績相場がやってくるのは数ヶ月~1年以上先の話になるでしょう。それまではもみ合いを繰り返す可能性があります。

景気悪化をものともしない成長株を探せ

業績が悪化することを考えると、割高・割安の判断基準であるPERも作用しなくなります。PERの分母が小さくなり、株価が下がってもPERはなお高いという状況が起こります。したがって、景気によって業績がブレる企業(循環銘柄)への投資判断は難しくなります

ここでは、バフェットが「いつでも越えられる30センチのハードルを探す」と言うように、難しい投資を行う必要はありません。私たちは、どこで下げ止まるかわからない循環株への投資タイミングを見極めるのではなく、景気が悪化しても伸び続けられる成長株を探せばいいのです。

もちろん、相場の状況が悪ければ、成長株でも一時的には値下がりします。これは避けて通れません。逆に言えば、長期投資家は一時的な下落を受け入れられるからこそ、長い目で見ればそれ相応の報いを得られるのです。(これを「リスクプレミアム」と言います。)

これまでの相場では、成長株には20~30倍以上の高いPERが付いていました。これではバリュー株投資家としてはなかなか投資できません。

株価が下がってくると、成長株でもPERが10倍、あるいはそれ以下の水準になることがあります。リーマン・ショックからアベノミクス開始前まではそのような銘柄がゴロゴロしていました。10倍株はそのようなところから生まれてきたのです。

当時のような絶好の投資チャンスはそうそう訪れないかもしれません。それでも、成長株をそこそこ割安な価格で買っていれば、業績の向上がやがて株価に反映されてくるでしょう。私たちがすべきことは、これからの成長株を探し当て、安いと思ったら買い、あとは放っておくだけです。

下落したとは言え、個別の銘柄を見るとまだそこまで割安な水準には達していないように感じます。短期的にはリバウンドするかもしれませんが、私たちが狙うのはその小さな利益ではありません。数年単位の大きな動きに賭けたほうが、より確率が高く、より大きな利益を得られると考えます。

今はまだ勝負どころではありません。来るべき時に備えて、資金は潤沢に備えておきましょう。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • 初心者ですので、教えて下さい。
    福利で利益を上げていくには、株を買った後、放って置かずに、その後も配当金で買い続けていく事なのでしょうか。

    • タカトモ様
      コメントありがとうございます。
      長期投資における複利には3通りの考え方があります。
      1つ目は、配当を再投資することです。
      2つ目は、売却益を再投資することです。
      3つ目は、企業が内部留保した利益を再投資して、成長することです。
      いずれも複利運用における重要なメカニズムです。
      投資家においては、利益が出たらそれを使ってしまわなければいずれかの形で複利の恩恵を受けることになります。

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