【決算速報】日産自動車80%減益!株価急落!一時的な減益と違う本当のヤバさとは?カルロスゴーンがもたらした再起不能になりかねない負の遺産を解説します!

YouTubeに動画をアップロードしました。

以下は内容を文章化したものです。


日産が今期80%も減益になってしまう予想を出し、しかも配当も無配になってしまうということで、株価が非常に大きく下がっています。

■現在の日産は何が一番深刻なのか

通常、大きな損失を出すときというのは、固定資産の減損が原因であり、一時的な損失で利益が急速に減ってしまうという場合がほとんどです。

固定資産の減損・・不動産等の固定資産の市場価格が帳簿価額を著しく下回り、投資が回収できないと判断される場合に損失処理を行うこと

しかし、日産の場合恐ろしいのが、それが今回全くないのにこれだけ業績が悪化しているということです。

つまり、単純に自動車が売れていないということで業績悪化につながっているということです。

具体的な数値で示すと、自動車の販売台数が日本▲6.9%、北米▲12.8%、欧州▲13.7%となっています。

これだけ見ると、自動車市場自体がマイナスになっているのではないか?ということも考えられますが、ライバル企業であるトヨタやホンダを見ると、今期の販売台数に関してはほぼ横ばいとなっており、自動車市場全体を見ても同様となっています。

したがって、日産だけがとにかく売れていない!という状況だということです。

■なぜ、日産だけ自動車が売れないのか?

自動車市場全体の販売台数は横ばいなのに対し、なぜ日産だけ販売台数が大きく減少しているのでしょうか。

販売大きな要因としては2つあると私は考えています。

  • 販売奨励金

販売奨励金とは、本部が各ディーラーに対し、自社の自動車を売ってもらう為に、一定の台数を販売したら報奨金を支払うという仕組みです。

この仕組みがあることによって、ディーラーは販売奨励金を頼りにどんどん値引き販売をしていくという構図が出来上がります。

つまり、販売奨励金を積み増すほどディーラーは値引きがしやすくなり、結果的に販売台数は増えますが、その分利益が減ってしまうという状態になります。

これまで日産は、販売台数を増やす為に販売奨励金を積み増していく方針を取っていました、ゴーン氏の退任後、利益が確保できない現実を受け、販売奨励金を絞るという方向転換を行いました。

方向転換が行われたことにより、販売奨励金を頼りにしていたディーラーは値引きができず、急激に自動車が売れなくなるという事態に陥ってしまいました。

  • フリート販売

フリート販売とは、レンタカー会社やタクシー会社に買い戻し条件付きで大量に販売する方式です。

米国のレンタカー市場では車両の回転が速いので、まとめて販売することで、販売台数を確保することができます。しかし、この販売方式は、おおよそ通常よりも高い金額での買戻しを約束した売り方なので、利益自体はほぼ出ません。

さらに、買い戻した車は中古車市場に流れます。

その結果、日産の自動車が中古市場で多く出回ることにより中古価格が下がってしまうということになります。

先ほどの販売奨励金とフリート販売を含めて考えると、販売奨励金によって新車価格が値下げして販売される。フリート販売によって中古価格が下がる。

結果、日産は安売りのブランドではないか?という印象になりブランド価値の低下を招き、これによってあらゆる国で自動車が売れないという状態になりました。

■状況を紐解くと見えるゴーン氏の負の遺産

日産の自動車が売れていないという深刻な状況を紐解くと、

・今まで販売奨励金やフリート販売によって販売台数が水増しされていた
・水増ししすぎた結果、日産のブランド価値が低下した

ということが解ります。

これらはいずれも、目の前の数字をかさ上げすることを第一にしてきたカルロス・ゴーン経営の負の遺産ということになります。

■今後、日産の状況はどうなるのか?

今回の件で悪材料は出尽くした。という見方もあるかと思いますが、私は決してそうは思いません。

例えば、在庫評価損をするという動きも今回ありませんでしたし、まだまだ損失を出す可能性があると考えています。しかも、社長である内田氏の会見を見ていると「利益が出ていない地域から撤退するのか」という質問に対し、「撤退しない」というまだ危機感がないともとれる表現をしています。

この状況を見ている限り、日産の復活はまだまだ遠いのではないかと思います。

少なくとも、

・目の前の損失を出し切る
・儲からない地域からは手を引く
・リストラを行ってスマートになる

ということを実施して初めて日産の未来は見えてくると考えます。

自動車産業全体を見ると、電気自動車や自動運転、更にはカーシェア等、大きな変革が起こっています。

これまで通りにガソリン車を沢山販売して何とかしようという考え方ではもはや生き残ることは困難です。

日産にはリーフのような素晴らしい電気自動車もあります。それを活かすためにも、日産には生き残っていくために負の遺産を完全に出し切り、かつてゴーン氏が行ったリバイバルプランのような会社の再建計画が求められます。

それが行われない限り、日産の株は買うべきではないと私は考えます。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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