東京メトロIPOをおさらい!IPO投資で勝ち続ける方法

2024年10月23日に東京メトロがついに上場しました。

そして、初値が公開価格から36%アップしたということで、IPOの抽選に当選した方は利益が出せたのではないかと思います。

一方で、まだ持っている方や、これから買おうとしている方も多いのではないかと思います。

 

今回は、東京メトロの株価が上昇したのかということや、今売るべきなのか、買うべきなのかということ、そしてIPOとはどのようなものでどう取り組むべきかということを考えてみます。

初値で36%上昇!

出典:ロイター

公開価格が1,200円で、初値が1,630円ということで、IPOで100株当たっていて、初値で全て売っていたとすれば、120,000円が163,000円となり、43,000円儲かった計算になります。

IPOの初値で36%上昇するというのはかなり高い上昇率です。

初値で下がるということは失敗例となりますが、通常10~20%上昇すれば御の字といったところです。

 

しかし、素直に「上がって良かった」と言えない事情もあります。

東京メトロの公開価格が決まる前に公開した記事の中で、当時の目安の価格が1,100円となっていてかなり安いという話をしました。

【東京メトロ】ついに上場!今年最注目のIPO、買うべき?

1,100円という価格は、PERで言うと約13倍、配当利回りが3.3%くらいとなり、優良企業の東京メトロにしては安いものでした。
結果として公開価格は1,200円となりましたが、それでも利回りは3%以上ありました。

この価格ならおそらく買いたい人が殺到するだろうと思っていましたが、いざ上場してみるとやはり需要が殺到して人気化しました。

公開価格が安すぎた?

公開価格1,200円というのは果たして適切な価格だったのでしょうか。

IPOで投資家が買った購入代金が誰に入るかというと、東京メトロの株主である国や東京都となります。
要するに、その背景にあるものは税金です。
この売却によって、東京メトロの50%の株式、時価総額約1兆円のうちの5,000億円くらいが売り出されました。

もし、公開価格が1,200円という安い価格ではなく、例えば1,400円に設定していたなら、国と東京都にもう1,000億円くらい入ってきた可能性があります。

 

その1,000億円がどこに行ったかというと、もちろん投資家ということになりますが、その背景には証券会社の事情があります。

IPOは「抽選」ということにはなっていますが、厳密な意味での抽選ではありません。

IPOの株は、まず証券会社などの幹事会社に割り当てられ、それぞれの証券会社の中での抽選となります。
この抽選には証券会社の思惑が入り込むことになります。
IPOは抽選で当たったら初値では上がる可能性が高く、証券会社としては富裕層のいわゆる”太客”に割り当てた方がその後の取引につながりやすくなります。

 

公開価格が安く、初値で大きく上昇したということは、見方によっては、国や東京都の収入となるはずだったお金が富裕層に流れたと言えなくもありません。

 

今回の公開価格の値付けに関しては、安すぎたのではないかという疑念を抱かざるを得ません。

人気化

今回の東京メトロの初値の上昇は、単に公開価格が安すぎただけではなく、人気化したというところもありました。

人気化した一つの理由としては、配当が高かったことがあります。
配当性向が50%弱、利回りも公開価格で3.3%とかなり高かったです。

さらに、広報活動にも力を入れていて、テレビCMも流れたりしました。
東京メトロは良く知っている安心感のある企業で、配当が3%受けられるとなれば人気化することにもうなずけます。

今から買える?

IPOは”人気化”が肝で、抽選になると当然外れる人が出てきますが、外れた人にとっては「逃した魚は大きい」という気持ちになり、上場してから通常の取引に中で買う人が増えます。(セカンダリーマーケット)

こうして、初値は上がりやすい傾向となります。

 

初値の価格は企業の実態とはあまり関係ない場合もあり、IPOへの投資は心理の読みあいも絡んできて難しい部分が大きいということは覚えておきましょう。

 

上場直後は1,700円を超えるほど高い水準で取引されていましたが、PERは18倍を超え他の私鉄と比べて高くなりましたし、利回りも下がりました。

 

PERには成長性が反映されるものですが、東京メトロに成長性はあまり感じられません。
現存の地下鉄自体は日々人々が利用することによって運賃収入があり安定していますが、これから新しく線路を増やそうとすると莫大なお金がかかるので、路線を増やしても利益が出ない可能性もありますし、地下なのでJRや他の私鉄のように不動産事業もできません。

安定企業、配当銘柄としては良いかもしれませんが、成長はあまり望めません。

株価は上がらない前提で、2.5%程度の配当を受け取るという銘柄かなと思います。

 

安定感はありますが、PERも高く、下落リスクがある割にはメリットが弱いとなりますし、成長も期待できないので、今から買うこともないと思いますし、持ち続けて配当を受けるにしても他にもっと良い銘柄があると思います。

IPOとの付き合い方

ここからはIPOの一般的な話になります。

繰り返しになりますが、IPOは初値は上がりやすいです。
抽選で当たったとして、その後持ち続けるべきかを判断する必要がありますが、基本的には初値で売るくらいが手堅いと思います。

IPOで盛り上がり、初値は高くなりすぎることが多いです。
その後の株価推移を見ると、目もあてられないような状況になっていることが少なくありません。

 

庶民のIPO」のデータによると、2024年に上場した企業で、初値より上昇しているのは13社、下落しているのは47社となっていて(2024年11月4日時点)、大部分が初値より下落していることになります。
今年に限らず、初値より上昇している企業は2~3割で、大半は下落しているということです。

私の感覚では、最初に人気化した企業ほどその後は下落が続いている印象です。

 

この統計で興味深いことは、公開価格と現在の株価の比較です。

公開価格は証券会社がその会社の財務状況やすでに上場している同業他社と比較して割り出すものなので、ある程度妥当な価格となります。
公開価格と現在の株価を比べると、上昇している企業と下落している企業がほぼ半々となっています。

つまり、公開価格が高すぎることはあまり無く、一方で多くの場合は初値で大きく上がってあとは下がっていく動きになっているということです。

 

もちろん例外はありますが、IPOの抽選に申し込んで当たったら初値で売るということが一つの正解と言えると思います。

 

今回の東京メトロは規模が大きいので抽選に当たった方も多いかと思いますが、小さい企業のIPOは当たることがかなり稀であり、宝くじに申し込むような感覚でいるのが良いと思います。

長期投資とIPO投資

公開価格で買うのは抽選になるので計画的にできるものではありませんし、上場してからだと上がりすぎていることがほとんどなので買って勝てる可能性は低くなります。
何より、上場前の会社の情報は基本的に公開されないので、これまで何が起こってきたかが分からないですし、会社の年数が浅ければこれから何が起こるかも予想しにくいので、上場してすぐの企業は長期投資の対象にはなりにくいです。

 

一方で、初値から下がっていって、実は良い企業だけれども安くなっているということはあり得るので、狙うならそっちの方かと思います。

 

結局、長期投資というものは長く成長する企業に投資すればよいということで、特定のところに眠っているものではなく、幅広く探していくことになります。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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