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米国株式市場の「自己予言」とは?
私の中期的な株価シナリオは、この後一旦上昇し、2020年末にかけて調整に見舞われるというものです。
足元では米中貿易戦争による景気後退懸念がくすぶっていて、特にこの8月は不安定な動きが続きました。一方で、それがかえってFRBの金利引下げ機運を高める結果にもつながっています。
すでに10年以上におよぶ金融緩和により、市場にはマネーが溢れかえり、行き場を失っている状態です。ここで「予想以上の」利下げが行われることがあれば、マネーは脊髄反射的に株式市場に流れ込むことを想定します。
その流れを後押しするのが、2020年に控えた米大統領選挙です。
米国では一般の人も株式投資に積極的ですから、株価に敏感です。株価上昇は政権支持獲得のための生命線となります。トランプ大統領は自分が当選するまでは何としてでも株価を上げようとするでしょう。
そうなると、これからもFRBに圧力をかけて利下げを迫ることは容易に想像できます。それが良いことか悪いことかは別にして、短期マネーは儲けられる可能性のあるところに殺到するのです。
しかし、大統領選挙が終わったらどうなるでしょう。もしトランプ大統領が再選したら、当面の株価を気にする必要がなくなりますから、株価対策は休止される可能性があります。
再選されなかった場合においても、すでに下がりきった金利の引き下げ余地はありません。そこへ本格的な景気後退がやってきたら、いよいよ株価は底が抜けたように下落するかもしれません。
米国経済の7割は個人消費によって支えられています。消費は、株式市場の調子に大きな影響を受けます。株価が上がると消費が活発になる「資産効果」が生じるからです。
ここで株価が軟調になり始めると、今度は株価が下がることで消費が減退する「逆資産効果」が生じます。すると経済全体が縮小して景気が後退し、さらに株価が下がるという悪循環になるのです。
株価と個人消費が密接に結びついた米国経済では、このように株価が将来の株価を左右する「自己予言」が行われます。したがって、次に米国株が大きく下がるのは「株価が下がり始めた時」という、何とも難しい話になるのです。
このシナリオを描いているからこそ、私は割高に見える米国株への投資に慎重なのです。
想定シナリオに賭けず、バットを振り続ける
米国株に慎重な一方で、日本株のチャンスは大きくなっていると感じます。米国のPERは20倍なのに対し、日本株は12倍です(参考:myINDEX)。
ただし、難しいのは「優良成長株は30倍、それ以外は10倍」というような状況にあることです。もちろん優良成長株を買いたいのですが、それらはなお高い価格で据え置かれています。
例えば、今週紹介したリクルート(6098)は下がってもなおPER30倍を維持しています。
このような状況で、取るべき戦略は2つのうちいずれかでしょう。
- PER10倍の中から隠れた優良株を探す
- PER30倍の優良株が下がるのを待つ
シナリオ通りだとすると、2の戦略で2020年まで待てば良いでしょう。しかし、シナリオが当たるとは限りません。
株式投資では、一定の想定を置きながらも、それが外れたときのことを考えて行動しなければなりません。そうしなければ、丁半にかけるただのギャンブルになってしまいます。
もしシナリオが外れて上昇を続けたなら、ひたすらチャンスを逃し続けることになります。これでは頑張って株式投資を勉強している意味がありません。
現実的には、両方の戦略を取り続けるしかないと考えます。どちらも長期的に考えれば必ず結果を生むものです。大切なのは、一つのやり方に固執するのではなく、いくつかの武器を持ち、その時々の状況に応じて適切に使用することです。
野球で言うなら、ホームランも打てればバントもできる選手の方が、ただバットをブンブン振り回す選手より重宝されるでしょう。ノーアウト1塁なら送りバント、ツーアウトランナーなしならホームランを狙えば良いわけです。
もっとも、これを実践するためには1つでも多くの優良企業を知らなければなりません。バットを振り続けることが、ヒットを打つための唯一近道です。
私もこのことを心に留め、より多くの銘柄を調べ続けたいと思います。
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