株価の下落要因とその後の回復はアメリカの経済構造を見ればわかる
今週の日経平均株価は3日(木)に大きく値下がりしました。下落幅は約500円と、1日の下落幅としてはなかなか大きな方です。
下落要因は、米国の製造業指数が予想を下回ったことです。50を下回れば不調と言われる指数が、今年に入って最低の47.8を記録しました。これは2015~2016年にかけてのチャイナ・ショックも下回ります。
グラフを見るとわかるように、この1年で製造業指数は明確に悪化しています。景気後退の足音はすぐそこに迫っています。
しかし、それでもダウ平均は下落後再び盛り返してきました。
その理由は米国の経済構造にあります。米国の製造業がGDPに占める割合は11%に過ぎません。これは1970年の25%、1990年の16%から大幅に低下しています。米国の製造業はほとんどが中国をはじめ海外に移転してしまったのです。
一方で、GDPの約7割を占めるのが個人消費です。米国人は一般的にあまり貯金をせず、クレジットカードを使って大量に消費しますから、これが経済を支えています。移民と、移民が生んだ子供による人口増加が経済を拡大させるため、米国人は心配することなくものを買い続けられるのです。
だからこそ、製造業の落ち込みなどどこ吹く風です。みんながクレジットカードをバンバン使い続ける限り、米国の勢いはとどまるところを知らないのです。
米国経済の脆さとは?次の暴落を引き起こす「事件」
しかし、実は米国経済も脆いところがあります。
彼らは資産の大部分を株や投資信託、不動産で保有しているので、これらの変動にはひどく敏感です。すなわち、株価が下がると慌てて財布の紐を締めるので、さらに景気が悪化して株価が下がるという悪循環に陥ってしまうのです。
つまり、米国経済は「これはもうダメかもしれない」という「ショック」にとても弱いのです。これまでも、リーマン・ショックをはじめ、ITバブルの崩壊、9.11、チャイナ・ショックなど、衝撃的なことが起きると景気・株価は敏感に反応しました。
したがって、次に株価が大きく下落するのは、ショックのきっかけなる「事件」が発生した時と想定します。具体例を挙げるとしたら、以下のようなものがあるでしょう。
- トランプ大統領の辞任(罷免)
- 中国不動産価格の暴落
- 大型企業の倒産・業績不振
もちろん、想定できないことが発生したときこそインパクトは大きくなりますから、全く別のところから事件が出てくるかもしれません。
すでに金利の逆イールドや中国経済の悪化など、様々な悪材料は出てきています。市場も強気一辺倒ではなく、むしろビクビクしながら投資している印象です。市場が暴落するための下地はすでに出来上がっているように見えるのです。
アメリカがくしゃみをすると、日本は肺炎になる
私たちは、この話を「アメリカのことだ」と他人事にしてはいけません。
米国がくしゃみをすると、日本は風邪をひくどころか、肺炎になってしまいます。以下は、日米欧の1株あたり利益の推移を示したものです。
これを見て分かるのは2点です。
- 日本企業は確実に利益水準を伸ばしている
- 日本企業の利益は景気に非常に敏感である
1について、コーポレート・ガバナンスの改善、株主重視の浸透によって利益率の向上や株主還元の強化が図られました。これによって、ほとんど伸びないGDPを尻目に、株式市場の魅力は高まっています。この10年で、日本株は米国に次ぐ上昇率を記録しました。
しかし、この一場面だけを切り取るとぬか喜びになってしまう可能性があります。2でわかるように、日本企業、特に大企業の利益は景気に非常に敏感なのです。リーマン・ショックでは多くの企業が赤字を記録しています。欧米の企業はそこまでひどくはありません。
その要因として、日本の大企業に景気敏感業種の企業が多いことが挙げられます。具体的には、自動車、電機、機械、化学などです。
すなわち、これまで増加を続けてきた利益も、景気が悪化すれば再び大きく減少してしまう可能性が非常に高いということです。
だから私は、足元の銘柄選択において、景気敏感銘柄をできる限り避けるようにしています。そこに該当するかどうかは、リーマン・ショックで赤字になったかどうかを判定基準にすることができます。
もちろん、みんなが避けるからこそ割安になり、投資妙味が出ることもあります。長期的な成長が見込まれる場合は、短期的な下落リスクを覚悟で投資する場合もあるでしょう。このさじ加減こそが、長期投資の醍醐味です。
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