98%の銘柄が下がる「総悲観」が到来!バフェットは含み損にどう対応するか?最も投資成績が良かった人の特徴

先週に引き続き、株価は大幅に下がっています。金曜は、東証一部の値下がり銘柄数が98%に及ぶなど、まさに「総悲観」の状況です。米国市場でも、10年国債利回りが過去最低水準を記録するなど、完全にリスク回避の動きがピークに達しています。

金曜の値下がり銘柄数は98%の「総悲観」

ただし、個別の銘柄を見ると、状況が悪くないと思われる銘柄まで下がっています。例えば、リーマン・ショックでも業績がびくともしないキユーピー(2809)ですら、年初から20%も値を下げています。PER的にも20倍と過去の水準から見て決して割高ではありません。

チャート画像

このような動きを見ると、投資家がいかに企業の業績などのファンダメンタルズではなく、市場の「雰囲気」で売買を行っているのかがよくわかります。

株価が「雰囲気」で動くのは、今に始まったことではありません。おそらく、相場が生まれてこのかたずっとそうだったと言えるでしょう。特に、短い期間で見るほどその傾向が顕著となります。

相場にこのような不安定な要素があるからこそ、素人がいきなり大儲けしたり、逆に百戦錬磨の玄人が不意に大損失を被ってしまったりするのです。それほど、短期の株価の動きは読むのが難しいのです。

だから、初めてから数週間や数ヶ月の成果を見て「自分は投資が下手だ」などと考える必要はありません。その成果は、たまたま良い時に始めたかどうかという「運」に尽きるからです。

しかし、賢明な投資家は、時間を味方につけて運を実力に変えていきます。間違いなく言えることは、成長している企業の株価は長期で見た時に必ず伸びるということです。利益が10倍になったのに、株価がマイナスになったという話は聞いたことがありません。

すなわち、相場の動きが読めないことを前提とすると、私たちにできることは、とにかく成長する企業を買うことです。そうすれば、目の前の荒波を超えてやがてプラスに転じ、そこから大きく伸びることになります。始めたばかりのポートフォリオが含み損かどうかなんて関係ありません。

バフェットだって含み損を抱える

指針となるのが、バフェットのポートフォリオです。以下は最新のアニュアルレポートに掲載されたポートフォリオです。

【出典】バークシャー・ハサウェイ 2019年アニュアルレポート

一番右の列(Market)から右から二番目の列(Cost)を引いたものが含み益です。これを見ると、1銘柄も含み損がないことがわかります。アメックスやコカ・コーラなど、昔から持っている銘柄ほど、含み益が大きいことがわかります。

しかし、2008年のリーマン・ショック後のポートフォリオを見てみましょう。マーカーを引いたものが含み損となっている銘柄です。

【出典】バークシャー・ハサウェイ 2008年アニュアルレポート

これを見ると、ほとんどの銘柄が含み損となっていることがわかります。バフェットですら、マーケットタイミングを図ることは難しいのです。

すなわち、私たちは目の前の株価の動きで売買を判断すべきではないということです。私たちが見るべきはあくまで長期の業績であって、目の前の含み損は一時的な相場の気分にすぎないのです。

この株価下落を受けて、割高感のある銘柄はかなり売られました。すなわち、この中から業績を伸ばせる銘柄を買って持ち続ければ、プラスになって大きく羽ばたく可能性が高いということです。長期投資を始めるには、かなり良いタイミングだと思います。

こういう話をすると「まだ早い」「株価が下がるのが不安だ」という声が聞こえてくるのですが、それは目先数ヶ月の話でしょう。私たちが見ているのは、数年後の未来です。一時的に含み損を抱えるかもしれませんが、長い目で見ればそれは問題になりません。

バフェットだって、相場次第では含み損を抱えることも珍しくないのです。それほど、市場の雰囲気は読めません。だからこそ、そのようなことは気にせず、ひたすら良い銘柄を探して安く買い付ける。今私たちがすべきことはこれに尽きるのです。

もう一度家計を精査し、買い終わったら気絶しておくのが正解

現在のような下落局面で、私は積極的に買いたいと考えます。そこで問題となるのが資金管理です。

買い進めていると、あっという間に資金がなくなってしまいます。特に、今のように下げ続ける局面では買っても買っても買いたくなる状況です。

少しでも安く買えたほうが良いのは間違いありませんから、なるべく後にまで資金を残しておきたい気もしますが、だからといっていつまでも待っていると買いのチャンスを逃してしまいます。

そんな中で、大きく下がった時に段階的に買い下がっていくというのが当社の方針ですが、普通の相場ではその回数を「年2~3回」と定義しています。しかし、今年はすでにこれだけ下げたので、私も余力が目減りしてきています。

こんな時に必要なのは、改めて資金余力を見直すことです。遊んでいる預金はないか、不要な保険を契約していなかったか、毎月の給与はいくら投資に回せるか。

また、メルカリなどが一般的になった今は、家電などあらゆるものを売って換金できるので、資金確保の対象となります。

私は最近、バイクを買ったので、それまで使っていたロードバイクをネットオークションで売りました。これで3万円です。微々たるものですが、積み重ねると大きくなります。何より、要・不要が明確になるので不要な物を買わなくなります。資金に困ったらぜひ試してほしい方法です。

もちろん、生活に必要なものを売ってはいけませんが、それ以外なら家計の無駄をなくすいいチャンスです。ここで見直しを徹底すれば、そもそもお金が貯まりやすい筋肉質な家計を作ることができます。

もっとも、それでもやがて限界はやってきます。買うだけ買ったら、あとは銘柄の見直しくらいで、他にできることはありません。そうなったら、良い銘柄を抱いて気絶しておく、それが長期投資でうまくいく一番の方法です。

以下のような話もあります。運用会社のフィデリティによると、顧客口座のパフォーマンスを調べたところ、最も成績が良かったのが「亡くなっている人」、次が「運用しているのを忘れている人」だったということです。

長期投資はこのくらいの気持ちで臨むことが大切です。くれぐれも、目の前の株価の動きに左右されてはいけません。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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