【浜松ホトニクス】大幅減益で下方修正!大丈夫なの?

今回は、2025年8月7日に発表された第3四半期決算で営業利益が対前年比71%もの大幅減益を記録し、下方修正に追い込まれた浜松ホトニクスについて深掘りし、その足元の状況と投資先としての見方についてお伝えします。

この2年間、業績が常に前年比を下回り続けている浜松ホトニクスに対し、「本当に大丈夫なのか?」と心配されている方も多いでしょう。この記事では、同社の現状を詳しく解説し、長期的な視点での投資価値を考察します。

浜松ホトニクスの業績、なぜここまで落ち込んだのか?

まず、浜松ホトニクスの直近の業績推移を確認しましょう。

2023年9月期第2四半期頃までは、売上高・営業利益ともに好調に推移していました。しかし、第3四半期から営業利益を中心に急激に落ち込みを見せています。特に、第3四半期単体での営業利益は対前年比で71%も減少し、非常に大きなインパクトのある数字となりました。これにより、同社は下方修正を発表しています。

実際、2023年9月期第2四半期以降、営業利益は常に前年比を下回り続けており、その落ち込みは直近でさらに深刻化しています。

株価も業績に連動する形で、2023年半ばから下落傾向にありました。2024年に入って一時的に底を打ち反転の兆しを見せたものの、直近の8月7日の決算発表を受けて、再び大きく下落してしまいました。

なぜ業績は悪化したのか?2つの大きな要因

今回の営業利益の大きな低下には、主に2つの理由が挙げられます。

  1. 元々想定されていたマイナス要因の計上
  2. 外部環境の変化による影響

それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

コロナ禍による特需の反動

浜松ホトニクスは、目に見えない微弱な光や放射線を正確に検知するセンサーやカメラを得意とする会社です。コロナ禍では、以下の分野で需要が急増しました。

  • 医療機器の需要増加:PCR検査、DNA解析、CTスキャン、細胞分析用のフローサイトメーター、感染症分析装置など。
  • リモートワーク需要:ノートパソコンに組み込まれるカメラ用センサー、半導体製造装置向けの部品・製品・コンポーネントなど。

これらの需要が一段落した後の反動減が、現在の業績悪化の一因となっています。

元々想定されていたマイナス要因

M&A関連コストの増加:前年に実施した2社の企業買収に伴うのれんの償却や販管費の増加が影響しています。買収した企業は研究開発型であり、すぐに収益に直結するわけではなく、研究開発や設備投資に費用がかかるためです。

出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

  • 買収企業関連で約97億円(当初の105億円から修正。)
  • 浜松ホトニクス本体のコストも約19億円増加

これらのコスト増は、対前年比の営業利益に影響を与えることが予想されていました。

外部環境の変化による新たな逆風

問題は、外部環境の変化による影響です。特に、粗利率の低下に伴う減少が42億円発生しており、その背景が注目されます。

出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

【北米市場の不調】
地域別売上高を見ると、北米は396億円から367億円へ減少(-7.1%)しています。一方で、日本は横ばい、欧州は15%増加、アジアも5.7%増加と、他の地域では好転の兆しが見えていた中での北米の不調が目立ちます。

出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

【米国政府の政策転換と米中対立の影響】

  • 研究費・助成金の削減、研究職員の大量解雇:トランプ政権下での米国政府の政策により、医療機関や研究機関に対する研究費・助成金が削減され、研究職員の大量解雇も行われています。
  • 米中相互関税によるコスト増加:米中対立による関税の不透明感と税率上昇が、米国医療機器メーカーなどに影響を与えています。

【中国からの製造部品や研究資材の供給コストが大幅に上昇】
研究機関や医療機器メーカーのコスト負担が増加し、設備投資や研究開発が滞る原因となっています。

【中国市場の鈍化と集中購買政策】

  • 米中対立や関税の影響で、欧米諸国からの医療機器輸入コストが上昇していると考えられます。
  • 中国政府は、CTやPET装置などの医療機器導入において集中購買政策を推進しており、中国製や韓国製の低価格機器を中心に調達を進めています。
  • 浜松ホトニクスは高付加価値な製品・部品を提供しており、低価格帯の医療機器メーカー向けでは利益率があまり高くありません。この政策により、浜松ホトニクスの高質な製品の販売機会が減少してしまっているのです。

 

このように、足元のトランプ政権の政策が、直接的・間接的に浜松ホトニクスの業績に多方面でマイナスの影響を及ぼしている状況です。他の地域で市場環境が好転し始めていただけに、投資家にとってはまさに「なんてこった」という状況と言えるでしょう。

浜松ホトニクスは「ロマン銘柄」

業績の不安定さとネガティブな要素が重なる浜松ホトニクスですが、私はこの会社を「ロマン銘柄」として捉えるべきだと考えています。

確かに、足元の業績も市場環境も悪く、この2年間は業績悪化が止まらない状況です。そのため、安定性を求める投資家には、この会社への投資は不向きと言えるでしょう。業績が市場環境に大きく左右される点は事実です。

それでもこの会社が研究開発やM&Aを継続しているのは、その技術がもたらす影響が計り知れないほど大きいからです。浜松ホトニクスは、世界中のあらゆる科学技術の発展に欠かせないものを創り出しています。

具体的には、以下のような分野でその技術が活用されています。

  • 量子コンピューター:次世代技術の筆頭候補であり、現在のパソコンの何百万倍も速く複雑な計算を可能にする可能性があります。その実現には、微弱な光を一つ一つ数えたり、非常に細かい動きを正確に捉える技術が必要であり、浜松ホトニクスはそのための特別なカメラや部品を提供しています。量子コンピューターの研究開発には不可欠な存在です。
  • 半導体・電気自動車(EV)バッテリー:これらの部品が正常に稼働するか、不具合がないかを分解せずに外部から検査できる装置に組み込まれるコンポーネントを製造しています。同社の製品がなければ、半導体業界の発展やEVバッテリーの生産効率向上は困難だと言えるでしょう。
  • 核融合レーザー:2023年7月31日に発表された核融合レーザーの長時間連続運転の成功にも貢献しています。この技術は、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー発電を実現し、地球環境を守る上で極めて重要です。発表時には株価も反応しました。

同社の技術を応用して研究開発を行う機関は数多く存在し、世の中の科学技術が浜松ホトニクス製品に支えられていることがわかります。

いつか花開く「ロマン」

これだけ多岐にわたる事業を展開しているため、どの製品が、いつ爆発的に需要を伸ばし、花開くかを正確に予測するのは難しいのも事実です。しかし、世界は浜松ホトニクスなしでは未来技術の開発が進まないというのもまた事実です。

いつかどこかで何かが花開く、その「ロマン」がこの会社にはあるのです。

株価水準とバリュエーション

現在の株価は2015年頃の水準に戻ってきており、業績水準も当時と同程度に落ち込んでいるのが現状です。しかし、当時と比較して浜松ホトニクスの製品ラインナップは拡大し、M&Aによって相乗効果が見込める海外企業も買収し、次の手を打とうとしています。

足元の下方修正により通期見通しが下がったとはいえ、PERは35倍と、決して安い水準ではありません。株価が下落したとしても、表面上の数字だけで見れば割安とは言えない状況です。
それでもこの会社に投資したいと決める要因は、やはり「ロマン」であると、私自身も中長期目線で見て思います。

まとめ:浜松ホトニクスへの投資は「未来」への期待

浜松ホトニクスの現状と中長期的な見方についてお伝えしました。現在の業績は厳しいものの、同社の技術が世界中の科学技術の発展に不可欠な「ロマン銘柄」であると捉えることで、中長期的な視点での投資が求められる企業です。

世界規模の科学技術の発展は、浜松ホトニクスの技術なくしては成し得ないと言っても過言ではありません。目先の市場環境や業績の変動に一喜一憂せず、未来を支える技術への期待を持って投資を検討することが重要です。

執筆者

執筆者:元村 浩之

元村 浩之(もとむら ひろゆき)

つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。 大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。 長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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