日経平均9連騰!バブルへつながる「流動性のわな」とは何か?

日経平均株価が9連騰するなど、株価は上昇を続けています。連騰中の上昇率は6.6%にのぼりました。

「流動性の罠」とバブル

上昇要因は以下の2点が挙げられます。

  • 米中貿易戦争緩和期待
  • 欧州中央銀行(ECB)による追加緩和

米中貿易戦争に関し、まず中国が米国からの輸入に対する報復関税対象から一部の品目を外すと発表しました。それを受けてトランプ大統領はまず追加関税の発動を10月1日から15日に先送りし、さらに「暫定合意」も辞さないと発言しました。

急速に雪解けムードが高まったように見えます。

そこへECBが利下げ(マイナス金利の深堀り)および量的緩和の再開を発表したことも株価上昇の追い風となりました。

トランプ大統領はECBの利下げを、通貨(ユーロ)を下げて貿易を有利にするものだと捉えたため、FRBに対しさらなる金利引下げを迫っています。これにより、来週行われる会合での追加緩和期待が高まりました

米中貿易戦争と利下げは、この1~2年にわたって市場を動かし続けるテーマとなっています。しかし、どちらも決定的なものは見えてきません。

貿易戦争は単なる収支の問題ではなく、世界の覇権争いの様相を呈しています。かつて米ソが半世紀近くにわたってにらみ合いを続けたように、この対立も簡単に解決するものではないでしょう。

また、利下げすれば景気が回復するかというと、そう単純な問題ではありません。

金利を引き下げて効果があるのは、それが経済をとりまく人々の心理に影響を与える時です。金利が大きく下がれば、利息が高いからと控えてきた設備投資や住宅投資を実行しようという気になります。しかし、すでに10年以上にわたって低金利が続く環境では、今更下がっても大したインパクトはなく、投資や消費を増やすことにはなかなかつながりません。

金利を引き下げ続けることでその効果がなくなってしまうことを「流動性の罠」と言います。経済は金利に対して不感症になってしまうのです。日本は1990年代半ばにこの状態を経験しています。

余ったお金が行き着く先が、株式や不動産などの金融資産です。しかし、金融資産価格の上昇は本来価値の裏付けがあるもので、それを大きく上回る価格がつくことが「バブル」なのです。

すなわち、現在の株価上昇はバブルにもつながりかねない、危険な兆候と言えるのです。

上昇相場で焦る投資家は失敗する

それでは、私たちはどう行動したら良いでしょうか。

これだけの上昇が続くと、つい焦ってしまうものです。「なぜあの株を買っていなかったのか」「今から買っても間に合うだろうか」と。

しかし、この焦りこそが株式投資で失敗する最大の要因です。

株価は上がったり下がったりを繰り返します。長期的には上昇しているとしても、その中で必ずアップダウンがあるのです。

そう考えると、現在のように短期的に上昇したときに買ってしまったら、必要以上に高い買値となってしまう危険性があるのです。高い買値は、間違いなく低いパフォーマンスに直結します。

ここは、銘柄選択よりもメンタルの問題です。どんな銘柄を買うにしても、長期投資なら高い価格よりは安い価格で買ったほうが良いに決まっています。したがって、株価が上昇している今だからこそ、焦って株を買うのではなく、次に下がったときに何を買いたいか考えなければならないのです。

急いで成果を上げようとすると、失敗する確率は高まります。逆に、長期になればなるほど、成果はより確実なものとなっていくのです。私たちは、長いスパンの中でシンプルで間違いのない行動を続けていれば良いのです。

バリュー投資家は明日にでもお金持ちになれるとは考えていません。急いでお金持ちになろうとする人は、けっきょくはお金持ちになれないのです。時間をかけてお金持ちになるのは、ちっとも悪いことではありません。

ウォーレン・バフェット

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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