病院に行くと、いつも「なぜこんなに待ち時間が長いのだろう」と思います。
インターネットが発達したこの時代に、連絡手段と言えば対応時間の限られた電話くらいです。診察が終わっても会計まで待っていなければならず、時間ばかりが取られてしまいます。その間に待合室で新たな病気をもらおうものなら元も子もありません。
「医者が足りない」というニュースを目にしますが、このような非効率を解消するだけでも、状況はかなり改善するはずです。
日本国内で成長産業を見つけるのは簡単ではありませんが、医療産業が数少ない成長分野の一つであることは間違いないでしょう。高齢化で医療を必要とする人が増え、病院はいつも高齢者で溢れかえっています。
医療と並ぶ成長分野がITでしょう。スマートフォンの登場でほとんどの人がコンピュータを持ち歩くようになり、世界は大きく変わりました。
ともに成長産業である医療×ITを担う企業があれば、成長余地は相当大きくなるはずです。しかし、規制のせいなのか、医療の本丸に切り込む企業はなかなか見当たりません。
そんな中で「一人勝ち」と言えるのが、医療ポータルサイトを運営するエムスリー(2413)です。
医師の9割が登録するサイトを運営
ソニーから生まれた会社で、マッキンゼー出身の谷村氏が創業時から社長を勤めます。
主な収益源は「m3.com」という医療情報サイトの運営や、医師と製薬会社のやり取りを行う「MR君」、治験や医療キャリア事業などです。国内29万人医師のうち26万人が同サイトに登録しているということで、圧倒的な力を誇ります。
これまでは「MR君」を主力に業績を伸ばしてきました。「MR」とは製薬会社の営業のことですが、その非効率性や医師と営業との癒着が目立っていました。そこにインターネット技術で風穴を開け、コストも下げられることから、医師・製薬会社の双方に重宝されたのです。
成長はそれだけにとどまりません。製薬会社でコスト高が続く治験(エビデンス)事業や医師・看護師等の医療職におけるキャリア支援事業など、関連事業への拡大が続きます。中国を始めとする海外での伸びも顕著です。
これまでの事業が頭打ちになっても、次の分野へ拡大し続けられる絶好のポジションと、マッキンゼー仕込みの経営力がある限り、今後も着々と業績を伸ばすことが想定されます。
キャリア事業やエビデンス事業はまだ始まったばかりであり、これから伸びていくでしょう。いくつか競合もいるようなのでメディア事業ほど有利ではないかもしれませんが、業界における知名度で優位性を誇ります。
クラウド化で注目される電子カルテ分野
事業拡大がこれだけにとどまることはないでしょう。私が特に注目しているのが電子カルテ分野です。
電子カルテはいくつかの企業が手がけているようですが、どこもあまりぱっとしません。使い勝手や他のソフトウェアとの互換性などが問題になっているようです。ベンダーの顔ぶれを見ても、使い勝手の悪さで悪名高い公的サービスのものと似た印象を受けます。
このようなサービスは、病院で言えば受付から診断、データの保管、会計などあらゆるシステムが連動して動くようにしなければ「タコツボ化」が免れません。現在の電子カルテ業界はまさにその状況に陥ってるように見えます。
このような状況に一石を投じる可能性があるのがクラウド化です。IT業界ではクラウド化が叫ばれて久しいですが、医療も例外ではないと思います。
クラウドは導入費用や手間がかからず、インターネットにさえ繋がっていれば定額費用を払うだけですぐに利用できます。ソフトウェアも自動的にアップデートされるため、メンテナンスが必要ありません。大規模なソフトウェアは、ほとんどがクラウドに置き換わっていくでしょう。
この点に関して、エムスリーも抜け目がありません。2012年にはシィ・エム・エスを子会社化し電子カルテ事業への参入を果たし、クラウド型電子カルテ「デジカル」の展開を手がけています。クラウド型電子カルテでは、すでにシェアNo.1だそうです。
病院経営は共通事項が多く、クラウド型の電子カルテはプラットフォームになり得ます。将来的には異なる病院間でも、クラウドで一瞬にしてカルテの共有が可能になるかもしれません。
エムスリーは絶好の立ち位置と能力、さらには財務的な余力からこの分野も制する可能性があります。電子カルテへの本格参入により、いよいよ医療の本丸に切り込むことも夢ではありません。
経営は99点だが株価は・・・
現状でリスクらしいリスクは見当たりません。M&Aによって成長してきたため、のれんが380億円ありますが、資本の半分以下にとどまります。大きな問題にはなりにくいでしょう。経営的には99点の会社と言って差し支えありません。
それなら今すぐに買いたいところですが、そう簡単にはいかないのが株式投資です。
成長企業のPERは高くなりがちです。エムスリーのPERも本日(2019年2月19日)時点で52倍と高い数値を示しています。利益が成長していても、PERが高いとわずかな成長性の鈍化で株は売られてしまいます。
それを象徴しているのがこれまでの株価推移です。利益は4年間で2倍近くに伸びていますが、株価は昨年末下落からの下落の結果ほとんど伸びていません。成長企業への投資の難しさがよく分かるチャートとなっています。
一方で、利益が伸びて株価が伸びていないということは、PERが低下してきているということです。このまま株価が停滞を続けるとしたら、どこかでチャンスが訪れるかもしれません。
優良企業なのは間違いなく、これからも動向を注視したいと思います。
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銘柄コード2143ではなく2413ではないですか?
大切な部分を間違ってしまいました。修正させていただきます。ご指摘ありがとうございます。