翻訳はAIに取って代わられるのか?翻訳センター(2483)を分析

翻訳センター(2483)は、医療・工業などの産業翻訳や、翻訳者派遣、電話通訳などの事業を行う会社です。

業界最大手で盤石の経営基盤

翻訳会社は小規模なところがほとんどですが、同社は規模拡大により上場まで果たしました。現在でも業界最大手です。

企業活動のグローバル化に伴い、産業翻訳の需要は増加しています。それとともに同社の業績も拡大が続いている状況です。

注目すべきが営業利益率の上昇です。2014年3月期から2018年3月期にかけて4.1%から7.5%に上昇しました。数値として決して高いわけではありませんが、業務効率が改善していることが見て取れます。

それを可能にしているのが、業界最大手のポジションだと考えます。産業翻訳は各分野の専門知識が必要であり、言語ができるからと言ってすぐに真似できるわけではありません。

逆に言えば、数をこなすほど知識やノウハウが蓄積され、業務の効率化と同時に案件数の増加にもつながるわけです。

訪日外国人等の増加もあって市場は拡大し続けており、経営環境は当面盤石のようにも見えます。

最大のライバルはAIだが・・・

しかし、最大の懸念といえば、翻訳がAIに取って代わられるリスクでしょう。

いまや、Google翻訳を使えばちょっとしたWebサイトくらいなら大方問題なく翻訳できます。産業翻訳が一般的なものより難しいとは言え規則性はあり、力を入れればできないことはないでしょう。これは時間の問題のように思えます

そうなると、翻訳センターが取るべき選択肢としては以下のようなことが考えられます。

  1. 追いつかれるまで何とか生き残る
  2. コンピュータでは難しい分野(通訳など)に力を入れる
  3. 自らコンピュータを取り込む

1について、コンピュータは英→日の翻訳は得意でも、日→英の翻訳は苦手のようです。これは、英語に比べて日本語の使用者が少ないことや、日本語の主語が曖昧なことが理由として挙げられます。日本語の壁はまだ高いかもしれません

2についても、通訳事業を行うISSを買収するなど手を打っています。訪日外国人の増加で、医療現場では医師と外国人の患者との意思疎通が課題となっています。産業翻訳とのシナジーが活きる可能性があります。

3についても、現在の戦略の延長線上にあると思われます。同社は「各種ツール・ソフトウェアを活用した翻訳業務の効率化の提案」を謳い、コンピュータを毛嫌いするのではなく利用しています。営業利益率の向上もこれがあってのことだと思われ、翻訳の単価が下がったとしても、それ以上の人件費削減につながる可能性もありそうです。

こうして見ると、当面死角はないように思えます。ただし、これらを一気に打ち砕く技術が登場する可能性も見ておかなければなりません。

翻訳センターに投資すべきか?

同社は現在JASDAQ上場ですが、(2019/2/5修正)東証一部上場の形式要件はほぼ満たしているようです。「時価総額250億円」をクリアすれば東証一部上場基準を満たす可能性があります(執筆時点約80億円)。少し時間はかかりますが、東証二部を経由すれば時価総額基準は40億円にまで下がり、数値の上ではクリアできます。

一般的に東証一部に上場すればその瞬間は株価が上がることが多いので、それを期待することもできます。(ただし、そのタイミングや上昇率は断言できません。)

株価を見ると、相場の歩調に合わせた下落基調で、PER13倍というところまで下がってきました。無借金経営で財務も安定しています。

事業の方向性や株価の水準を見ても、投資のタイミングとしては悪くない気がしています。今後よく注目したいと思います。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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