エレコム(6750)は、PC・スマートフォンの周辺機器を販売する会社です。自社で工場を持たない「ファブレス」と呼ばれるメーカーで、中国や台湾の企業に製造を委託しています。
動き続けなければいけない業界。鍵は創業社長にあり
マウスやキーボードなどのPC周辺にはじまり、最近ではスマートフォンのフィルムやケース、ケーブルなどの需要の高まりに対応してラインナップを増やしています。家電量販店に行けば、同社の製品が必ず置いてあります。
業績は非常に好調で、右肩上がりの成長が続いています。拡大する市場をトップランナーとして牽引している形です。
ファブレスメーカーの強みは、柔軟な生産能力にあります。PC・スマートフォンの周辺機器の寿命は長くありませんから、市場のニーズに合わせた商品を次々に発売しなければなりません。必然的に多品種小ロット生産となり、自社で工場を持っていたのではとても対応が追いつかないのです。
このような会社に求められる能力は、市場のニーズを的確に掴み、それをいち早く点頭の棚に並べてもらうことです。エレコムはこの点が優れていて、次々に新商品を開発し、強力なコネクションを持つ家電量販店に並べてもらえます。それだけの力を持っていたからこそ、トップランナーとして君臨できたのです。
しかし、競合が多い分野であることも確かです。委託生産は、裏を返せば設計図さえあれば誰でも生産できてしまうということです。生産を受託した中国企業がそのまま販売することも可能です。製品自体も、決して難しいものはありません。
つまり、常に動き続けていないと勝ち続けることは難しいのです。その点において必ずしも「経済の堀」を持つ企業とは言い難いのです。
それでもこれまで勝ち続けてきた要因は、社長の性格にありそうです。創業者の葉田社長は常に動き回っていると評判で、トップダウンで次々に商品開発を進めています。これが、変化の速い市場を引っ張る原動力となったのでしょう。
そう考えると、この会社の最大のリスクは社長交代ということになります。まだ65歳ですが、インタビューでも「スカッと辞めたい」と語っていて、そのために自社の強みを高める技術者を雇用したり、安定したB2B事業であるアンテナ会社を買収したりしています。
【参考】大手と起業家の懸け橋に エレコム社長 葉田順治さん(日本経済新聞)
課題は多いが、実力も確か。次の展開から目が話せない
社長がいつまでいるのか、スマートフォンが牽引してきた市場がいつまで成長するか、また買収した企業をうまく経営できるかなど、まだまだ課題の多い会社だと思います。それでも、これまで成長を続けてきたのは、実力があるからでしょう。
株価は上昇を続けています。それでも、PERは18倍と、決して高い水準ではありません。このまま好調が続けば、市場要因を抜きに年10%程度の成長は期待できると考えます。
一方で、前述のように強力な「経済の堀」を持っているわけではありません。将来的なリスクを考えると必ずしも割安な水準ではありませんから、今が買い時というほどでもないと考えます。
実質無借金で財務状況は全く問題なく、M&Aなども含めた今後の経営動向が気になる会社です。株価がどうなるか、ウォッチを続けたいと思います。
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