【銀行株】利上げで株価が暴落する2つの理由 投資するべきか?

佐々木
こんにちは、佐々木です。日経平均が過去最大規模の暴落からの急回復という展開で大混乱となっています。今日は注目を集める銀行株を取り上げます。

多くの投資家が疑問に思っていることがあります。
「日銀は金利を上げると言ったのに、なぜ銀行株は売られているの?」

銀行の基本的な儲けの仕組みは、企業や個人にお金を貸した際に得られる金利収入です(各種手数料収入もありますが)。その金利が上がるのだから、銀行株は株価が上がりそうです。しかし、24年8月5日は業種別指数で保険業と銀行業が17.%安と下落率のトップとなりました。

今回は、今株式市場で何が起きているのかを整理し、解説します。目先の株価動向に目が行きがちですが、5年10年の長期スパンで銀行株のことを考えるようなきっかけになれば幸いです。

現状整理:日銀の利上げと米国景気後退

まずは、今回の株価暴落が起こった原因を整理します。
ことの発端は7月31日の日銀金融政策決定会合です。そこで、これまで0~0.1%としていた政策金利を0.25%に引き上げ8月1日から適用することが発表されました。

その理由は以下の通りです。

日経新聞より引用
ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離(かいり)した為替水準が続けば国民経済の健全な発展に影響が及ぶ。金融政策は経済・物価情勢の全体像をみて運営していく必要がある。最近のコストプッシュ圧力の再度の高まりを背景とした価格転嫁が進み物価が上振れる可能性もある。

つまり、円安とインフレに対する措置として利上げが決定された、ということです。これ自体は、ある意味教科書通りといえます。

そして8月2日に米国の雇用統計が発表されました。
就業者の伸びは前の月と比べて11万4000人で、市場予想の17万5000人程度を大きく下回りました失業率は前の月から0.2ポイント上昇して4.3%でした。

これによって「この2年ほど米国の景気後退が来そうでこない、軟着陸するのではないか?」という期待から、アメリカの景気後退が現実味を帯びていくことになっていくのです。この場合、アメリカの中央銀行であるFRBは「利下げを行うのではないか?」という観測が広がります。

この2つの要素によって、日米の金利差が縮小する動きとなり、円高ドル安が加速しました。

出典:株探 日足チャート

佐々木
次に、株価の動向です。

銀行株の現状

この米国の景気動向不安と円高によって国内の輸出関連企業が売られる展開となり、日経平均株価は暴落しました。(8月6日は反発しましたが、まだまだ市場は落ち着きがない状態です)

出典:株探 日経平均 日足チャート

この環境の中で、利上げによる恩恵を受けそうな三菱UFJやSMFG、みずほFGなどの銀行株が暴落しました。
冷静に業績を見ると、これらメガバンクの利益は堅調です。

出典:SPEEDAより作成

それでも、暴落は起こってしまいました。それはなぜでしょうか?

佐々木
その理由を解説します

銀行株暴落理由1:海外貸出の鈍化

MUFGの貸出金の推移を見てみると、約半数は海外貸出です。

出典:決算説明資料

近年の成長を支えた米国で景気後退が訪れる場合、MUFGの貸し出す先が少なくなる可能性があります。景気後退→企業の設備投資など資金需要の減退→貸出先が縮小→銀行の成長が止まるのでは?というロジックです。
加えて、製造業と同じように円高によって利益が目減りすることも考えられます。(MUFGの海外売上比率は50%を超えています)

つまり景気後退と円高によって、海外における成長が鈍化する可能性が高まり、銀行株が売られたと考えます。

佐々木
次は、日本国内に目を向けてみます。

銀行株暴落理由2:利上げ期待の縮小

そして、もう1つは「利上げ期待の縮小」です。

この23年から銀行株の株価が上がっていた理由は、海外の利益拡大によるものに加え、日本における金利上昇シナリオへの期待がありました。

しかし、いざ金利を上げるとなると円高に繋がり、日本を引っ張ってきた海外売上比率の高い企業の収益悪化が懸念されます。株安によって消費者マインドも悪化してしまう可能性も考えられます。
結果的には、日銀の植田総裁が利上げの発表を行ったことで、利上げを行うデメリットが鮮明になっているように見えます。

実際に2年債利回りは急落しています。

出典:Investing

この状況から市場は、「日銀が金利を上げるのは難しい。銀行の収益は増えない」と認識したと思います。そのため、利上げの発表があっても、利上げに対する期待が減少し、銀行株が売られる展開となっています。

先に述べたように、この2年の株価上昇の背景には「日本でも金利が上がるのではないか?」という期待で株価が上昇していました。

 

しかし、いざ金利が上がると「材料出尽くし」となったわけです。
言い換えるならば、株価は「噂で買って、事実で売れ」―そんな動きになったと言えそうです。

これらが銀行株が暴落した要因だと考えます。

佐々木
次は、長期目線で銀行に投資することを考えてみましょう。

長期的に銀行株に投資すべきか

銀行株は消費者にとって身近であり、配当利回りも高いという理由で人気の投資先の1つです。

ここで考えたいのは、長期的に銀行株に投資するメリットです。
私は以下のようなものがあると考えます。

  • 製造業やサービス業など他業種と比較し、業績には安定感がある(ただし、リーマンショックのような金融混乱期には大きなダメージ)
  • その安定的な収益から生み出される配当金を受け取れる
  • 景気好調局面では利益を伸ばしやすい

 

一方で、以下のようなリスク、デメリットがあります。

  • 今回のように金利動向の影響を受けやすい
  • 事業の成長性や資本収益性は決して高くない
  • 現在は金利上昇という成長期待も剥落している
  • 運用の実態が外部から観察しづらく、突発的な損失が出る可能性(あおぞら銀行など)

〜あおぞら銀行の急落〜

Bloombergより引用 24年2月2日の記事
同社の時価総額は年初来で約3割減少している。​​あおぞら銀行は1日、米国オフィス向けの不動産融資で損失に備える追加の引当金計上などを行うため、今期の純損益が一転して280億円の赤字に陥る見通しだと発表した。

したがって、銀行株の特性と現状を考えると

「経済・景気の悪化が起きなければ、安定した配当を受け取れるメリットがある。しかし基本的には事業の成長性は高くなく、現在は金利上昇に伴う業績拡大期待は弱まった」

このように言えると考えます。
銀行株へ投資することを否定する訳ではありませんが、それに何を求めるかが重要になると考えます。配当が欲しいのか?事業成長に期待するのか?景気・金利動向のリスクを許容できるのか?この辺りを自身で噛み砕く必要があるでしょう。

これらの情報をもとに、銀行株に投資するべきか考えてみてください。

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執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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1 個のコメント

  • 今回の総銘柄暴落に伴い、ポートフォリオを見直している中、銀行株を買い増そうかと考えていたところてす。参考になりました。ありがとうございました。

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