投資は買いより売りが難しい…じゃあいつ売るの!?

株式投資は、買いよりも売りのほうが難しいと言われます。実際、売るタイミングを間違えて損失を膨らませたり、得られるはずだったリターンを逃してしまうことはよくあります。この記事では、長期バリュー投資に必要な「売り方」について解説します。

利益確定・損切りを考えるべきではない

利益確定・損切りについて、「購入価格から10%下落したら損切りしましょう」とか「25%上昇したら一旦利益確定しましょう」などと言われているのを耳にします。しかし、これは小さな利益を積み重ねるデイトレーダーがやることであって、長期投資家がやろうとすると痛い目にあいます

例えば、市場全体が下落相場に入った時、10%下落する度に損切りしてしまっていては、延々損失を重ねるばかりで徐々に資金が底を尽いてきます。下がり終わってこれから上昇に向かうという時には、既に買うだけの資金的・精神的余裕がなくなってしまっています。

利益確定も決していいとは言えません。例えば25%上昇で利益を確定してしまうと、その後2倍になったかも知れないチャンスを逃してしまうことになるばかりか、売却益の約2割は税金が引かれてしまいます。利益確定はすればするほど、多くの税金を支払うことになるのです。

長期投資はトータルで資産を増やすことが目的ですから、ある期間(例えば1年)の利益を確保する必要はないはずです。含み損が出ていても、その後上昇する可能性があるのなら、損切りではなくむしろ買い増すくらいの気持ちが必要です。最初から利益確定や損切りを考えることは理にかないません。

買った価格は忘れよう

それでも、証券口座にマイナスが並んでいるのは精神的に辛いですし、プラスが出ていたらいつ確定させようかそわそわしてしまうものです。しかし、その気持ちが長期投資で成功できない大きな要因なのです。

この際、自分がいくらで買ったかは忘れてしまいましょう。株価はあなたが買った価格とは全く関係なく動きます。買った価格で株式の価値を判断することはできません。できれば、証券口座のプラスマイナスにも目をつぶったほうがいいでしょう。

では、売る時に何を基準にしたら良いかというと、「株式本来の価値」です。「目標株価」と言い換えてもいいでしょう。バリュー投資では、株価が価値を下回った時に投資をします。つまり、投資する時点で目標株価を設定しておく必要があるということです。

目標株価を基準にした売却戦略

バリュー投資は、株価が目標株価を「理不尽に」下回った時に投資します。逆に言うと、株価が目標株価を「理不尽に」上回った時こそ、売却すべき時です。長期投資ではバイ&ホールドが基本ですが、そのような”バブル”はもう訪れないかも知れないからです。成功を収めたバリュー投資家の一人であるジョン・テンプルトンは以下のように言っています。

市場が最も悲観的になっているときこそ買いのチャンスである。

市場が最も楽観的になっているときこそ売りのチャンスである。

目標株価は定期的に見直す必要があります。長期投資が基本的に放ったらかしと言っても、メンテナンスは必要です。その際に、目標株価を変更せざるを得ない時があります。目標株価を下げなければならない場合に、以下のようなものがあります。

  • 自分の分析が間違いだと気づいた
  • 経営戦略や外部環境が恒久的に変わってしまった

目標株価を下げた結果、今の株価を下回ってしまった場合、損益に関係なく売却すべきです。これを私は「精神的損切り」と呼んでいます。自分の間違いや環境の変化は素直に認めるべきです。その失敗を次の投資に活かしましょう。

「売った後」がはるかに大事

株を売ることも重要ですが、長期的な視野で資産を増やすためには「売った後」がはるかに大事です。

どうしても資金が必要な時を除けば、資産を増やすために再び投資することが理想的です。新たな投資対象は、売ったものよりは割安で、リターンが望めるものにしましょう。そうでなければ資産を入れ替える意味がないからです。先述のテンプルトンも次のように言っています。

今の資産よりもはるかに割安なものに買い替えるのでなければ、その資産を売ってはならない。

もし、売った後に割安な銘柄が見つけられなければ、無理に投資するのではなくそのまま現金で持っておきましょう。そうすれば、いざいい銘柄が出てきた時に躊躇せずに資金を出すことができます。

今持っている銘柄をどうしたらいいか決めかねている方は、ぜひつばめ投資顧問にご相談ください。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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