バリュー投資家が注目する業種/警戒する業種

バリュー投資家の視点は「多数派」とは異なります。市場から見過ごされている銘柄にこそ、割安株が眠っていると考えるからです。逆に、多くの人が群がる人気銘柄には思わぬリスクが潜みます。この記事では、最近の経済動向から、バリュー投資家として注目する業種と警戒する業種を紹介します。

バフェットも注目する原油関係

バリュー投資家として最もホットな業種は原油関係です。原油価格は2014年半ばごろより下落し、足下ではそれ以前の半値以下の価格となっています。

原油価格の下落に伴い、資源開発や石油元売り会社等の業績は悪化し、株価も下落しています。以下の記事で紹介した商社もそのうちの1社と言えます。

三菱商事と三井物産は今買うべきか?

2016.03.25

原油価格がさらに下がるのか、はたまた底を打って反転するのかは連日新聞でも大きく取り上げられています。しかし、私がこの業界に注目する理由は反転する方に賭けているからではありません

長期的に考えると、世界から原油の需要がなくなることは考えにくいです。したがって、原油関連企業の必要性がなくなることはないでしょう。この苦境を生き残ることができれば、むしろ企業体質は強化される可能性があります。

代表的な例がJXホールディングスです。同社は原油価格の下落で昨年度約1,500億円の経常損失を計上しましたが、これは石油在庫の価格を見直したことによる会計上の損失にすぎません。それを除くと約2,600億円の経常黒字となり、経営上は問題ないことがわかります

JXの付加価値は、石油精製や石化製品の製造にあります。つまり、原油に需要がある以上、企業の本質的な価値は原油価格とはあまり関係がないのです。原油価格が落ち着きを見せれば、業績も安定するでしょう。

さらに、石油元売り業界には再編の波が訪れています。昨年、業界2位の出光興産と5位の昭和シェルの統合を皮切りに、1位のJXは3位の東燃ゼネラルと統合することを発表しました。業界再編で競争相手が少なくなるほど、残った会社は利益を出しやすくなります

実は最近、ウォーレン・バフェットも米国の石油会社・フィリップス66に投資しています。この動きにも大いに注目すべきでしょう。

バフェット氏 株下落で大損の中、エネルギー会社に投資 原油の需要に着目?(ZUU Online)

スマホ関連の製造業には警戒

バリュー投資家が最も警戒するのは、株価が本来の価値を大きく上回ってしまうバブルです。今のところ、高すぎるPER水準にある業種は見当たりませんが、よく見るとバブルとは言えないまでも注意すべきところはあります。

輸出や海外販売比率の高い製造業は警戒したほうがいいと考えています。アベノミクスで円安が進行し、これらの企業は利益を大きく伸ばしました。しかし、逆に円高になれば利益が減ってしまうことを意味します。今のPERが正当化できる水準でも、利益が減るとなれば途端に割高となり、株価下落のリスクをはらんでいます。

スマートフォン関連の製造業は特に注意が必要です。最大市場である中国のスマートフォン普及率は昨年時点で74%を超え、成長が鈍化しています。円高とスマートフォン出荷台数の減少が同時に起これば、その会社の業績に大きな打撃を与えることになります。

スマートフォンの部品を供給する村田製作所は、表面上のPERは約15倍と平均並みですが、これはあくまで絶好調時の利益に対するPERです。為替やスマートフォン市場頭打ちのリスクを考えると、額面通りに受け取っていいかどうか、よく考えたほうが良いでしょう。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 5大総合商社の最新決算分析。資源価格下落でも好調な企業は?
    5大商社は注目度が高いセクターです。 これらの企業は日本独特のビジネスモデルであり、投資の神様ウォーレンバフェットからも一目を置かれる存在で...
  • ブラックマンデーの再来?暴落が起きたらどうする?
    最近の株式市場の様子を見ていると、多くの専門家がブラックマンデーと現在の状況が似ているのではないかと指摘されています。 ブラックマンデーは1...
  • 米国債への投資はアリ?米国債の特徴とリスクをアナリストが解説
    今回は米国債についてお話ししたいと思います。 皆さんご存知だと思いますが、現在、米国の金利が上昇しており、利回りで言うとおよそ5%になってい...
  • コマツの株価が上方修正でも22%下がる理由。買い時か?
    コマツの株価が急落しています。9月19日に4,509円をつけてから、1ヶ月半で22%近く下げています。 出典:株探 今回は「なぜ株価が下がっ...
  • 【最新決算分析】サイバーエージェントの株価が上がる3つの条件。Abemaは黒字化するのか?
    サイバーエージェントは注目度の高い企業です。 日本を代表するインターネット企業であり、AbemaTVの運営やウマ娘の開発などを行っています。...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す