絶好調のアドバンテスト、リスクを解説

今回は、今非常に注目を集めている銘柄、アドバンテストについて深掘りしていきます。

多くの方がその好調な業績に注目している一方で、「リスクはないの?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、アドバンテストの素晴らしい点だけでなく、潜在的なリスクに焦点を当てて詳しく解説します。リスクを理解することで、過度に熱くならず、冷静な視点でこの銘柄と向き合うことができるはずです。

アドバンテストとは?半導体テストシステムの巨人

まず、アドバンテストがどのような企業なのかを簡単に説明します。

アドバンテストは主に3つの事業を展開していますが、その中核を成すのが半導体テストシステム事業です。このテストシステム事業は、売上高の約8割弱、利益の約9割を稼ぎ出しています。

具体的にどのようなテストを行っているかというと、製造されたチップが正常に動作するかどうかを検査する事業です。特に、SOC(System on Chip)テストシステムとメモリテストシステムがあり、近年はSOCテストシステムが大きく成長しています。SOCとは、様々な半導体を組み合わせて機械の頭脳を一つにまとめたチップのことで、昨今のAI半導体やスマートフォンのチップなどに使われています。アドバンテストは、この脳となるメインのチップをテストする分野で非常に高い成長を遂げているのです。

NVIDIAとの強固なパートナーシップが成長を加速

アドバンテストの主要顧客には、NVIDIAやインテルといったチップ設計会社、そしてTSMCのような半導体の製造を請け負うファウンドリ企業などが含まれます。中でも、NVIDIAとの関連性が非常に深いことが、アドバンテストへの注目度を高めています。

NVIDIAはAI半導体には欠かせないGPU(画像処理装置)を製造しており、アドバンテストはそのGPUのテストに不可欠なパートナーとして選ばれています。NVIDIAのチップが多く生産されればされるほど、アドバンテストのテストシステムの需要も高まるという構図です。

なぜNVIDIAとの関係がそこまで重要なのでしょうか?それは、テストシステムがチップの設計・開発段階から量産まで、様々な工程で必要となるためです。NVIDIAのようなチップ設計開発を行う会社がアドバンテストのテスターを採用すると、その後の工程、例えばTSMCのようなファウンドリや最終組み立てを行う企業でも、互換性や整合性を保つために同じアドバンテストのテスターが使われることになります。
つまり、NVIDIAのような設計会社の「心を掴む」ことが、この業界では極めて重要であり、アドバンテストはそれを実現しているのです。NVIDIAのアニュアルレポートでも、アドバンテストは重要なパートナーとして記載されています。

圧倒的な市場シェアと好調な業績

アドバンテストは、これから求められるチップの検査に必要な技術に焦点を当てて研究開発を進めており、その結果、競合である米国のテラダイン社を大きく引き離す高い市場シェアを誇っています。

特にSOCテスターの分野では、直近で56%のシェアを持っています。これはAI半導体、スマホ、高性能コンピューターに使われるチップのテスター市場で過半数を占めることを意味し、事実上ほぼ独占的な地位に近いと言えるでしょう。この、業界で最も伸びている高性能で複雑なチップのテスター市場をアドバンテストが抑えているため、半導体市場全体の拡大以上に、アドバンテストの業績は伸びている印象を受けます。

業績を見てみると、2021年3月期、2022年3月期以降に大きく伸びています。2024年3月期は一時的な落ち込みがあったものの、その後は再び成長軌道に戻っています。特に、足元の2025年3月期にかけての伸びは非常に大きいと予想されています。

この好調な業績に合わせて、株価も急伸しており、2023年から足元にかけて約1年半で約5倍にまで上昇しています。この急騰は、生成AIブームとNVIDIAのGPU需要の高まりに対する期待、そしてそれを上回る実績に起因していると言えます。

絶好調の裏に潜むリスク:冷静な視点を持つ

しかし、この絶好調のアドバンテストにも、その裏にはリスクが存在します。

需要減少

半導体需要の変動リスク 最も大きなリスクは、チップ需要の減少です。半導体業界には受給の波があり、需要が急減する時期が訪れる可能性があります。現在の生成AIブームやデータセンター投資の活発化によりチップ需要は旺盛ですが、この「青天井」の状況がどこまで続くかは不透明です。もし実需を上回るペースで生産が進めば、生産調整が行われ、アドバンテストのテスター需要が急減する可能性も考えられます。

また、高性能なAI半導体のようなチップは、検査に時間がかかるため、リードタイムを短縮するためにテスターが大量に必要とされます。そのため、アドバンテストは現在、この「生産におけるボトルネック」を解消する恩恵を受けていますが、逆に需要が少なくなれば、テスターの稼働率が低下し、新たなテスターの導入が控えられやすくなります。

顧客からの効率化圧力

テスターは現在の生産ボトルネックとなっているため、顧客側は、よりテスト時間を短縮できる技術や、1台で多くのテストができるような装置の開発をアドバンテストに求めています。もしこのような技術が実現すれば、装置の単価を上げることは可能ですが、必要なテスターの台数が減るというジレンマに直面する可能性もあります。現時点では新技術は実現していませんが、顧客からの圧力は今後もかかる可能性があります。

競争環境の変化とシェア低下の可能性

アドバンテストはSoCテスターで高いシェアを持つものの、過去には59%だったシェアが56%に低下しています。これは、GAFAMのようなNVIDIA以外の企業がチップの内製化を進める中で、アドバンテストではない競合のテラダイン社を選んでいる可能性も示唆されます。チップ設計会社が増えるにつれて、必ずしもアドバンテストが選ばれるとは限らないリスクがあるのです。
ただし、アドバンテストとテラダインは「2強」であり、パワーバランスは決して弱くなく、共同で技術開発を行うパートナー関係であるとも考えられます。

株価の過熱感と激しい変動

アドバンテストの株価は急速に伸びており、PERは約42倍、PBRは約15倍と、将来の期待がかなり織り込まれている状況です。
また、アドバンテストの業績はアップダウンが大きく、特に半導体設備投資は突然に抑制されることがあります。過去には、2023年3月期から2024年3月期にかけて一時的に業績が下がった時期もありました。

株価もこの変動に大きく反応します。例えば、2024年1月には1万430円を付けた後、4月には4703円まで半値以下に下落しました。これは半導体業界全体への懸念(いわゆる「トランプ関税ショック」など)を織り込んだもので、その下落のスピードと大きさは極めて大きかったと言えます。東京エレクトロンと比較しても、アドバンテストはAIチップ関連への依存度が高く、シリコンサイクルの波がより激しく、株価の変動も大きい傾向にあります。

このように値動きが激しいため、短期的な利益を求める投資家も多く参入し、株価の安定性を欠きやすい局面にあると言えるでしょう。下がり始めると、利益を確保したい投資家や、この会社の激しい変動を知っている投資家が一斉に売りに走る心理が働きやすいのも特徴です。

長期投資家としての付き合い方

アドバンテストは、間違いなく日本を代表する素晴らしい企業であり、中長期的に見ても成長が期待できる会社です。しかし、市場が特に盛り上がっているタイミングでの投資には慎重な判断が必要です。

長期投資家としては、株価が急騰している時に飛びつくのではなく、一時的に過度に売られ、行き過ぎた下落を見せた時こそ、むしろ注目すべきと言えるでしょう。会社のことを深く理解していれば、たとえ購入後にさらに株価が下がったとしても、「大丈夫だ」という確信を持って持ち続けることができます。

目先の株価変動に一喜一憂せず、最終的に数年後に資産が増えている、という状況が精神的にも最も楽な投資法ではないでしょうか。アドバンテストのような優良企業だからこそ、しっかりとその本質を理解することが大切です。

執筆者

執筆者:元村 浩之

元村 浩之(もとむら ひろゆき)

つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。 大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。 長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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