先週株価が上昇して一段落と思ったら、今週は再び大きく下落しました。日経平均株価は18,000円を割って推移しています。このような動きを見るにつけ、いかに上がったときに慌てて買うことが無用かを思い知らされます。
恐慌は金融を介して発生する。宿泊・飲食の先にある危険信号
アメリカでの感染拡大はとどまるところを知らず、街はロックダウンされたままです。各国政府は経済支援のためあらゆる政策を模索していますが、感染拡大が止まらないことにはどうしようもありません。全体感としては先が全く見えない状況です。
そんな中、3月調査の日銀短観が公表されました。企業の景況感を示す業況判断DIが製造業(大企業)でマイナス8となり、7年ぶりにマイナスに転じました。すでに明らかなことですが、経済は完全に不況入りしています。
特にひどいのが宿泊・飲食サービス業です。DIはマイナス59を記録し、壊滅的な状況を示しています。外国人観光客の激減に加え、国内でも外出・外食を避けるようになったことから閑古鳥が鳴いています。これらの中から倒産してしまう企業は少なくないでしょう。
新型コロナショックを受け、これから倒産する企業は過去に例を見ないほど増える可能性があります。そして、企業の倒産は銀行の融資を焦げ付かせます。
本来、銀行は倒産の危険がある貸付に対しては引当金を積んでいるのですが、今回は全く予期しないところからも倒産が出てくる可能性があります。そうなると銀行は慌てて融資を引き上げようとするので、ギリギリのところはとどめを刺され、倒産の連鎖が拡大してしまいます。このように「金融」を介して恐慌は発生するのです。
特に危険なのが地域金融機関です。10年前にリーマン・ショックの危機を乗り越えるため「金融円滑化法(モラトリアム法)」が行われました。これは、融資や返済条件の緩和を求めた他、10年以内に経営改善が実現するような計画を作れば返済条件を変えても不良債権として扱わなくてよいとされました。
これによって、銀行の融資姿勢はかなり緩んだと考えられます。経営計画さえあれば不良債権に分類しなくて良いのですから、低金利の中、貸出件数を増やすことが目の前の収益拡大につながります。その結果、金融機関には「見えない不良債権」が蓄積している可能性があるのです。
したがって、私は宿泊・飲食はもとより、地方銀行セクターに対しても厳しい見方をしています。メガバンクはすでに中小企業への融資からはかなり手を引いていましたから、影響は限定的と考えていますが、それでも一時的なショックは逃れられないかもしれません。
日銀短観から見える好調業種
しかし、厳しい言い方をすれば、私は倒産が経済にとって必要なものだと考えています。古いものが消え、新しいものが生まれない限り、経済は停滞していくからです。
目先は厳しい経済環境が想定されますが、長い目で見ればここで生まれたビジネスが大きく育つでしょう。戦後も、焼け野原の中からトヨタやソニーといった世界的な企業が誕生しました。
人は危機感がなければなかなか動きませんが、追い込まれると驚くべき力を発揮します。まさに「ピンチはチャンス」なのです。
そう考えて足元の日銀短観をもう一度見ると、悪いところばかりではないことに気が付きます
マークした業種が、この環境下で「景気が良い」と判断している業種です。「建設」や「不動産」は目の前の環境にすぐには影響されない遅行性があると考えられますが、「情報サービス」「対事業所サービス」はなお活況です。
これは、IT技術の発達と、それにようやく企業がついてき始めたことを意味していると考えます。
日本企業の生産性は、世界的に見ても最低水準です。それは仕事が属人的であり、また「空気を読んで」昔からのやり方を変えられないからだと思います。もちろん、働く人の高齢化が進んでいることも見逃せません。
しかし、今回の不況で非生産的な動きが見直されるとしたら、大きなチャンスが生まれます。はっきり言って、ITの活用はコストの低減と生産性の向上を同時に達成できるものです。合理的に考えれば、これを導入しない手はないのです。
巷では「働き方改革」と呼ばれていますが、これは「生産性革命」に他なりません。これでスリムになった企業は利益水準が向上するでしょうし、ITの導入を支援する企業の売上はどんどん伸びていくでしょう。
今のような局面だからこそ、私はそのような企業に注目し、積極的に投資していきたいと思います。この動きが本格的になるなら、戦後の焼け野原から立ち上がった日本経済のように、将来は明るいでしょう。私はその未来にベットしたいと思います。
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