企業物流で突出した利益率を誇るハマキョウレックス(9037)。大化け株は地味な業種から生まれる

多くの企業が事業活動を行う上で不可欠なのが物流です。これはいくらインターネット社会が進展したとしてもなくなることはないでしょう。むしろ、ネット通販の隆盛により拡大傾向にあります。

拡大する3PL市場で突出した利益を誇る会社

物流業者と言って思い浮かぶのはヤマトホールディングス(9064)やSGホールディングス(9143)=佐川急便ですが、これらは家庭を回る「宅配業者」です。

道路を走っているトラックの多くは、その手前にある企業内・企業間物流を担っています。企業が自ら行う場合もありますが、最近は物流業者が一手に引き受けるサード・パーティ・ロジスティクス(3PL)が主流になりつつあります。

3PLとは、物流業者自らがセンターを持ち、顧客の商品や材料を運ぶものです。業種に合った物流の専門的なノウハウを蓄積し、顧客企業はより効率的に物流を行い、本業に集中できるのです。

3PLの市場は拡大を続けています。無駄なコストや労働を削減する社会の潮流の中で、需要を掘り起こす余地はまだまだ大きいと考えられます。

市場が拡大を続きますが、運送業者は決して大きく儲かっているとは言えません。大小の業者がひしめくことで価格競争が激化し、一方で人件費は高騰しています。各社とも数%の利益を何とか確保している状態です。

そんな中で、目立って高い利益率をあげている会社がハマキョウレックス(9037)です。規模としては中堅ですが、利益率は突出しています。これは今に始まったことではなく、長く続く傾向です。

ハマキョウレックスは、1971年に浜松で誕生した会社です。1990年代から3PLに乗り出し、事業を拡大させてきました。

【出典】マネックス証券

利益につながらないコストは徹底的に削る

その特徴は、徹底したコスト削減中小業者のM&Aにあります。

創業者で現会長の大須賀正孝氏(78歳)は、叩き上げで作り上げた経営哲学により、利益を出すことを徹底しています。これは、現社長で息子の大須賀秀徳氏(52歳)にも引き継がれています。

【参考】やらまいか物流通業 ~ハマキョウ流・運送屋繁盛記

コストの削減は決して無理をしているわけではありません。それは数字にも表れています。

各社の業績を見ると、どの会社でも売上原価は売上高の約9割で、ハマキョウも例外ではありません。これは、人件費や車両費をケチっているわけではないことを表します。

ではどこでコストを削るかというと、いわゆる販管費部分です。例えば、本社にお金をかけても利益は上がりませんから、そのような部分を徹底的に削減します

ハマキョウの売上高販売管理費比率はわずか2%です。他社はこれが5%程度です。10%の粗利益からこれだけの費用が引かれるわけですから、結果として営業利益率は8%と5%の違いとなってあらわれます

経営に困った中小事業者の「駆け込み寺」

他社より効率的な運営で得た利益が向かう先が、M&Aです。と言っても、同社は無理なM&Aで拡大しているわけではありません。あくまで、相談があった会社の事業を引き継ぐ形を取っています。

国内に運送業者はたくさんありますが、その多くは中小事業者です。彼らは十分な経営ノウハウを持っていないため、価格競争や人件費の高騰に苦しんでいます。それを同社が引き受け、経営を改革して黒字化しているのです。

こうして規模が拡大してくれば、より多くの物流センターの建設ができ、規模の経済が発揮できるでしょう。市場は拡大していますから、それに伴って会社は成長できるというわけです。

大化け株は地味な業種から生まれる

このままの経営を続けられれば、ハマキョウは安定成長を続けると考えます。

ただし、競争が激しく利益率の低い業態ですから、ちょっと気を抜くとたちまち業績が悪化してしまうリスクを負っていることには留意が必要です。すなわち、良くも悪くも経営次第ということです。

財務的には大きな問題は見当たりません。PERは12倍弱とこれまでや同業他社と比較しても平均的な水準です。下がる余地は小さいので、業績が拡大すればそれとともに株価も伸びることが想定されます。

地味な業種ですが、案外このようなところから大化け株が出るものです。今後の動向を注視したいと思います。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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