【フジクラ】株価6倍でもまだ伸びる?AIデータセンター需要の破壊力

今回取り上げる銘柄はフジクラです。

”電線御三家”とも言われる会社で、電線の会社なのですが、今業績が非常に大きく伸びています。
その大きな理由としてはデータセンターの建設があります。
データセンターが盛り上がっているのは生成AIの隆盛によるものですが、フジクラがどのようにしてこの生成AIの恩恵を受けて業績を伸ばしているのか、また、生成AI、データセンターの世界が今どのように動いているのかをお伝えしたいと思います。

1年で6倍!

まずフジクラの株価を見てみましょう。

出典:Google

1年前は1,000円くらいだったものが今は6,000円と6倍にもなっています。

なぜこれほど上がっているかというとやはり業績が良いからです。
営業利益の推移は、コロナ禍の2020年3月期は33億円で赤字スレスレ(最終赤字)でしたが、2021年3月期は240億円、2022年3月期は380億円、2023年3月期には700億円となり、2024年3月期は横ばいの700億円の予想でしたが、8月・11月の決算で業績予想を上方修正し、営業利益は1,000億円を超えるという話です。
営業利益700億円でも過去最高だったのですが、それがさらに50%くらい上昇するということで、株価としても反応するのは当然と言えます。

ここ数年で利益が3~4倍になっていて、株価が6倍ということなので、バブル的に上がっているわけではなく、業績の上昇を織り込んでの株価の上昇ということになります。

データセンター需要

改めて、フジクラはどんな会社なのでしょうか。

電線も今も作っていて、車のワイヤーハーネスなども作っていますが、特に大きな柱となっているのが光ファイバーです。
フジクラは光ファイバーの世界シェアで第2位となっています。

ただ、光ファイバー自体に大きな差はなく、世界シェア2位とはいえ光ファイバーだけで大きな利益を出せるわけでは必ずしもありません。

しかし、光ファイバーの周辺機器もやっていて、光ファイバー関係のものを総合的に売って利益を稼いでいる会社ということになります。

出典:フジクラ

融着接続機はフジクラが開発したもので、高いシェアを持っています。

これまでも光通信は発達してきて、それを軸に事業を進めてきたわけですが、ここに来てなぜこれほど業績が伸びているかというと、生成AIが関係してきます。

「生成AI」というと、ソフトウェアの話かと思ってしまうかもしれませんが、ソフトウェアを動かすためには必ずハードウェア(実体としてのモノ)を動かす必要があります。
つまり半導体です。
半導体を動かすことによって情報が処理できるわけです。

生成AIという技術はものすごく大量の情報を処理しなければならず、それが半導体の増大につながります。

半導体を組み立てたコンピュータがスマートフォンやPCになりますが、生成AIを今メインで動かしているのがサーバーです。
データ量が膨大になるということは、大量のサーバーが必要になるということです。

クラウドのサーバーは工場のような巨大な建物の中に詰め込まれていて、この巨大なデータセンターがどんどん作られている状況です。

クラウドの二大巨頭がAmazonとMicrosoftなのですが、本社のあるアメリカにデータセンターを置いておきたいということと、政治的な安全保障の問題、建設できる土地も多いということから、データセンターの数はアメリカが圧倒的に多くなっています。

フジクラの業績もそれを反映していて、売上高の7割は海外ですが、その中でもアメリカが全体の37.3%を占めています。
その推移を見ても、近年アメリカでの売上が急伸し、日本を逆転しました。
アメリカにも当然光ファイバーを提供する会社があるはずですが、全く足りずにフジクラの手も借りたいということで伸びているのだと思われます。

出典:フジクラ 事業説明会資料

出典:フジクラ 事業説明会資料

フジクラの製品は、データセンターをつなぐケーブルなどにも使われますし、データセンターの中にも使われることになります。
いろいろな部品もあるので、データセンターを新しく作るとなれば、たくさん納入してたくさん稼ぐということになります。

世の中のデータ量はまだまだ増え続けると考えられ、それに合わせてデータセンターも作り続けるしかありません。

そう考えると、フジクラの業績もまだ伸びるのではないかと思えます。
株価は先々の業績の成長まで織り込んでいるので、業績が伸びるからといって株価がどこまで反応するかは分かりませんが、ただそれにしてはPER27倍とそれほど高くはありません。

もちろん、生成AIが今後もしかしたら幻滅期のようなものを迎えるかもしれませんし、現時点ではマネタイズはできていないように見えます。
ただ、短中期的な観点ではフジクラに投資するのも面白いと思います。
もし今持っているのであれば、更なる上昇を見込んでも良いかもしれません。

同じ”電線御三家”に古河電工と住友電工がありますが、データセンターという観点で見るとやはりフジクラが最も恩恵を受けるでしょう。

『生成AI恩恵銘柄』他には?

これから生成AIの発展によってデータセンターがどんどん建設されるということで、フジクラもまだまだ恩恵を受ける可能性があります。

デーらセンターにはいろいろな企業が関連していて、建物を建設するゼネコンもそうですし、データセンター専門の会社が出てくるかもしれません。

アメリカで株式投資としても盛り上がっているのが、”冷却システム”です。
サーバーはたくさんの熱を発生させるので、それを冷やす必要があります。

サーバーを冷やすためにも電力が必要で、電力不足の要因なっています。

サーバーを冷やす装置を作っている会社に注目が集まっていて、例えばダイキンもサーバー用のエアコンが伸びているらしいです。

もっと大きな観点で言うと、「電力」があります。
電力が足りないので、発電量を増やさなければなりませんし、原子力発電所も動かさなければならないという機運も高まりつつあります。

しかし、日本において、データセンターに使われる電力は全体に対して1~2%程度で、これが仮に倍になったとしても全体に与える影響は大きくありません。
一方、アメリカのバージニア州ではデータセンターに使用される電力が州全体の25%、ノースダコタ州でも15.4%となっていて、元々の電力消費量が多くない地域ではありますが、これからさらにデータセンターが作られれば電力が足りなくなることは明らかです。

アメリカで電力が足りないということで、小規模な原子力発電所を作るという話もありますがそれはすぐにできるものではありません。
すぐに対応するためにはやはり火力発電ということになります。
火力発電で考えると、三菱重工のガスタービンが高効率で発電できるということで、実は三菱重工のガスタービンが売れて、発電銘柄としても伸びています。

もちろん生成AIを直接動かす半導体の関連銘柄も伸びていますが、半導体で今注目されているのは”省電力”技術です。
日本企業の中にも半導体の省電力化に寄与するメーカーは多くあるので、注目しておきたいです。

生成AIの盛り上がりから、「半導体」「データセンター」「電力」が非常に盛り上がっています。
株式投資を行うと世の中の流れを知ることができてとても面白いです。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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