業績好調のパーク24がコロナ禍を乗り越えて大きく成長するための条件は?

佐々木
こんにちは、佐々木です。今日はパーク24(4666)を取り上げます。

あなたは駐車場サービス業界最大手のパーク24という企業をご存知でしょうか?
「Times」というブランドで駐車場を運営している企業です。
今回はこの企業の事業内容を深掘りし、投資しても良いか考えていきます。

パーク24の事業内容

まずは業績の推移を見てみましょう。

コロナ禍では赤字になったものの、中長期的には売上と営業利益ともに成長しています。23年10月期の売上高3,301億円、営業利益319億円は共に過去最高です。今期24年10月期の業績予想においても過去最高を更新する見込みです。(売上高予想3,570億円、営業利益予想350億円)

 

現在のパーク24は主に3つの事業を行っています。

  1. 駐車場国内:遊休地や施設付帯駐車場を賃借するサブリース契約と駐車場所有者からの管理委託。予約駐車場の運営や駐車場に付帯した施設運営。「タイムズ24」
  2. 駐車場海外:英国、豪州、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、台湾において駐車場サービスを提供
  3. モビリティ:レンタカー、カーシェアリング、ロードサービスにかかる車関連事業。「タイムズカー」

事業ごとの売上推移を確認します。

主力の駐車場(国内)はほとんど横ばいですが、近年はモビリティ事業の売上成長が目立っています。海外事業も浮き沈みがありながらも徐々に拡大している傾向にあります。

 

次は事業ごとの利益推移です。

まず、海外事業は赤字が続いています。後述しますが、駐車場事業は基本的には初期投資が大きいビジネスであり、収益基盤が確立するまでは時間がかかる傾向にあります。現在の海外事業は投資フェーズにあると言えるでしょう。

一方で、駐車場国内は売上高は横ばいでしたが利益は右肩上がりで成長しています。モビリティ事業も同様です。

したがって、パーク24の主力は国内駐車場事業であり、2本目の柱としてモビリティ事業が成長していると言えるでしょう。

佐々木
次はこの駐車場事業を深掘りします。

駐車場ビジネスで圧倒的な理由

実は、パーク24は国内駐車場業界において、圧倒的な首位となっています。

出典:パーク24 企業HPより引用

 

A社は三井の不動産リアルティ(三井のリパーク)、B社は日本パーキング(NPC)です。
なぜこれほど圧倒的な地位を確立できたのでしょうか?

まず、パーク24は、バブル経済崩壊後の都市部における遊休地の増加という社会的背景を巧みに捉えました。不動産オーナーは固定資産税の負担に悩まされる一方で、都市部では慢性的な駐車場不足が問題となっていました。当時は駐車場の関連機器の製造や販売を、行っていましたが、パーク24は従来の駐車場ビジネスモデルを一新し、不動産オーナーから土地を借り上げ、定額の賃貸料を支払う仕組みを導入しました。これにより、不動産オーナーは安定的な収入を得られるようになり、同時にパーク24は土地購入のリスクを回避しつつ、事業を拡大することが可能となりました。

次に、パーク24は「タイムズ」方式という革新的な課金システムを開発しました。従来の月極めや1時間単位の課金方式ではなく、15分や20分単位の「従量制課金方法」を導入し、利用者のニーズに柔軟に対応しました。さらに、日中と夜間それぞれに最大料金を設定する「固定制課金方法」も併用し、長時間利用者にも配慮しました。この料金システムにより、利用者は必要な時間だけ駐車場を利用でき、コストパフォーマンスが向上しました。

パーク24の成功を支えるもう一つの重要な要素が、TONIC(Tully’s Optimal Network Information Center)と呼ばれる無人運用システムです。このシステムにより、24時間365日、各駐車スペースの利用状況や収益データをリアルタイムで把握することが可能となりました。また、遠隔操作によるトラブル対応や監視カメラの設置により、無人運営でありながら高い安全性と利便性を確保しています。

TONICシステムは単なる運営効率化ツールにとどまらず、顧客サービスの向上にも大きく貢献しています。利用者はパソコンやスマートフォンから空車情報を確認でき、クレジットカードや電子マネーでの決済も可能になりました。さらに、会員制度を導入してポイント還元を行うことで、顧客のロイヤリティ向上にも成功しています。

パーク24の戦略の特筆すべき点は、データに基づく最適化の徹底です。同社は稼働率47~48%を最適値と定め、この数値を基準に各駐車場の運営を最適化しています。稼働率に余裕を持っている理由は、稼働率が高すぎるといつも駐車場が満車状態で利用できない人が出現し、この状況が度重なると顧客が離れる可能性があるためです。逆に稼働率が低い場合は駐車スペースの縮小やレイアウト変更を行い、高い場合は近隣に新規駐車場を開発するなど、常に需要と供給のバランスを調整しています。

また、このデータを活用して各駐車場の料金設定も最適化しており、収益性の向上に繋げています。例えばコロナ禍の影響で駐車場需要が一時的に低下する中、収益性が低い駐車場や赤字物件の解約を進めました。逆に新規開発においては、収益性の高いエリアに絞った開発を行いました。この結果、近年の駐車場国内の利益率が改善しています。

このように、パーク24は社会のニーズを的確に捉え、当時革新的だったビジネスモデルと技術を駆使して、駐車場業界に新たな価値を創造しました。

土地所有者、利用者、そして自社のそれぞれにメリットをもたらす三方よしの事業展開により、同社は業界における圧倒的な地位を確立し、持続的な成長を実現しています。

カーシェアリングでも圧倒的な強さを持つ

そして、近年成長中のモビリティ事業、特にカーシェアリングにおいて競合を圧倒しています。

カーシェアリング事業の成功には、駐車場、顧客(会員情報)、そして車両という3つの重要な要素が不可欠です。この業界で先行していたオリックスは、事業展開を進めていましたが、駐車場という重要な資産を持っていませんでした。これは、カーシェアリングサービスの拡大と効率的な運営に大きな障壁となっていました。

一方、パーク24は既に駐車場事業で圧倒的な強みを持っていました。全国に広がる約1万5000カ所の駐車場ネットワークは、カーシェアリング事業にとって理想的な基盤となりました。さらに、パーク24は駐車場事業を通じて約550万人という膨大な会員基盤を有していました。これは新規事業を展開する上で、顧客獲得コストを大幅に削減できる強力な武器となりました。

パーク24に不足していたのは、カーシェアリングに不可欠な車両でした。この最後のピースを獲得するため、2009年にマツダレンタカーのレンタカー事業をM&Aで取得しました。この動きにより、パーク24は駐車場、会員情報、そして車両という3つの重要な要素を一挙に手に入れることに成功しました。

駐車場を自社で保有していることがカーシェアリング事業の大きな強みとなりました。駐車場のコストを自社内で吸収できるため、他社と比べてコスト面で優位に立つことができ、黒字化を早めることができました。これは、土地コストが高い都市部において特に重要な要素であり、他社が苦戦する中、パーク24は駐車場ビジネスの強みを活かして成功を収めました。

さらに、パーク24の成功を加速させたのが、駐車場事業でも活躍している「TONIC」の存在です。TONICは単なる運営管理システムではなく、マーケティングやデータ分析のための強力なツールとして機能しました。このシステムを活用することで、パーク24は以下のような効率的な収益向上策を実施することができました。

  1. リアルタイムの稼働率分析に基づく、動的な料金設定
  2. 地域や顧客層に応じた最適な車種の配置
  3. 利用パターンの分析による、需要予測と車両配置の最適化
  4. 詳細な顧客データを活用した、ターゲットを絞ったマーケティング活動
  5. ビジネス利用など、新たな顧客セグメントの開拓

TONICを通じて得られるこれらのインサイトは、パーク24のサービス品質向上と収益性改善に大きく貢献しました。例えば、商業地域では大型車や落ち着いた色の車両を、住宅地では小型でカラフルな車両を配置するなど、きめ細かな対応が可能になりました。また、ビジネス利用の需要が高いエリアを特定し、平日の稼働率向上にも成功しています。

このように、パーク24は3つの重要要素を迅速に獲得し、さらにTONICシステムによる高度なデータ分析と運営最適化を組み合わせることで、カーシェアリング市場において圧倒的な競争優位性を確立しました。

まとめ:今後の成長性とリスク

このように既存の事業領域は圧倒的な地位を確立していますが、今後の成長性はどうでしょうか?

カーシェア市場は右肩上がりで拡大しています。

出典:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団より作成

 

しかし、長期的にはカーシェアリングが拡大すればするほど、自動車保有台数は減少する傾向にあるはずです。そもそも国内人口減少に伴い自動車保有台数は拡大するとは考えづらいことから、長期目線ではカーシェアリングの領域をいかに伸ばせるかが重要になると考えます。

一方で投資リスクとしては、コロナ禍のように人々の移動が止まるようなケースはパーク24に悪影響です。例えば大規模災害なども投資リスクとして挙げられます。人々の移動が制限されることで、駐車場の利用率が低下し、カーシェアリングやレンタカー事業も打撃を受けます。今後も新たな感染症の発生や自然災害のリスクは常に存在し、これらが長期化した場合、会社の収益に深刻な影響を与える可能性があります。

一方で、2017年から参入している駐車場海外事業は今期まで赤字が続いています。

特にコロナ禍と比較し赤字幅は縮小しているものの、未だ業績に好影響を与えるわけではありません。駐車場ビジネスは初期投資がかかるビジネスであるため、まだ利益創出できていないのです。

さらに売上拡大のためにはさらなる投資が必要ですから、国内事業の次なる柱になるはもう少し時間がかかるかもしれません。

 

最後に株価の推移をみてみましょう。

出典:株探

2020年以前から株価は下落していますが、2018年10月期から2019年10月期にかけて利益が伸び悩んだのです。わずか1%程度の減益でしたが、それまでは10%近い成長があったため、市場はネガティブに捉えられたのだと感じます。そして、その後にコロナ禍が訪れ株価が下落しています。

直近のPERは約15倍であり割高な水準ではないと考えます。特にコロナ前が30倍前後で推移していたことを考えると、利益は成長しているにもかかわらず、割安感が高まっています。

パーク24は業界内で圧倒的な地位を有し、市場の成長性もあると考えられます。この市場の立ち位置を考慮すると、パーク24は魅力的な企業であると考えます。急激な利益成長が起こるとは考えづらいですが、安定的な成長を達成できる市場の優位性があると考えます。ITを活用した効率性の向上などもプラスのトピックだと思います。

これらの情報をもとに投資判断をしてみてください。

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執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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