新型コロナウイルスの経済への影響・・・良いシナリオと悪いシナリオとは?

ついに日本でも新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなる方が出てしまいました。この方を含め、武漢や中国への渡航歴がない人の罹患も次々に明らかになり、感染の拡大がますます懸念される事態になっています。

新型コロナウイルスの影響は経済へ・・・

ついに日本でも新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなる方が出てしまいました。この方を含め、武漢や中国への渡航歴がない人の罹患も次々に明らかになり、感染の拡大がますます懸念される事態になっています。

私が動画で推定した「武漢における感染者数16.5万人、死者1,000~2,000人」をすでに上回る勢いです。致死率が高くないがゆえに、ウイルスを持った人が世界中を動き回り、感染を広めています。横浜港に停泊するダイヤモンド・プリンセスはその最たる例です。

これだけ感染が拡大すると、ますます人や物の移動が制限されるでしょう。世界中の展示会が中止を余儀なくされ、国内の工場でも中国からの部品の入荷ができないために開店休業状態になっています。

すなわち、サプライチェーンが止まってしまっているのです。

目下、企業の決算発表が行われていますが、これには新型コロナウイルスの影響は反映されていません。数字となって現れるのが、5月頃、3月期決算発表ということになります。

おそらく、製造業を中心に悪い決算が発表されるでしょう。工場が動いていないのですから、営業活動のしようがありません。周辺業種へも少なからず影響を与えるでしょう。

良いシナリオ、悪いシナリオ

そこから先の反応は、2通りが考えられます。

1つは、生産停止からの反動増です。今工場が止まっている理由は需要がないからではなく、生産が再開すれば溜まった注文を急いでさばかなければなりません。工場はフル稼働し、遅れを取り戻そうとするでしょう。

新型コロナウイルスも「風邪」の一種ですから、4月頃には自然となくなると言われています。今後どれだけ拡大したとしても、夏頃には平穏を取り戻しているでしょう。

これは前向きなシナリオですが、もう一方は悲観的なシナリオです。

お金の流れは血液の流れと同じですから、一度止まるとそこに血栓ができてしまいます。動き出そうと思っても、詰まった箇所はなかなか動かすことができません。そうこうしているうちに、先の方まで流れなくなってしまいます。

そんなタイミングで5月の決算発表を迎えます。芳しくない決算が出れば、悪材料に敏感な投資家は一気に株式市場から資金を引き揚げるかもしれません。当然、株式市場は大きく値下がりすることになります。

株式市場が下落すれば、人々の心理も後ろ向きになります。設備投資を考えていた経営者も「今は止めておいた方が良いんじゃないか」と考え出すなど、今度は思考が連鎖していきます。これが心理的な影響による景気悪化の流れです。

どちらのシナリオになるか、断言することはできません。過去10年は、ネガティブなニュースで株価が下がっても、その反動で株価はさらに上昇するという展開が続いていました。誰かが言っていましたが、「上げ相場は本当にしつこい」というまさにその感覚です。

しかし、もっと長期的に見ると、経済は間違いなく循環します。いつまでも好景気が続くことなどありません。リーマン・ショック後の好景気はすでに例を見ない長さになっています。

「景気循環」の画像検索結果
【出典】毎日新聞

景気後退は必ずやってきます。問題はそれがいつになるか、何をきっかけとするかということです。確実なことは何もありませんが、新型コロナウイルスがその引き金となる可能性は決して低くないということを頭に置く必要があります。

やることは単純。しかし準備は欠かせない

なぜ私がこのようなシナリオを考えるのかと言うと、自身の行動を決めるためです。

前向きなシナリオになるのなら、特に何もする必要はありません。今持っている株の上昇を享受すれば良いのです。強いて言うなら上がりすぎた株を売るというだけです。

大切なのは、株価が大きく下がった時です。予め思考を整理しておけば、今なぜ下がっているのかを理解できます。

これをやっていないと、目の前の下落にパニックになり、「狼狽売り」をしてしまいかねません。少なくとも、バリュー株投資で求められる「暴落時に勇気を持って買う」という行動には出られないでしょう。

想定していた通りに下がるなら、買いたい優良銘柄に目をつけておき、いざ下がったら淡々と買うだけです。すでに頭の中に描いていることですから、心理的なハードルもさほど高くありません。

もっとも、そこからさらに下がらないという保証はありません。株価には誰も安全装置などつけてはくれません。だからこそ、最初の下落で全力で資金を注ぎ込んではいけないのです。これが資金管理の技術です。

大きく下落したら資金の一部で優良銘柄を買い、下落したらさらに資金を入れる。これをするためには、いくらまで買えるかという「予算」を考慮しておかなければなりません。私の場合「年間予算300万円」が念頭にあります。

大きく下がるタイミングは「年2~3回」です。買うタイミングはそう多くないことがお分かりいただけるでしょう。回数を限定することで、資金管理の方法も見えてきます。

結局のところ、この投資法は「下がった時に買い、上がった時は何もしない」ということに尽きます。何も難しいことはありません。しかし、それを実践するためには、普段から頭の体操が欠かせないのです。

皆さんもぜひ、ブログを読んで頭の体操を行い、いざとなったら動けるように準備しておきましょう。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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