【野村マイクロ】株価がピークの3分の1に…買うべきか、売るべきか

今回は野村マイクロ・サイエンスについてです。

株価が4月には6,000円以上あったところが今は1,500円くらいと、4分の1にもなっています(2024/12/18時点)。
一方でPERは6.4倍、利回りは約4.4%とかなり割安に見えます。
半導体銘柄ですが、果たして今が買いなのでしょうか。

重要度が増す「超純水製造装置」

栫井:半導体のスペシャリストである元村アナリストに詳しく解説してもらいます。よろしくお願いします。

元村:野村マイクロは「超純水製造装置」というものを手掛けている会社です。ものすごく純度の高い水を作る装置を作っていて、周辺機器の維持・メンテナンスも行っています。

栫井:いわゆる半導体工場にはどこでも必要な装置ということでしょうか?

元村:そうですね、半導体工場には必ず必要になります。

超純水は医薬品やパネルディスプレイにも使われますが、半導体に限って言うと、不純物が少しでも混入してしまうと不良品になってしまうので、ウエハを何度も何度も洗浄しなければなりません。超純水で洗浄することで、塵よりももっと微細なレベルの不純物を取り除く必要があるのです。

栫井:半導体の製造は空気も塵一つないクリーンルームで行って、水も当然塵一つあってはならないということですね。

元村:この超純水は年々半導体の製造プロセスの中で重要になってきています。なぜなら、半導体が微細化・高性能化しているからです。回路をより細かく設計するため、これまで以上に微細な不純物の混入も許されなくなっています。

つまり、半導体が高性能になればなるほど洗浄の工程が増えるということで、超純水はものすごく重要視されるようになったということです。

栫井:何かあるたびに洗ってきれいにしないとデリケートな商品はできないということですね。

サムスンにべったり

元村:近年の野村マイクロの売上を相手先別で見てみると、半導体向けが9割くらいになっています。

出典:野村マイクロ・サイエンス

2025年の直近期でも8割5分くらいあり、ほぼほぼ半導体業界に依存していることが見て取れます。

業績は右肩上がりで、資本効率性も改善の一途をたどっていました。

栫井:一時期はROE30%と驚異的な数字でしたね。

元村:そうやってものすごく注目された企業だったのですが、今期の中間期決算では対前年比でものすごく落ち込んでしまいました。

出典:野村マイクロ・サイエンス

営業利益は3分の1以下で、経常利益に関してはほとんど出ていません。

栫井:何があったんでしょうか。

元村:結論から言うと、主要取引先のサムスンの影響だと思います。

競合にはオルガノや栗田工業などがあるのですが、こちらは足元で対前年比+100%超えを達成している状況です。一方で野村マイクロはサムスンの売上比率が5割となっていて、どうやらここがコケたようです。サムスンは今アメリカに工場を建てているのですが、その顧客先が見つからないようで、ASMLの製造装置の導入すら遅らせているということです。

栫井:アメリカが政策として半導体工場を誘致していたと思うのですが、いざ工場を作り始めたら製品の出荷先が見つからないということですね。

元村:おそらく、サムスンのチップ自体があまり人気がないのではないかと思います。最先端品は台湾などで作られますし、そういったところに奪われてサムスンのアメリカ工場で作られるものに関してはあまり需要が無かったということだと思います。

出典:野村マイクロ・サイエンス

地域別の売上を見ると、米国の売上自体が対前年の上半期と比べて91%も落ち込んでしまっているということです。

栫井:逆に言うと前期がすごく伸びていたということで、野村マイクロの事業構造としては、大きな設備を売るというもので、毎回お客さんが買うわけではないので、買ってくれた時は伸びるけどそうじゃない時は何もないということになってしまうビジネスなんですよね。

元村:そうですね、設備投資に依存してしまうということですね。

栫井:アップダウンが激しいのは事業特性として仕方ないことだと思いますが、ただそれ以上に気になるのはサムスンにべったりということですね。

元村:かなり依存してしまっていますね。

栫井:日本の上場企業といっても売上の50%がサムスンとなると実質系列ですよね。

元村:そうですね。それで今苦しい状況となっていますね。

出典:野村マイクロ・サイエンス

受注高も公表されていますが、受注自体も最近は取れていません。

栫井:受注というとこの先1年の業績をほぼ見通すようなものになると思いますが、2022年9月の受注が盛り上がって2023年9月の業績は上がったけど、2023年2024年の受注が取れていないとなると2025年は苦しくなりそうだと考えられるわけですね。

元村:そうですね。

出典:野村マイクロ・サイエンス

業績推移の予想も出していて、2025年上期で落ち込んだ分が下期に乗っかってくるという計画を出していますが、先ほど言ったように米国が遅延している中で本当にこの業績が達成できるのか、更なる下方修正もあり得るのではないかということを市場は懸念しているように感じます。

栫井:そもそも受注が取れていないのにこんなに伸びるっていうのは合理性が見えないですね。

元村:工事の進捗具合で売上の計上が遅れているということを表現しているのだと思いますが、仮にこれが達成できたとしてもやはり足元の受注自体が落ち込んでいるので、その先の業績は疑問視されていると思います。

栫井:PER6.4倍、利回り4.4%という話をしましたが、業績予想が怪しいのでPERも怪しくなってきますよね。利益が半分になったとしたらPERとしては倍の12.8倍、利益が4分の1になるならPERは25倍くらいになるという感じですよね。

技術的な優位性は?

栫井:ここまで見てきたところ、サムスンにべったりでサムスンの動向次第で大きなダメージを受けてしまうということは分かったのですが、技術の部分ではどうなのでしょうか。

元村:プレイヤーは多くないので、参入の障壁はあるのだと思います。ただ、業界内で野村マイクロでなければならないというところはあまりないのかなと思います。というのも、おそらくこれまで顧客だったであろうSKハイニックス系列の企業が超純水製造も自社で行うと発表し、自社で作れるなら野村マイクロを使うメリットは無いのではないかと思われます。

出典:マイナビニュース

栫井:半導体というと、決して真似できないのではないかという技術が多くある中で、野村マイクロの超純水に関してはこうやってできてしまうということですね。世界的に見ても野村マイクロ、オルガノ、栗田工業という日本の3社が主なのですか?

元村:小さいところはちょこちょこあったりしますが、大きいところはこの3社ですね。

栫井:到底真似できないような高度な技術のところに比べるとそうでもないということで、実際利益率も元々それほど高くないですよね?

元村:そうですね。

栫井:これが本当に真似できないものであればそもそも利益率は高くなるはずですよね。

元村:TSMCは受託製造に特化していて、半導体の製造プロセスに特化するので、わざわざ超純水を自社ではやりませんが、半導体メーカーからするとある程度の製造ボリュームが自社であるのなら、製造装置も技術的に参入障壁がないのであれば自社でやるという動きが今後出てくるかもしれません。なので顧客基盤が大手1社にべったりしているというのはリスクになりますね。

栫井:野村マイクロは業界3位であって、1位の栗田工業と2位のオルガノは既に2027年まで受注キャパオーバーしているという話です。業界が盛り上がっている時は第3位にも需要が流れていって、3位だと元々が小さいこともあるので伸び率としては急伸ということになります。逆に言うと引きも早いという可能性がありますね。

元村:従業員数で見ても、オルガノは半導体以外もあるにしても野村マイクロの5倍くらいありますね。規模が小さいので業界の熱の煽りを受けやすそうではあります。

アップダウンの激しい半導体銘柄。どう買う?

栫井:そもそも半導体はどんな買い方をすればよいかということが気になると思います。アップダウンが激しいというのは野村マイクロに限った話ではありません。1つはシリコンサイクルがあります。そして、事業の特性としても、設備投資に必要ということが多いので、設備投資がある年はすごく良いけど、無い年はからっきしということもあります。さらに株式投資では先々を見越して行うので、すごく盛り上がったと思ったら一気に引くということもあります。こういったところへの投資はどうやったら良いと思いますか?

元村:私は超長期投資しかやってこなかったのでその観点で言うと、やはり5年後10年後も残っていて存在感を発揮しているような会社を見つけ出すということに尽きると思います。業界自体の変動はどうしてもあって、それを読み切ることは難しいとは思いますが、半導体業界自体が2030年に向けて今の2倍以上に市場が膨らんでいくことはおそらく間違いないと見られています。なのでその恩恵を受けるという意味では、この会社が無いと半導体は作れないというような材料や技術、装置を手掛けている会社であれば、半導体市場の拡大とともにその恩恵を受けることはまず間違いないと思います。そういう会社を選別することが一番大事だと思います。

栫井:半導体だったらなんでもいいというわけではなく、きちんと特性を踏まえてということですね。良い会社は間違いなくあるのでわざわざそうではない会社を選ぶことはないですよね。

元村:注目が集まっている会社はその時だけ波に乗っているという可能性もあるので、そこの目利きはちゃんとするべきですね。

栫井:逆にどんなに良い会社でも今半導体の株価はアップダウンが激しくなってしまいます。良い企業を選んでいれば不安になることもないですが、企業のことを知らないと不安になってしまうので、きちんと知った上で投資しましょうということですね。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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