今回は今話題のDeNAについて、長期投資の視点で詳しく解説していきたいと思います。特に、近年の株価上昇の大きな要因となっているポケモンカードゲームポケット、通称「ポケポケ」の収益性と、DeNAという企業の実力について深掘りしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
急騰するDeNA株価の背景:ポケポケの驚異的なセールス
まず注目すべきは、DeNAの株価推移です。
特にここ1年ほどで株価は2倍以上に上昇しており、その勢いは目覚ましいものがあります。この株価急騰の大きな要因となっているのが、2024年10月末にリリースされたポケポケです。リリース前から事前予約の段階で好調なニュースが流れており、株価は徐々に上昇傾向にありましたが、リリース後にはさらに加速的な伸びを見せています。
DeNAとはどんな会社?
DeNAといえばプロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、DeNAの実態はゲームを中心とした会社と言えるでしょう。過去の業績推移を見ても、ゲーム事業が利益の大部分を占めており、かつては「モバゲー」というプラットフォームで一時代を築きました。
近年では、ライブストリーミング事業なども展開していますが、現状ではゲーム事業、特にこのポケポケの勢いがDeNAの業績を大きく牽引している状況です。

「なぜDeNAがポケモン関連のゲームを開発・販売しているのか?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。実は、2015年にDeNAが任天堂と資本提携を行っているのです。現在でも任天堂はDeNAの主要株主の一つであり、この提携を通じて、DeNAは任天堂の強力なIP(知的財産)を活用したゲーム開発を行うことができるようになったのです。過去には「どうぶつの森」のアプリをDeNAが開発した事例もあり、その実績が今回のポケポケの開発にも繋がったと考えられます。
ポケポケ大ヒットの理由:ユーザー体験を重視した設計
ポケポケがこれほどまでにヒットしている理由は何でしょうか? 実際にプレイしている私の子供たちの様子を見ていると、そのUI(ユーザーインターフェース)の良さが際立っています。まるで本物のポケモンカードをペリペリと開封するような感覚でゲームを楽しめるのです。1日に2回まで無料でパックを開封できるという手軽さも、多くのユーザーに受け入れられている要因でしょう。
DeNAはかつてモバゲーなどの携帯アプリを開発してきた経験から、どうすればユーザーにストレスなくサービスを楽しんでもらえるかが分かっているようです。このユーザー体験を重視する姿勢が、ポケポケの使いやすさ、楽しさに繋がり、幅広い層に支持されているのだと考えられます。
ポケポケの開発・運営体制にも注目すべき点があります。DeNAに加え、ポケモンのIPを管理する株式会社ポケモン、現物のポケモンカードを制作販売する株式会社クリーチャーズの3社が共同で運営・開発を行っています。さらに、DeNAと株式会社ポケモンの共同出資によって設立された株式会社ポケモンカードゲームディースタジオが、ポケポケの開発に特化して実務を担っていると考えられます。この体制からも、ポケポケにかける力の入れようが伺えます。
ポケポケの収益源:無料プレイと課金要素のバランス
ポケポケの主な収益源は2つあります。
1つ目はプレミアムパスという月額980円のサブスクリプションサービスです。これに加入すると、1日に開封できるパック数が増えたり、限定カードがもらえたりします。
2つ目はアプリ内通貨の購入です。アプリ内通貨を使用することで、パックをすぐに開封できたり、ゲームを有利に進めたりすることができます。
興味深いのは、ダウンロード数のシェアと収益のシェアの地域別割合です。

ダウンロード数ではアメリカが1位であるのに対し、収益では日本が圧倒的に高いシェアを誇っています。これは、日本のユーザーの課金率が高いことを示唆しています。一方で、ブラジルやフランスなど、ダウンロード数は多いものの課金に繋がっていない国もあるようです。しかし、台湾のように、ダウンロード数に対して課金シェアが高い国も存在します。私自身は無課金でプレイしていますが、それでも十分に楽しめているため、無課金ユーザーでも長く遊べる設計になっていることが、幅広いユーザー層を獲得している要因かもしれません。
ポケポケが業績予想を大幅に押し上げ
ポケポケのリリース後、DeNAの業績は大きく上がりました。2025年3月期第3四半期(2024年10月~12月)のセグメント損益は大幅に増加しており、これはまさにポケポケのリリース(2024年10月30日)後、わずか1.5ヶ月ほどの期間での驚異的な成果と言えるでしょう。

アナリストのコンセンサス予想も、このポケポケの好調を受けて大きく上方修正されています。アプリストアの月間セールス予測でも、ポケポケはLINEマンガやYouTubeといった強豪を抑え、堂々の1位を獲得しており、その勢いは本物です。
一過性のブームで終わらないか?
今のポケポケの勢いは疑いようがありませんが、長期投資の視点で見るといくつかの懸念点も存在します。
スマホゲームの多くは、リリース直後がピークで、その後人気が下降していく傾向があります。例えば、かつて大ヒットしたサイバーエージェントの「ウマ娘 プリティーダービー」も、リリースから2年ほどで収益は横ばいとなり、その後はコンソールゲームの展開などで再び成長を見せています。一方で、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のように、10年以上も売上を維持している長寿タイトルも存在します。ポケポケがどちらのケースに なるのか、今後の動向に注目です。

現在のDeNAのPER(株価収益率)は、コンセンサス予想ベースで約20倍となっています。もしこの業績を維持できるのであれば、PERとしては特に割高というわけではありません。しかし、DeNAは前期が赤字決算であったことを考えると、ポケポケの勢いが衰えた場合のリスクも考慮しておく必要があります。
DeNAの次なる一手:AIへのオールイン戦略
ポケポケで得た収益を元に、DeNAは新たな成長戦略を打ち出しています。それはAIへのオールインです。難波会長は、DeNAの従業員約3000人のうち、約1500人分の業務を生成AIによって効率化し、そこで生まれた余剰人員で新たな事業を立ち上げ、ユニコーン企業(未上場で評価額1000億円以上の企業)を次々と生み出すという壮大なビジョンを掲げています。
しかし、AI分野は現在多くの企業が参入しており、DeNAがどのように独自の優位性を確立できるのかは未知数です。DeNAの強みは、インターネットサービスとエンターテインメント分野における豊富な経験、そして何よりも人の心を捉え、楽しませるノウハウにあると考えられます。ゲームやスポーツ事業で培ってきたこの強みをAIと掛け合わせることで、新たな価値を生み出す可能性に期待したいところです。例えば、スポーツ分野では、AIを活用した選手の能力分析や育成支援などが既に試みられています。
まとめ:短期的な成長と長期的な課題、DeNAの未来に注目
DeNAはポケポケという大ヒットタイトルによって、足元では大きな成長を遂げています。株価もその勢いを反映して大きく上昇しており、今後の決算発表によってはさらなる株価上昇も期待できるかもしれません。
しかし、長期投資の視点で見ると、スマホゲームの寿命や、AI戦略の実現可能性など、いくつかの課題も存在します。
DeNAがポケポケの成功を足がかりに、AI分野で新たな成長の柱を築けるのか。あるいは、既存のエンターテインメント事業とテクノロジーを融合させ、独自のサービスを展開していくのか。今後のDeNAの戦略と実行力に注目していく必要があるでしょう。
短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、DeNAという企業の本質的な強みと、今後の成長戦略を見極めることが、長期投資においては重要になると言えるでしょう。
執筆者

佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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