29期連続増配の花王(4452)は初心者にもおすすめの銘柄。下げた時を狙え!

花王(4452)と言えば、日本の上場企業としては最長となる29期連続増配を継続している企業です。2位のSPK(7466)の21期を大きく引き離したダントツの1位です。

【出典】2018年12月期決算説明会資料

日用品は揺るぎのない寡占市場

連続増配は、上場企業として一つの理想的な姿だと思います。達成するためには業績の裏付けが必要です。花王は連続増収増益とまではいかずとも、着実に業績を積み上げてきました。

この業績を達成できたのは、日用品において確たるブランドを築きてきたからにほかなりません。紙おむつの「メリーズ」洗濯用洗剤の「アタック」シャンプーの「ビオレ」は多くの人から親しまれてきました。

【出典】花王ホームページ

日用品の力は馬鹿にできません。洗濯用洗剤をとっても、売り場に並んでいるのは花王の「アタック」、ライオンの「トップ」、P&Gの「アリエール」がほとんどです。この分野は、競争が激しいように見えて、実は寡占市場なのです。

バフェットも、日用品の価値を高く評価しています。毎日使い続けなければなりませんし、多くの人は同じブランドを使い続けます。これが「経済の堀」を生み出しているのです。流行りの「サブスク」など目ではありません。

今後も国内での高いシェアや商品群の拡大、中国・アジアをはじめとする海外での成長により、業績を伸ばし続ける可能性は高いと考えます。少なくとも、現在の業績が大きく崩れる可能性は低いと言えるでしょう。

花王の成長期待は「市場平均並み」

投資家として注目すべきは、業績がどこまで伸びるかです。花王は、2030年に向けた長期目標を設定しています。2018年と2030年の目標を比較すると以下の通りです。

売上高:1.5兆円→2.5兆円
営業利益率:13%→17%

これを達成できたとしたら、営業利益は約2倍に成長します。ただし、11年の期間を要するため、営業利益の成長率は年6.5%です。これは、ほぼ市場平均並みです。

つまり、PERの水準が変わらないとしたら、今株を買って持ち続けても、市場平均並みの期待値しか得られないということです。

現在のPERは25倍です。強いブランドを持つ消費財メーカーのPERはおおよそこのくらいに固定されているため、あまり変動することはないでしょう。したがって、この銘柄で大きな利益を期待するのは難しいように思えるのです。

劇的な成長が見込めなくても、バフェットが買いたい理由

では、バフェットはなぜそのような銘柄を好んで買うのでしょう。

結論から言うと、リスクが低いからです。ここで言うリスクとは、事業リスクと株価変動リスクの両方です。

事業リスクに関しては、上記で説明したとおりです。どんな経済状況でも必ず消費される製品を作り、寡占市場を築いています。

株価変動リスクも、PERが20~25倍程度で安定しているため、ショックが起きても相場全体よりも株価変動が緩やかになります。先行きが不安視される現在のような局面ではむしろ資金が集まりやすい傾向もあります。

それに連続増配も加えれば、よほどのことがない限り大きく値崩れせず、なおかつ安定した株価上昇が見込める銘柄です。初心者はこのような銘柄から入るべきだと考えます。

チャート画像

リターンを上げたければ「Buy the Dip」

しかし、せっかく個別株投資をしているのに、市場平均並みの成長しか望めないのはつまらないとも言えます。そう考えるなら、買うタイミングを身につける良い機会です。

これだけ盤石の銘柄でも、相場全体の変動や突発的な材料によって値下がりすることがあります。過去にも、PER15倍程度まで下がったことがありました。

PERが15倍の水準にまで下がったとしましょう。その後10年間利益が年率6.5%で成長し、それまでにPERが25倍の水準まで戻ったとしたら、株価は3.1倍に上昇します。年率リターンで12%です。かなり良い水準になったでしょう。

これだけ盤石な銘柄を買って年率12%なら、リスク対リターンで考えると効率の良い投資と言えます。リターンの絶対値だけで判断してはいけません。

すなわち、リスクを抑えつつリターンを上げようと思ったら、花王のような非の打ち所のない銘柄を、株価が下がった時に買えば良いのです。決して難しいことはありません。バフェットもこのようにして富を築きました。

株価が下がった時に買う戦略を「Buy the Dip」と言います。花王はそれに適した銘柄です。株の初心者は、まず頭に入れておくと良いでしょう。

以下の記事も参考にしてください。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 【紅麹問題】それでも小林製薬の株価はなぜ暴落しないのか
    今回は小林製薬を改めて取り上げます。 前回、小林製薬を取り上げてから約3ヶ月が経ちましたが、そこからの進捗と、今何が起こっているのかを示して...
  • 本田技研工業 配当利回り4% PBR0.65倍は投資チャンスか?
    本田技研工業(以下、ホンダ)の株価が好調です。 出典:株探 月足チャート 過去20年の平均PERは約10倍ですが、24年7月9日現在のPER...
  • 配当利回り 3.4%のキリンHDに投資して良い?成長性を考える
    今回は国内大手のビールメーカー、キリンホールディングス(以下、キリン)を分析します。株価は2018年にピークをつけた後、2,000円前後でほ...
  • ヤクルトの株価下落が止まらない!その原因と今後の見通しをアナリストが解説
    今回はヤクルトについてです。 ヤクルトの株価が下落し続けていますが、その理由と今後の見通しについて解説したいと思います。 長期的に成長してい...
  • 次の出世株を探せ!中小型株編【1】
    普段私が取り上げている企業は、やはり皆さんが注目する企業ということになりますが、実際の投資は必ずしもそういった動きにはならないかもしれません...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す