経済格差は拡大する。あなたはそのままで良いのか?庶民と資本家を明確に分ける「リスクプレミアム」の概念

相場は短期的には上へも下へも動きますが、長期的な傾向は一貫しています

例えば、目下最高値を更新し続ける米ダウ平均株価は戦後70年間で150倍以上になりましたが、この間短期的なブレを除けばやはり上昇が続いています。

私たち長期投資家はこの一貫したトレンドにベットしているのです。

チャート全体像イメージ
【出典】BaseViews(リンクから拡大チャートが見られます)

「庶民」と「資本家」の明確な違い

このトレンドを形成している要因が、「経済成長」「リスクプレミアム」です。

「経済成長」は文字通り経済が成長し、株価を形成するファンダメンタルズが改善することを意味します。他方「リスクプレミアム」とは、「将来のことはわからない」と考える投資家心理によって株価が常にディスカウントされるため、経済成長に対して上乗せされるリターンです。

数年前に話題になった『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)はこのことを論じています。

この本の主題は「r>g」つまり、資本利益率(r)は経済成長率(g)を上回るということです。そのため、資本主義社会においては資本の成長が経済成長を上回り、金持ちはより金持ちになるという理論です。

格差社会が問題になりますが、これを見ればどういうことかわかるはずです。資本を持たない人は経済成長程度の果実しか得られませんが、資本家は複利によって時間が経つほど経済成長以上の果実を得ているのです。これでは、格差が拡大するのは当然と言えます。

すなわち、私たちが経済的に豊かになろうと思ったら「資本家」を目指すことが明確な答えとなります。株式投資はその最たるものです。

実際に「お金持ち」とされる人は一様に株式や不動産でお金を増やしています。会社を経営している人もいますが、それも「資本」の一種と言えるでしょう。

もともとお金があるからこれらを買うという側面もありますが、その後さらに株式や不動産で資産を増やし続けているのです。つまり、金融資産はさらにお金を生むのです。

逆に「一般庶民」はどうでしょうか。頑張って働いて「年収」のアップを目指します。しかし、少なくとも日本で働いている以上限界があり、一般的には1000万円くらいでしょう。しかも、所得税は累進課税なのでそれ以上に稼いでもほとんどが税金として持っていかれてしまいます。

1000万円から毎年200万円を貯金できたとしても、40年間働いて貯められる金額は8000万円です。その間に家を買うなどの出費があれば、残るお金はもっと少なくなるでしょう。

一方で、年200万円を投資し続け、平均5%のリターンを得られたとしましょう。すると、以下のグラフのようになります。

最初こそほとんど差はありませんが、40年後には8000万円と2億5000万円という差になります。これがまさに「一般庶民」と「資本家」の違いです。

毎年100万円だったとしても1億2500万円、200万円を20年間で考えても7000万円です。後者なら、退職金を合わせれば1億円が見えてくるでしょう。

こう考えると、投資家にとっては「老後2000万円問題」なんてどこ吹く風です。しかも、資本は老後になってもお金を生み続けます。老後までに資本を作り上げておけば、後は配当や家賃収入という形で無限にお金をもたらし続けるのです。

何が言いたいのかと言えば、私たちは今たくさんのお金があるかどうかにかかわらず、すぐにでも資本家を目指すべきだということです。幸い、株式投資なら10万円程度から始めることができます。

最近はスマホで1000円程度からの取引も簡単になっています。

目の前の1年や2年では目立った成果は出ないかもしれません。むしろそれが普通です。しかし、10年20年と重ねていれば、その差は歴然としたものになります。だからこそ、少しでも早く始めることが大切なのです。

庶民の「損はしたくない」という気持ちが資本家にさらなる富をもたらす

しかし、投資を勧めると必ず出てくる反論が「損はしたくない」というものです。実は、これこそが資本家にさらなる富をもたらす源泉となっています。

人は本能的に損を避けるものです。そして、損が出る可能性のある投資からは必然的に遠ざかろうとします。すると、株式などの資産は、本来の「満額」としての金額からディスカウント(割引)されることになります。

この「割引」が上で説明した「リスクプレミアム」なのです。つまり、本来株式が持っている成長性を人々が過小評価することによって、実際に成長を遂げたときには株式に投資した人は割引分を取り戻し、成長以上のリターンを得ることができるのです。

これが、一般庶民と資本家を分ける決定的な違いです。上記の数字で言えば、5%と3%の差である2%がリスクプレミアムということになります。

人が嫌がることを引き受けたて儲けが出るのは、ビジネスでも同じことが言えます。最近は多くの人が肉体労働を嫌がった結果、土木作業員の給与がかなり良くなっているそうです。特に働き手の少ない地方だと羽振りがよいという話を聞きます。

逆に言えば、多くの人が投資に向かわないからこそ、投資家はリスクプレミアムを得ることができるのです。私はできるだけ多くの人に投資してもらいたいと思っていますが、もし国民全員が投資するようになったら、投資家が得られる利益は目減りしてしまうでしょう。これはジレンマでもあります。

ただし、人が本能に逆らえない以上、そのような事態は起きないとも考えています。リスクプレミアムは永遠に続きます。だからこそ、私たち長期投資家はある意味で「安心」して投資を続けることができるのです。

No Risk, No Return(ノーリスク、ノーリターン)

この言葉を頭に入れて、今日も投資に励みたいと思います。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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