これがあるから浜松ホトニクスは長期投資したい!凄みを解説

浜松ホトニクスは、投資家からの注目度が高く、多くの人がその実力に高い関心を寄せる企業です。調べれば調べるほど、すごい技術を持った会社だと感じられます。しかし、その凄みがなかなか伝わりにくいという側面もあるようです。
今回は、そんな浜松ホトニクスの「凄み」について、詳しく探っていきましょう。

浜松ホトニクスとは?「光を操る」その技術の核心

浜松ホトニクスは、端的に言えば「光を操る企業」です。人間の目では観測できないような非常に微弱な光を検知する技術や、光を出してその反応を見る技術 に強みを持っています。これらの技術を用いた部品やモジュールを製造しています。

出典:浜松ホトニクス 統合報告書2024

浜松ホトニクスの技術は、想像以上に様々な分野で活用されています。

医療分野

最も分かりやすい事例の一つが医療現場です。PETやCTスキャンなど、光を使って体の内部を観測する機器に、光を検知する部品やモジュールが使われています。これにより、切開せずに体の中の様子を知ることが可能になっています。歯医者さんで使用される歯のレントゲン装置にも、同社の部品が組み込まれています。

学術研究分野

研究機関でも広く使われています。電子顕微鏡や、素粒子研究、宇宙産業 といった最先端分野に貢献しています。特に、ノーベル物理学賞の対象となった素粒子(ニュートリノなど)を捉えるためのスーパーカミオカンデやハイパーカミオカンデでは、微弱な宇宙の光を検知する「光電子増倍管」が大量に使用されており、浜松ホトニクスはこの分野で世界シェア約9割を占めています。この技術のおかげで、ニュートリノやヒッグス粒子、重力波などの存在を確認することができ、ノーベル賞級の研究に大きく貢献しています。微弱な光の粒子の最小単位を捉えるこの技術は、宇宙の誕生や経過時間などを知る手がかりにもなります。

産業分野

近年特に伸びているのが産業分野、中でも半導体業界向けです。半導体の製造装置や検査機に同社の部品が組み込まれています。現在の半導体回路の描画には光(特にEUVなど微弱な光)が使われており、光に強い浜松ホトニクスの技術は不可欠な存在です。半導体の回路が正確に描かれているか、故障がないかなどを、ウェハに直接触れずに光を通して検査する装置にも、同社の部品が使われています。また、タイヤの内部の劣化や故障を、中身を開けずに検査する技術にも同社の技術が活用されています。

競合他社との違いと「唯一無二」の強み

光電子部品を作る会社は他にも国内(堀場製作所、サンテックなど)や海外(フランスのフォトニなど)に存在します。しかし、堀場製作所が自動車の排ガスや半導体の成分測定など「測る」ことに強いのに対し、浜松ホトニクスは光の検知や発光など「目に近い領域」に強みを持っています。海外の競合が軍事用を中心としているのに対し、浜松ホトニクスは宇宙研究などで圧倒的な存在感を示しています。
最も大きな違いは、「他には真似できない、誰も作れないものを持っている」様々な要素を内製化しており、顧客の「こういうことがやりたい」という要望に、これらの技術を組み合わせて応えられる会社は、世界的に見てもほとんどありません。

独自のビジネスモデル:カスタム受注と高い提案力

浜松ホトニクスのビジネスは、基本的に顧客企業からの「こういう製品を作れないか?」という依頼から始まります。顧客の抱える具体的な課題(例: 欲しい数値だけを正確に測りたい、他の数値が混じってしまうのを解消したいなど)を聞き出し、それに対して同社の技術で応えていく、という進め方です。

特筆すべきは、全製品のうち約70%がカスタム製品だということです。15,000点以上という膨大な製品バリエーションを駆使し、顧客が望む研究や装置を実現するための最適な部品やモジュールを開発・製造します。既存製品になければ、新しい部品を開発することもあります。

これは一般的な部品メーカーのように大量生産品を広く提供するのとは異なり、「多品種少量生産」で、唯一無二の製品を作り上げることで、競合に真似されにくい強固なポジションを築いています。そして、15,000点ものバリエーションがあることで、顧客の様々な要望に対して非常に幅広い提案が可能となっています。

「想像を超えた領域」への貢献

浜松ホトニクスの企業哲学からは、その技術者集団としての誇りと探求心が伺えます。

  • 「知らないことをできないことに価値がある」
  • 「誰も気づいてないニーズを先回りして把握する」
  • 「光技術への貢献は人類への貢献」
  • 「光の応用は想像を超えた領域で待っている」

これらの言葉は、まさに顧客との共同作業を通じて、既存の知識や技術の枠を超えた新たな価値を生み出し続けている同社の姿勢を表しています。彼らの想像すら超えるような応用分野が、これからさらに生まれてくるのかもしれません。

今後の展望:最先端技術の進化と共に

現在の浜松ホトニクスは、コロナ禍で一時的に高まった医療機器や産業機器の設備投資需要の反動 や、世界経済の停滞といった要因から、足元の業績が厳しい局面にあります。

出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

顧客企業が設備投資や研究開発に注力しづらい状況も影響しています。しかし、この状況がずっと続くわけではありません。

今後の展望としては、半導体のさらなる微細化、光半導体、そして量子コンピューター といった最先端技術の進化に伴い、同社の持つ光センサーや検知技術へのニーズはますます高まっていくと考えられます。世の中のニーズが自然と浜松ホトニクスを求める構造に変わっていく可能性があります。

また、現在、研究開発や設備投資に積極的に資金を投じており、これらの先行投資が将来的に実を結ぶことが期待されます。

出典:浜松ホトニクス 年次報告書

多品種少量生産が中心ではありますが、もし開発したカスタム製品の中から市場で広く使われる「当たり」が出た場合、それが同社の業績全体を大きく押し上げる可能性も秘めています。

長期的な視点で見るべき浜松ホトニクス

浜松ホトニクスは、日常生活でその製品を目にする機会は少ないかもしれませんが、「光を操る」唯一無二のコア技術を持ち、医療、学術研究、産業といった幅広い分野の最先端領域を技術で支えている企業です。カスタム受注と高い提案力という独自のビジネスモデルにより、顧客と共に未知の技術領域を開拓しています。

足元の業績や株価は変動が大きいですが、その技術力と将来的な応用分野の広がりを考えると、短期的な視点ではなく、10年、20年といった長期的な視点でその成長を見守るべき銘柄と言えるでしょう。

まさに「夢を買う」と言えるような、将来が楽しみな会社です。

執筆者

執筆者:元村 浩之

元村 浩之(もとむら ひろゆき)

つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。 大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。 長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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