緊急事態宣言後も自粛は終わらない。それでも私が株を買う理由は企業価値の本質にある。永続する会社は価値に対して割安だ!

今週、政府の緊急事態宣言が発出されました。新型コロナウイルスから人命を救うために、世界中の人々に良識ある行動が求められています。

緊急事態宣言後も自粛は終わらない

適切に行動すれば、新型コロナウイルスはやがて収束に向かうでしょう。ワクチンの開発や効果的な治療法が確立すれば、インフルエンザと同じです。無症状者も多くウイルスの致死率そのものは高くないと言われており、最悪の場合でも多くの人が一度感染することで免疫を獲得し、現在のような災禍にはならなくなります。

ただし、足元の被害を減らそうとすればするほど、経済への影響は甚大なものとなります。東京都では一部の業種に休業要請が出され、そうでなくても飲食店や観光業では閑古鳥が鳴いています。長引けば長引くほど、多くの企業・商店が倒産に向かうでしょう。上場企業も対岸の火事ではありません。

それでは、緊急事態宣言が終われば復活できるのかというと、そう簡単ではありません。ウイルスは完全には消えてなくなりませんし、無症状者も多いことから気を抜くとすぐに感染は拡大します。もし日本で収まったとしても、新興国も含めた海外からもたらされる可能性もあります。

したがって、緊急事態宣言後も自粛要請は続くでしょうし、入国制限も簡単には解けません。ワクチンや有効な治療法が開発されて普及しない限り、この状況は終わらないのです。人類は過去に経験したことのない類の困難を迎えています。

政府支出拡大→インフレは歴史が通った道

「政府の経済対策があるから大丈夫」と考える人もいるようですが、それは違います。リーマン・ショック後の経済対策は、元気がなくなった経済を奮い立たせるための「カンフル剤」でしたが、現在世界中で行われているのは今にも潰れそうな企業・個人を潰さないための「延命措置」でしかないのです。この延命措置をどこまで続ければ良いか、全くの未知数です。

状況が改善した暁には、飲食・観光業の活性化政策が行われると言われていますが、その頃どれだけの余力が残されているでしょうか。日本の財政は相変わらず厳しい懐事情ですし、それは海外諸国も同様です。財政政策そのものにはあまり期待しないほうが良いかもしれません。

もしそれでも、財政支出拡大や金融緩和を強行するとしたら、やがて行き着く先はインフレです。歴史上、特に戦前・戦後に無理な出費をした多くの国がこれを経験しました。第一次世界大戦後のドイツや第二次世界大戦後の日本が代表的な例です。

インフレになると実質的な国債残高は目減りしますから、国にとっては良いことづくめなのです。もちろん、それによって割を食う主体がいます。それが「債権者」「年金生活者」です。債券は紙切れとなり、貯金は雀の涙ほどにしかなりません。財政再建のために、増税と年金の実質的な削減も同時に行われるでしょう。

我田引水になりますが、そんな時こそ株式や不動産投資が有効な自己防衛手段となります。企業は物価が上昇しても、価格に転嫁することができますから企業価値は減りません。賃料が上がる不動産も同様です。

すなわち、私たちは単にお金を増やすためだけに投資するのではなく、自らの資産や生活を守るためにも投資を行うべきなのです。だからこそ私は、「安心できる企業」を「持ち続ける」ことを推奨しています。これらはいざという時にあなたを助けることになるでしょう。

「永続する会社が本当の利益をもたらす」

株価とは不思議なもので、緊急事態宣言が出されると一転、上昇に転じました。特に、自粛の影響を最も強く受けると思われる飲食業までもが上昇するというおかしな状況です。

【出典】Google
【出典】Google

考えられるのが、空売り勢の買い戻しです。緊急事態宣言を見越して株価が下落したことで利益を得、いざ発出されると反対売買で早めに利益を確定させたのです。売りの反対は買いですから、それによって株価が上昇することは珍しくありません。

この上昇はファンダメンタルズとは全く関係のない上昇ですから、市況が反転したなどと思ってはいけません。海外の感染者数がピークアウトしたと言って楽観視するような動きもありますが、それは目先の話であり、中長期的にはまだ何の解決も見ていない段階です。

これから企業倒産や経済指標など、悪材料がたんまりと出てくるでしょう。相変わらずそれによって株価がどう動くかは読めませんが、少なくとも飲食業などの危険なセクターに手を出す段階ではありません。

それでは株に手を出すべきではないかと言えば、それも違います。

長期、つまりコロナショック後も見据えた企業の状況を見れば、多くの企業がかなり割安な状況にあることは間違いありません

企業価値の計算で最も影響の大きいのは「永続価値」(ターミナル・バリュー)です。すなわち、大切なのは未来永劫にわたって生み出される利益であり、目先数年の業績の変化は誤差にすぎません。DCF法がわかる人ならよく理解できると思います。

これを理解できれば、私たちがやることは決まります。すなわち、

  • 潰れず
  • 長期的に成長し続ける企業を
  • 少しでも安い価格で買う

これに尽きます。特に最後のところは、今ならおおよそいつ買っても問題なく、悪材料でさらに下がるとしたらより有利な価格で買えるということにすぎません。

すなわち、大切なのは目先が上がるか下がるか予想することではなく、どんな材料であっても「下がったら買う」ことに尽きるのです。

心配しすぎることはありません。潰れない良い企業なら、必ずこのショックを乗り越えて大きく羽ばたきます。私たちができるのは、そのような企業をより「多く」買うことです。

 

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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