三菱商事の株価が軟調となっています。
2023年前半には資源価格の上昇や円安を背景に急激な上昇を示し、5月には過去最高値となる3,775円を記録しました。しかし、その後は調整局面に入り、徐々に下落傾向を示しています。その後、やや持ち直す動きを見せているものの、依然として3,000円前後でもみ合う展開が続いています。
現在の株価水準は、ピーク時と比較すると約20%程度下落した水準にあり、投資家の間では割安感が出てきているとの見方も出始めています。果たして三菱商事は買い時なのでしょうか?「そもそも三菱商事とはどのような企業か?」ということ含めて解説してまいります。
目次
三菱商事のビジネスモデル
三菱商事は総合商社ですが、単なる仲介業にとどまらず、各事業分野に深く関与し価値創造に携わっています。
戦略的投資と事業経営
三菱商事は多くの事業会社に出資し、主要株主や筆頭株主として経営に参画しています。
- LNG事業では複数のプロジェクトに出資・参画
- 自動車関連では三菱モーターズやいすゞ自動車の販売会社に出資
- 食品分野ではCermaq(水産養殖)やPrinces(食品製造)を完全子会社化
バリューチェーン全体の最適化
原料調達から生産、物流、販売まで一貫したバリューチェーンを構築・管理しています。
- 金属資源事業では鉱山権益取得、生産、輸送、販売まで一貫して関与
- 食品事業では原料調達、製造、流通、小売りまで幅広く展開
グローバルネットワークの活用
世界中の拠点網を活かし、各事業の国際展開や新規市場開拓を支援しています。
総合力を活かしたソリューション提供
複数の事業分野の知見を組み合わせ、顧客企業や事業パートナーに包括的なソリューションを提供しています。
新規事業開発
社会課題や技術革新を捉え、新たな事業機会を発掘・育成しています。特に近年はEX(エネルギー変革)やDX(デジタル変革)分野に注力しています。
このように、三菱商事は単なる仲介者ではなく、事業投資家、戦略パートナー、バリューチェーン・オーガナイザーとして各事業に深く関与し、価値創造を行っています。直接のオペレーションは子会社や関連会社が担うケースが多いですが、三菱商事本体も戦略立案や重要な意思決定、リソース配分などで中核的な役割を果たしています。
事業の構成割合は以下の通りとなり、「金属資源」や「天然ガス」といった資源分野の貢献度が大きいことがわかります。
業績は資源高・円安で大きく伸びる
以下が三菱商事の純利益推移です。
2007年から2015年にかけては、概ね3,000億円から5,000億円の範囲で推移していました。しかし、2016年3月期に大幅な赤字を記録し、約1,500億円の損失を計上しています。この急激な落ち込みは、資源価格の下落や事業環境の悪化が主な要因です。
その後、22018年から2020年にかけては5,000億円から6,000億円の安定した利益を維持しています。2021年3月期には新型コロナウイルスの影響で一時的に利益が減少しましたが、2022年3月期には約9,400億円の純利益を記録、さらに2023年3月期には約1兆1,800億円という驚異的な数字を達成しています。この急激な利益の伸びは、資源価格の上昇や円安の進行などが大きく寄与したためです。
2024年3月期と2025年3月期の予想では、利益は若干低下するものの、依然として9,000億円を超える水準を維持する見込みとなっています。
リスクとなる資源価格と為替
三菱商事の主要なリスクの一つは、資源価格と為替レートの変動に対する高い感応度です。同社の収益構造は、特に天然ガスグループや金属資源グループなどの資源関連事業に大きく依存しています。これらの事業は国際市況の影響を直接受けるため、原油、LNG、銅などの資源価格の変動が業績を大きく左右します。
また、グローバルに事業を展開する三菱商事にとって、為替レートの変動も重要なリスク要因です。円安は海外で得た利益の円換算額を増加させるため、短期的には業績にプラスに働く一方、円高は逆に海外収益の目減りをもたらします。
資源価格の高騰や円安傾向はこれまで三菱商事の業績を押し上げて来ましたが、その流れが反転するとしたらマイナスの影響を受けます。2016年3月期に最終赤字を記録したのも資源価格の下落等が原因であり、今後もそれが原因で業績が悪化する可能性は十分に想定できるでしょう。
株価下落の要因
三菱商事の株価は、この数ヶ月で下落傾向を示しています。この下落の主な理由としては、以下の要因が挙げられます。
まず、世界経済の減速懸念が強まっていることです。特に中国経済の回復の遅れや欧米の景気後退リスクが、投資家心理に影響を与えています。
次に、資源価格の軟化傾向があります。三菱商事の収益の多くを占める天然ガスや金属資源の価格が、2023年のピーク時と比べて下落しており、これが業績への懸念につながっています。
また、足元の円高傾向も株価下落の一因となっています。円高は海外での利益を円換算した際に目減りさせるため、三菱商事のような国際的な事業展開を行う企業にとってはマイナス要因となります。
地政学的リスクの高まりも投資家の慎重姿勢を招いています。中東情勢の緊迫化や米中関係の不安定さが、グローバルに事業を展開する三菱商事にとってリスク要因と見なされています。
株価は割安か?
三菱商事の株価指標を見ると、一見割安感があるように思われます。PERは12.9倍と比較的低く、PBRも1.27倍で資産価値に近い水準です。また、ROEは11.27%と高い資本効率を示しています。
しかし、これらの指標は現在の予想業績に基づいており、今後の事業環境の変化によっては大きく変動する可能性があります。特に三菱商事の場合、資源価格や為替レートの影響を強く受けるため、これらの外部要因の変化が業績を左右する可能性が高いです。
現在の世界経済の不確実性や地政学的リスクを考慮すると、今後の業績予想には慎重になる必要があります。資源価格の下落傾向や円高の進行が続けば、予想されている業績を下回る可能性もあります。
したがって、現時点で単純に「割安」と判断するのは早計かもしれません。投資家は、これらのリスク要因を十分に考慮し、中長期的な視点で企業価値を評価することが重要です。
悪い会社ではないですが、力強い成長性があるわけではありません。資源化価格下落や円高の可能性を考えると、私だったらあえて今のタイミングで投資することはないかなと思います。
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三菱商事の株価は3000円前後で推移していることと配当額が大きいことで配当利回りは他の5大商社と比較しても優位性があるので、今なら投資するに値すると思います。株式分割やって株価も買いやすい水準になったので。短期的な収益性というより、長期で持つと良い企業だと思います。財務構造も比較的柔軟です。投下資本利益率(ROIC)も高水準で、WACC上回り経済的利益も稼いでいるし。