RIZAP赤字決算の実情(2018年7月当社記事より)

業績好調と見られていたRIZAP GROUP(2928)が一転赤字決算となり、株価はストップ安水準となっています。

以前私は雑誌『リベラルタイム』に以下の記事を寄稿しましたが、そこで挙げていたリスクがどうやら現実化したようです。

『月刊リベラルタイム』に記事が掲載されました

2018.07.07

ポイントは以下のようなことです。

  • RIZAPは2008年にも野放図な買収により経営危機に陥った
  • 好調な業績は、業績不振企業を純資産以下で買った「負ののれん」に支えられた会計のトリックにすぎない
  • 業績不振企業はどこに爆弾を抱えているかわからず、表面化すれば再び経営危機の可能性がある

これらはすべて有価証券報告書を見ればわかることです。その手法はかつてのライブドアを彷彿とさせるものであり、リスクの所在は明らかでした。賢明な投資家は、これだけのリスクを抱えた企業は避けなければなりません。

以下は記事の引用です。


RIZAP GROUPは複数の事業を運営する持株会社であり、RIZAP事業はその一部分にすぎない。RIZAP事業のみに限ると、有価証券報告書で把握できる2017年3月期の売上高は193億円と、全社売上高の20%にすぎない。すなわち、残りの80%は、RIZAP以外の事業で成り立っていることがわかる。

それ以外の事業とは一体何だろうか。実はここに、RIZAPの拡大のからくりがある。

2003年に健康コーポレーション株式会社として設立され、健康食品のインターネット販売で成功し、2006年に上場した。しかし、上場市場は札幌証券取引所アンビシャスという「マイナー」な取引所であり、東京証券取引所マザーズや大阪証券取引所ジャスダック(当時)などの主要市場でないことから、注目度は低かったことが伺える。

一方で、2005年〜2008年にかけて、有価証券報告書で確認できるだけで8つの会社を買収している。買収により事業範囲を広げて会社の規模を大きく見せる、典型的な多角化経営だ。実際に業績は急拡大している。

しかし、単純な多角化戦略がそううまくいくことはない。2008年3月期には4.4億円の最終赤字(前年度は3.5億円の黒子)を計上し、翌年の売上は半減している。2008年には、それまでに買収した8社のうち3社を手放していることからも、経営は危機に瀕していたことが伺える。

そのような危機的な状況から起死回生を図ったのが、2012年に始めたRIZAP事業である。事業コンセプトは大当たりし、復活の原動力となった。すると、一時はなりを潜めていた買収戦略が再び動き出す。

2012年3月期に8社だったグループ子会社は、2018年3月期には76社に急増している。買収した企業にはジーンズメイト(東証1部)、マルコ(東証2部)、堀田丸正(東証2部)など9つの上場企業も含まれる。一度は失敗した多角化経営が、規模を拡大して再び大きく動いているのだ。

もっとも、私は「多角化経営=失敗」と決めつけるつもりはない。孫正義氏率いるソフトバンクグループも、買収により規模を拡大し、日本を代表する立派な会社に成長させた。会社を買収して成長させ、その会社の利益や株式の売却益でさらに成長するビジネスモデルは、資本主義の究極形態と言えるだろう。

RIZAP GROUPが好んで買収するのは、経営不振の会社がほとんどである。そこにRIZAPで培ったマーケティング手法などを持ち込んで、業績を改善させた事例も少なくないという。確かに、業績不振企業を買い集めている割には、売上だけでなく利益もしっかりと成長しているように見える。

ただし、これだけで買収が本当に成功していると見るのは早計だ。そこには、企業買収を巡る複雑な会計制度の問題がある。

一般的に企業を買収すると、買収金額から被買収企業の純資産を差し引いた金額が「のれん」として貸借対照表に計上される。これは定期的に、または被買収企業の業績が悪化した際に償却されて費用となり、利益を圧迫するものだ。しかし、RIZAP GROUPの貸借対照表にのれんはほとんど計上されていない。

それもそのはずで、のれんは買収金額が被買収企業の純資産を上回ったときに計上されるが、RIZAP GROUPが買収する経営不振企業は純資産を下回る価格で買えてしまう。このとき、会計上は「のれん」の反対である「負ののれん」が計上される。

「のれん」は貸借対照表に計上されるものだが、「負ののれん」はその期の利益に計上される。例えば、純資産100億円の会社を60億円で買えれば、その時点で40億円の利益が出る。買収した会社がいくら赤字を垂れ流していようと関係ない。

買収を繰り返すRIZAP GROUPには、毎期多額の負ののれんが「割安購入益」として計上されている。2018年3月期に関して言えば、136億円の営業利益のうち半分以上の74億円がこの「割安購入益」なのである。

確かに会社を安く買えるのはいいことだが、そこで生じた会計上の利益を実力とは到底考えづらい。同じような買収をやめれば、たちまち利益は半減してしまうだろう。それでも、今期100億円の営業利益の積み増しを表明しているということは、これからさらに買収を加速させることに「コミット」しているのである。

それでは、このような企業買収におけるリスクとは何だろうか。

一つは、買収した企業を本当に再生できるかということである。いくらRIZAPでうまくいったからといって、同じ手法が全ての会社に使えるとは限らない。企業買収の世界ではこれをPMI(Post Merger Integration)と言い、買収そのものよりも圧倒的に難しいとされる。

ただ会社を買っただけで再生することはありえない。実際に経営の中に入っていき、一つ一つ問題を解決していく必要がある。そのためには優秀な人材が必要で、それもこれだけ多くの会社を買収していれば、それだけ大量の人材が必要だ。

もともと上場企業としては小さなRIZAP GROUPにそんな人材がいるはずはない。だからこそ、カルビーから松本氏を招聘し、人材集めやノウハウの蓄積にはずみをつけたかったのだ。松本氏だけでなく、これまでにユニクロやソフトバンクからも幹部を招き入れている。問題は十分に認識しているようだ。

もう一つのリスクは、PMIがうまくいったとしても防ぎようのないリスクである。

もともと不振企業を買っているため、どこに爆弾があるかわからない。財務諸表や表面的な経営状況を見ただけではわからない「簿外債務」が隠れている会社も少なくないからだ。

東芝は、子会社のウエスチングハウスが実質ゼロ円で買収した原発関連会社に莫大な簿外債務が見つかり、経営危機に陥った。LIXILグループは、買収したドイツのグローエの中国子会社に不正会計が発覚し、660億円もの損失を余儀なくされた。大企業でもこうなのだから、RIZAP GROUPが買収した企業の中に同じようなことがある可能性は否定できない。

膨大な損失により財務が悪化すれば、買収資金を貸していた銀行は慌てて返済を迫るだろう。RIZAP GROUPの有利子負債は760億円にのぼる。これが経営を圧迫し、2008年のような経営危機に再び見舞われない保証はどこにもないのである。


 


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