中外製薬の株価はどこまで伸びるか?―「飲む肥満薬」の可能性が牽引する成長力

中外製薬は、米国の製薬大手イーライリリーと提携し、経口の肥満治療薬「飲む肥満薬」の開発を進めています。この革新的な医薬品は、従来の注射薬を置き換える可能性を秘めており、慢性疾患の治療に新たなアプローチを提供するものです。特に、肥満や糖尿病患者にとって、経口薬という使いやすい選択肢が登場することは、医療現場での利便性向上や患者の負担軽減に大きく寄与すると期待されています。

この背景には、中外製薬の強力な研究開発力が大きく関わっています。同社は、スイスの製薬大手ロシュとの提携を活用し、抗体医薬品を中心とした革新技術を次々と生み出してきました。今回の「飲む肥満薬」の開発もその延長線上にあり、世界中の投資家や医療関係者から注目を集めています。また、こうした医薬品の開発が進む中、中外製薬の株価は急成長を遂げ、株価は過去最高値水準にあります。

出典:

株価がこれほどまでに上昇した理由は、単なる個別の医薬品開発だけでなく、中外製薬の長期的な成長戦略にもあります。ロシュとの戦略的提携を通じて、グローバル展開が進み、同時に国内外での医薬品市場シェアを拡大しています。

このように、肥満治療薬の開発だけでなく、強力な技術基盤と市場展開力に支えられた中外製薬の成長ストーリーは、投資家にとって非常に魅力的です。今後も同社の動向に注目が集まることは間違いありません。中外製薬の成長性について詳しく知りたい方は是非記事を読みください!

株式市場で話題沸騰の「肥満薬」とは?

中外製薬がイーライリリーと提携して肥満治療薬を共同開発していることは、投資家にとって注目すべきニュースです。この提携により、両社は従来の注射薬に代わる経口薬、いわゆる「飲む肥満薬」の開発を進めており、世界的な肥満治療市場に新たな変革をもたらす可能性があります。

肥満治療は、糖尿病や心血管疾患など多くの慢性疾患の予防や治療に直結する重要な分野であり、医療界でもそのニーズが高まっています。特に注目すべきは、イーライリリーが既に市場に投入している肥満治療薬「マンジャロ」などが好調な売れ行きを見せている点です。この治療薬は、GLP-1受容体作動薬として、体重減少効果が証明されており、世界中で注目されています。

その結果、イーライリリーの株価は大幅に上昇しており、株価は過去5年で8倍以上になっています。この成長の背景には、肥満治療薬市場の拡大と、イーライリリーの製品がその中心にいることが大きく影響しています。

出典:Google

このような市場環境の中で、中外製薬とイーライリリーが共同開発している「飲む肥満薬」が成功すれば、中外製薬にとっても同様に大きな株価上昇が期待されます。

中外製薬の強みとは?

もちろん、新薬の開発に成功する確率は非常に低く、それだけに期待して投資を決断するのは早計です。新薬の開発には長い年月と膨大な資金が必要であり、臨床試験の結果次第では市場投入までたどり着けないケースも多く存在します。

それでもなお、中外製薬が持つ研究開発力や市場における競争力は、他社と比較しても高く評価されています。同社がこれまでに成功を収めてきた背景には、単なる新薬の開発能力に留まらない、いくつかの強力な要素があります。

まず第一に、中外製薬はロシュとの戦略的提携によって、グローバルな研究開発リソースを活用できるという強みを持っています。この提携は、単なる資金面でのサポートだけでなく、最先端の技術や知見を共有することによって、研究開発の効率性を飛躍的に高めています。ロシュとのパートナーシップを活かし、中外製薬は抗体医薬品や中分子医薬品といった革新技術をリードし、多くの成功例を積み重ねてきました。

また、中外製薬のもう一つの強みは、長年にわたり培ってきた抗体医薬品の技術力です。抗体医薬品は、がん治療や自己免疫疾患において高い効果を発揮する薬剤であり、特に精密なターゲティングが求められる分野です。この分野における中外製薬の技術力は、世界的にも非常に高く評価されており、これが新薬開発の成功確率を高める要因となっています。

さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に進め、AIや自動化技術を導入することで、創薬プロセスを加速させている点も重要です。これにより、研究開発の効率化やコスト削減が実現し、競争優位性がさらに強化されています。例えば、AIを活用したデータ分析により、臨床試験の成功確率を高めるための予測分析が可能となり、製品の市場投入までのプロセスがスムーズになります。

このような技術的基盤を背景に、中外製薬は市場でも非常に高い信頼を得ています。この強力な研究開発体制こそが、新薬開発の成功確率を高め、特に肥満薬開発においても大きな成果を生み出す可能性を秘めています。

ロシュとの提携により業績は急拡大

中外製薬は、スイスの製薬大手ロシュとの戦略的提携により、研究開発力、販売力、そして人材開発力が大幅に強化され、業績が大きく伸びてきました。

業績推移グラフからも明らかに、特に2020年以降、売上高および営業利益が急速に増加していることが確認できます。これは、ロシュからの支援を受け、グローバル市場における展開力を高めたことが大きな要因です。

出典:マネックス証券

ロシュとの提携により、最先端の医薬品開発技術やグローバルなネットワークが中外製薬に提供され、抗体医薬品や中分子医薬品の分野での研究開発が加速しました。この技術力の強化により、革新的な新薬が次々と市場に投入され、その結果として業績が著しく成長しています。また、ロシュの世界的な販売網を活用することで、これらの新薬は日本国内だけでなく、海外市場でも大きな成功を収めています。

さらに、同社は人材開発にも力を入れており、特に研究職や営業職の社員が実力を発揮しやすい環境が整えられています。転職サイトの口コミからも、中外製薬はロシュとの提携により実力主義の文化が浸透し、努力が報われるシステムが確立されていることがうかがえます。

出典:Openwork

ロシュとの提携がもたらしたこれらの効果により、中外製薬は今後も革新的な医薬品の開発を続け、国内外でさらなる成長が期待されます。

中外製薬のリスクとは?

中外製薬の成長には多くの期待が寄せられていますが、同時にリスクも存在します。

特に、新薬開発には莫大な資金と時間が必要であり、成功する可能性が必ずしも高くない点は、全ての製薬会社に共通するリスクです。臨床試験の段階で失敗すれば、膨大な投資が回収できず、株価や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これは中外製薬も例外ではありません。

しかし、その中でも中外製薬は強力な研究開発力を武器に、他の国内製薬会社を凌駕しつつあります。ロシュとの提携を活用し、抗体医薬品や中分子医薬品の分野での技術力は非常に高く評価されており、AIを活用した開発プロセスの効率化など、リスクを最小限に抑えるための取り組みが進められています。

このような研究基盤が、同社の新薬開発における成功率を他社よりも高めている要因と言えるでしょう。

中外製薬は経営指標のいくつかにおいてライバル企業を大きく上回っています。特に、ROE(株主資本利益率)では21.34%と、他社の第一三共製薬(12.81%)、アステラス製薬(1.10%)、武田薬品(2.11%)を大きく上回っており、株主資本に対する収益性が非常に高いことが示されています。これは、資本効率を高めつつ、収益をしっかりと上げていることを意味します。

ROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)でも同様の傾向が見られ、中外製薬は資産や投下資本を効果的に活用し、高い利益率を実現していることがわかります。これにより、投資家にとっては収益性の高い企業として評価される要因となっています。

出典:マネックス証券

株価は割高か?

中外製薬のPERは、前期実績値に対して30倍超、またPBRは6倍を超え一見割高に見えます。

しかしながら、キャッシュフローを基準としたEV/EBITDA倍率(企業価値/EBITDA倍率)は22.2倍と、他社と比較して大きく異なるわけではなく、アステラス製薬(21.3倍)と同程度の水準にあります。これにより、中外製薬は高い収益性を持ちながらも、割高感があまりなく、投資家にとって魅力的なバリュエーションを維持していると言えます。

本当に良い企業は、その成長力により長期的には高いバリエーション水準もものともせず、株価を伸ばし続けます。中外製薬が今後も素晴らしい新薬を開発し、強みを維持し続けられるとしたら、今からでも十分株価を伸ばす余地があると言えるでしょう。「飲む肥満薬」を含め、今後も同社の経営から目が離せません!

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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