【DeNA】「ポケポケ」人気はピークアウト?株価のこれから

今回は直近の決算発表で注目を集めたDeNAを取り上げたいと思います。特に、大ヒットしている「ポケポケ」(ポケモンカードゲームアプリ)の現状と、それがDeNA株の今後の見通しにどう影響するのかについて詳しく解説していきます。

DeNA株は、ポケポケのリリース前から期待感で株価が上昇し、直近の決算発表で大きく動きました。期待して購入された方も多いと思いますが、今後も持ち続けるべきか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

DeNA株価の推移:ポケポケへの期待と直近の下落

まず、DeNAの株価の動きから見ていきましょう。

出典:Google

昨年の7月、8月頃から株価が伸びてきました。この時期は、ポケポケの事前予約ランキングが好調だったことによる期待が高まっていたことが背景にあります。

そして、2025年1月頃には、第3四半期決算が発表されました。ポケポケは10月末(おそらく31日)にリリースされたので、この第3四半期決算には11月と12月の2ヶ月分の収益が含まれていました。この決算が好調だったことで、株価は大きく上昇しました。今後さらに良くなるのでは、という期待もあったようです。

しかしながら、直近の第4四半期(通期)決算が出たタイミングで、株価は下がってしまい、その後も下がり続けているという状況です。ただし、下がったとはいえ、まだ上がる前の水準よりは高い状況にはあります。

ゲーム事業とポケポケの動向

では、今回の決算はどのような状況で、市場はどのように反応したのでしょうか。

決算内容を見てみると、やはり最も注目されるのはゲーム事業、特にポケポケが含まれる部分です。
2025年3月期第3四半期のユーザー消費額(課金額)は946億円でしたが、なんと第4四半期は935億円と、前四半期割れとなってしまいました。

これには少し意外な印象を受けた方が多いのではないでしょうか。というのも、第3四半期はポケポケの収益が2ヶ月分しか含まれていなかったのに対し、第4四半期はまるまる3ヶ月分の収益が含まれるはずでした。そのため、第3四半期を超えてさらに伸びるのではないか、という期待が高かったのです。

なぜ前四半期割れに?伸び悩む海外市場

前四半期割れとなった要因を詳しく見ると、国内の消費額は上がっている一方で、海外アプリでの課金額が伸び悩んでいることが分かります。
ポケポケの世界のダウンロード数と収益シェアのグラフを見ると、全体の収益の41%が日本、そして2番手がアメリカで7%、その他にフランスや台湾などが大きい市場となっています。

ダウンロード数と収益シェアを比較すると、日本はダウンロード数の割に非常に多くの課金をしている傾向があります。一方で、ブラジルなどはダウンロード数シェアが10%と2番手ですが、収益シェアは「その他」に含まれており、こういった国で課金が伸び悩んでいる可能性が考えられます。やはり、ユーザーの割に収益の幅が大きいのは日本と言えるでしょう。

また、ゲームセグメント全体の損益を見ても、第3四半期の186億円から、第4四半期は176億円と減少しており、売上と同様に減益となっています。

このあたりの消費動向が、ポケポケに対する期待外れという形で株価にも現れていると言えそうです。

DeNAの他の事業は?ゲーム事業への依存度

ここで、DeNAがゲーム事業以外でどのように収益を上げているのかも見てみましょう。

DeNAのセグメント別の利益推移を見ると、ゲーム事業はポケポケの影響で非常に利益を伸ばしていますが、次に利益を出しているのはスポーツ事業です。横浜DeNAベイスターズなど、様々なスポーツ事業を展開しています。

一方で、ヘルスケア・メディカル事業は伸び悩んでおり、ずっと赤字を垂れ流している状況です。

また、ライブストリーミング事業(Pococha)も一時的に利益を伸ばしましたが、その後は沈静化しています。

こうして見ると、簡単に言えばゲーム事業以外はあまり儲かっていないのが現状です。したがって、現状はゲーム事業の動向にDeNA全体の業績が大きく左右されると言えます。

ポケポケの今後を予測する:過去のヒット作の事例

さて、第4四半期は収益が下がってしまったポケポケですが、今後どのような動きになっていくのでしょうか。まだ伸びるのか、それとも右肩下がりになってしまうのか、気になるところです。

少し過去のヒット作の動向を参考にしてみましょう。
参考になる事例として、サイバーエージェントの「ウマ娘」があります。

サイバーエージェントの事業別営業利益推移を見ると、ゲーム事業(黄色い部分)が2021年に大きく伸びているのがウマ娘の影響です。しかし、その後は利益がかなり沈んでいく傾向が見られます。

サイバーエージェントの四半期別利益推移をさらに詳しく見ると、ウマ娘がリリースされた2021年2月頃の直後の四半期で過去最高益(44億円)を出しています。しかし、そこから第3四半期には50%減とまではいきませんが、大きく減益していることが分かります。

この事例から、スマホゲームはリリース直後から約2年くらいが利益を大きく伸ばせる期間であることが分かります。勢いがある時はガッと伸びるけれど、そんなに長続きしないという特徴があると言えそうです。

もう一つ面白い例として、「パズドラ」があります。

パズドラは非常に特徴的で、リリースした2012年の翌年(2013年)に利益を伸ばしたのはもちろんですが、その後の2014年まで、2年間にわたって売上高を伸ばし続けました。その後は下がってはいきますが、2023年12月時点でも売上がしっかり立っている(400億円程度)というロングセラーとなっています。これはまさに「神がかっている」と言えるような大成功事例でしょう。

これらの事例を考えると、DeNAのポケポケが既にピークアウトしてしまったのではないか、というのが投資家の一番の懸念材料となっているのかもしれません。

ポケポケのダウンロード数と収益の現状

ポケポケのダウンロード数の推移を見てみましょう。

リリース直後の推移ですが、2024年10月にリリースされて、11月、12月とダウンロード数は伸びていきました。他の多くのアプリはリリース後ぐんと伸びて2ヶ月目からダウンロード数が減っていく傾向がある中で、ポケポケは2ヶ月にわたってダウンロード数を伸ばせたという点では、非常に良いスタートを切ったと言えます。

しかし、足元のダウンロード数の推移を見ると、上下しながらも、傾向としたはやはり右肩下がりになっていると言わざるを得ません。

重要なのは収益です。収益の推移を見ると、大きく収益が伸びるタイミングは、新しいイベントやアップデートがあった時です。例えば、2025年2月3日のクレセリアEXドロップイベントや、2月28日のテーマ拡張パックのリリースといったタイミングで、大きく収益が伸びています。新しいカードが手に入りやすくなる、パックが増える、といったところで収益が伸びやすい傾向が明らかに見られます。新しいカードが出たら早く手に入れたいと思って課金する人もいるのでしょう。

つまり、一度ダウンロードしてもらったユーザーが、こうしたカード拡張などのイベントを通じて、いわゆるユーザーの課金額を増やしていけるかどうかが今後の収益を左右する鍵となりそうです。

ポケポケの課題:アクティブユーザーと重課金

しかし、ここで気になるのが、アクティブユーザーに関するデータがないことです。決算説明資料には、マンスリーアクティブユーザー(MAU)のようなデータは見当たりませんでした。

当初のダウンロード数はポケモンの人気もあって非常に多かったはずですが、その後も使い続け、熱狂的にプレイする、特にスマホゲームの主な収益源となる「重課金者」をどれだけ作り出せるか、というのが重要になってきます。しかし、その肝心なデータがないのは少し残念です。当然、アナリストとしては最も欲しい情報だと思います。

現状を見ると、やはり「ピークを超えてしまったのではないか」というのが一番引っかかるところです。もちろん、今後全く収益がなくなってしまうわけではなく、DeNAの収益の柱であるゲーム事業をある程度支えていくとは思いますが、右肩下がりの傾向の中で、直近の第1四半期で見ても、2月のピークを超える収益は上げられていません。今後こうしたイベントでどこまで伸ばしていけるかが問われます。

ポケポケがヒットした理由の一つに、スタミナがなく毎日カードを開封できるなど、「めくる体験が面白い」というユーザーの声があります。毎日開ける楽しみがある前提でログインし、拡張パックなどで課金数を増やしていく、というのが理想的なユーザーからの収益ポイントでしょう。

ただ、これだと課金しなくてもかなり遊べてしまうのです。実際、栫井も子供と一緒に少しプレイしていますが、課金はしていません。子供たちには大人気で、課金しなくても遊べる、という点では非常に評価が高いです。

しかし、そこに重課金要素があるかというと、そこが課題なのかもしれません。大人がハマるようなゲームは、トップになりたい、勝ちたいといった競争意識から重課金するケースが多いと思いますが、ポケポケにはそういった要素が少ない印象です。ライトユーザーでも楽しめてしまうことが、逆に重課金につながりにくい要因となっている可能性もあります。

また、対戦ルールもリアルのポケモンカードよりかなり簡略化されています。初心者でもできるというメリットはありますが、やり込み要素が少なく、大人にとっては少し物足りないと感じる点もあるようです。頭を使ってやり込みたい大人にとっては、リアルカードの方が面白いかもしれません。

そもそも、このアプリはCreatures社(ポケモンカードゲームの企画開発会社)が関わっており、ポケポケをアプリ版ポケモンカードゲームの入り口とし、最終的には本物のリアルカードを購入してもらうことを目的としていた側面もあるのではないでしょうか。もしそうだとすれば、その点ではうまくいっているのかもしれません。

しかし、DeNAの収益という点では、確かにかなり利益を上げたのは間違いありませんが、「思ったよりも伸びていないな」という印象は否めません。

今後の新作開発と戦略:ソフトローンチとIP活用

正直なところ、こうしたスマホゲームは一時的にガッと伸びた後、右肩下がりになる傾向はどうしても避けられないと思います。そうなると、ヒット作を次々に生み出すしかありません。DeNAはそれに対して何か対策を講じているのでしょうか。

新作タイトルに関する言及としては、2026年3月期以降、従来の開発手法とは異なる新たなパイプラインを中心に開発を想定していると記載されています。従来型の開発による新規タイトルについては、現時点で案内はないとのことです。これは、まずはポケポケにしっかり注力していこう、というニュアンスもあるのかもしれません。基本的には、あまりお伝えできることはない、ということだと思います。

では、その「新たなパイプライン」とは何でしょうか。ゲーム事業の特徴として、先行投資が非常に大きいにも関わらず、ヒットするかどうか分かりづらいという点があります。これはDeNAだけでなく、任天堂のソフトなども同様です。特にスマホゲーム業界はヒット率が低い業界です。

その中で考えられる新たな戦略の一つが、「ソフトローンチ戦略」です。これは、未完成なままゲームをリリースし、ユーザーの反応を見てアップデートを繰り返しながら、長い時間をかけてユーザーと対話しながらゲームを作っていくという手法です。これにより、開発リスクを抑えながら新たなゲームを開発していく、という考え方です。

ヒット率が低いなら、とにかく試行回数(打数)を増やそう、早い段階で出してみよう、という考え方は理解できます。リスク回避の考え方としては一般的かもしれません。しかし、これができるのであれば他の会社も同じことをやるでしょう。中途半端なゲームが大量に出回ることになり、ユーザーが選ぶのが大変になるという側面も考えられます。打数が増えればヒットも出る可能性はありますが、個人的には、この手法だけでは、いわゆる企業の「経済の堀」(揺るぎない強み)にはなり得ないと思っています。

だとしたら、DeNAの強みを生かしたソフト開発をする必要があるのではないでしょうか。
例えば、今回ポケポケを出せたのは、DeNAという看板があったこと、そして任天堂と資本提携していること が大きかったはずです。任天堂のIPキャラクターを使ったゲームをバンバン出していく、というのが、ある意味一番確率が高い戦略なのではないかと考えています。

過去には、2015年や2016年頃にDeNAの株価がぐんと上がった時期がありますが、その時はまさに任天堂との資本提携発表があったのと同時に、「どうぶつの森」のアプリなどの開発を行っていた時期でした。これらはリリースもされています。大ヒットしたかというと少し微妙なところですが、そういった新しい期待がどんどん出てくるようになると、より良くなるのではと思います。

任天堂はスマホゲームを自ら本格的にやることはないでしょうから、DeNAは非常に良い立ち位置にいると思います。もっと任天堂のIPを活用できないのでしょうか。なんとか必死で説得してでもやる、といった意欲はあまり感じられないのが正直な印象です。

任天堂のIPをうまく活用していくことは、両社にとってWin-Winになる可能性があると思います。私としては、今の開発手法よりも、任天堂IPをうまく使える立場にあるという、本来のDeNAの強みをもっと生かすべきではないかと考えています。

AI戦略とDeNAの真の強み

DeNAは「AIオールイン戦略」も打ち出しています。AIにオールインする、ということですが、これをどう収益に繋げるのかが気になるところです。
AIを使うことで様々なことができるのは間違いありませんが、どちらかというと「使わないとどんどん負けていく」という側面が強く、「これを使ったら素晴らしいものができる」という世界ではないと感じています。

このAI戦略と、DeNAが現在行っていることを見ると、正直「何をやっているのかよくわからない」という印象を持ってしまいます。「強みなき戦略」は無意味だと感じてしまうのです。

では、DeNAの真の強みはどこにあるのでしょうか。

DeNAは元々モバゲーから拡大が始まったIT企業ではありますが、現在の事業構成(ゲーム、スポーツ、ライブストリーミング)を見ると、共通しているのは「消費者をいかに楽しませるか」というエンタメ性の高いコンテンツを扱っているという点です。

佐々木自身、DeNAベイスターズのファンで試合をよく見ますが、他の球団と比べてもエンタメ性が強く、楽しませようという意図がよく伝わってきます。

したがって、DeNAの強みとは、この消費者を「楽しませる」ためのマインドではないでしょうか。どうやったらより楽しんでもらえるか、ということを考えながら様々な事業を行っている点だと思います。

このエンタメマインドと、AIなどのテクノロジーがうまく連携できれば面白い可能性があるでしょう。ポケポケもユーザービリティが良く非常に楽しめるという点では、その能力は高いと感じます。

AIオールイン戦略を見ると、これは業務効率化に繋がるような印象が強いです。例えば、ライブストリーミング事業での配信審査業務の6割程度をAIで代替した、といった話が出ていました。これにより空いた人員を新規事業に振り向けるようですが、新規事業についてはまだ具体的に語れることはないようです。これは、新しいものを生み出すというよりは、まず業務効率化を進めている段階なのだろうと想像できます。

内部での業務効率化は良いとしても、外部に向けて「打って出る」となった時に、業務効率化アプリを売る、というのも考えられますが、やはりDeNAが強いのはゲームなど、エンタメ系の分野ではないかと個人的には思います。どうも、本来の強みと戦略がチグハグな印象は拭えません。

DeNA株に対する見方

さて、DeNAの株そのものに対する意見ですが、ポケポケがこうしてピークアウトした時点でもう株相場としては一度終わりかな、というのが個人的な見方です。

アナリスト予想ベースのPERを見ると、今期で10倍程度であり、決して割高ではありません。しかし、右肩下がりがある程度見えている状況です。

正直なところ、もし高値で買ってしまった方がいらっしゃるとしたら、どちらかというと損切りを検討した方が良いタイミングに見えています。もちろん、これが正解とは限りません。
ポケポケに期待して投資するという考えであれば、ちょっと残念な結果になる可能性があると感じます。AIオールイン戦略で今後すごいものを開発してくるんだ、そちらに期待しているんだ、という方であれば別ですが、ポケポケ自体はもう一度ピークをつけるのは難しいだろう、というのが私の印象です。

執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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