投資の人工知能 ”ロボアドバイザー” は使えるか

囲碁でプロ棋士に勝ち、自動車も運転するAI(人工知能)が話題になっています。投資の世界でも、AIの一種として “ロボアドバイザー” のサービスが始まり、投資家の関心を集めています。

日本でもロボアドバイザーが始動

投資の世界でAIを使うのは今に始まったことではありません。機関投資家の間では、金融工学を使用した ”クオンツ運用” として、以前から活用されてきました。最近では高頻度取引(HFT)が注目を集め、相場が乱高下する一因になっているとも言われています。

AIを個人投資家の資産運用にも持ち込んだのが ロボアドバイザー です。米国ではじまり、日本でもお金のデザインの「THEO」、エイト証券の「8 Now!」、みずほ銀行の「SMART FORIO」などのサービスが開始されています。

これらのサービスは、いずれも国内外の株式や債券等に投資するものです。いくつかの質問に答えると、リスク許容度や運用方針が自動的に判定され、その人に合ったポートフォリオ(資産構成)が組めます。

サービスの評価は高い

私も試しにポートフォリオを組んでみましたが、十分使えるものだと思いました。その理由として(1)世界中のインデックスファンドに投資すること、(2)手数料が安いこと、(3)ポートフォリオ構成が適切な(と思われる)ことを挙げます。

(1)インデックスファンドは、統計的にアクティブファンドよりも高いパフォーマンスをあげることが明らかになっています。インデックスファンドとは、市場の株式をほぼすべて自動的に組み入れていくもの、アクティブファンドとは、「プロ」が頑張って銘柄を決めるもののことです。つまり、いくら「プロ」が頑張って売買したところで、何も考えないで投資するのと変わらないか、それを下回る可能性が高いということです。詳しくは『ウォール街のランダム・ウォーカー』をお読みください。

(2)投資信託のパフォーマンスを下げる重要な要因として、手数料の高さがありました。販売手数料は平均で3%弱、信託報酬は約1.5%と、購入してからの1年間で約4%もの手数料を取られます。一方、ロボアドバイザーは信託報酬のみで1%以下におさまっています。投資信託と比較すると、十分に格安と言っていいでしょう。

(3)ポートフォリオの組み方は、ファイナンス理論に忠実だと感じました。投資ではリスクとリターンは相関しますが、同じリスクでも得られるリターンが異なることがあり、当然リターンが高い方有利になります。最も有利な資産の組み合わせを「効率的フロンティア」と言います。ロボアドバイザーによるポートフォリオは、効率的フロンティアを意識したものだと思われます。

効率的フロンティアについては、ロボアドバイザーだからこそできるものです。これを作るには過去の実績から割り出すわけですが、人がやると相当時間のかかる作業です。人工知能に任せることで、格安かつ一瞬でできるということになります。

投資信託よりおすすめできる

では、ロボアドバイザーに全て任せれば良いのかと言うと、必ずしもそうではありません。

ロボアドバイザーは、過去の実績から最適化を行うだけなので、未知の事象が起きると対応できないという問題が生じます。過去の実績を見て投資を行うことはよく「バックミラーを見て運転する」と例えられますが、それを地で行く結果になってしまいます。ただし、これは人が運用する場合も似たようなものです。

そして何より、この方法で大きな儲けが出ることはありません。あくまで「平均的」なリターンを「効率的に」得ることが目的の手法です。投資で大きな儲けが出る時は、平均から大きく外れないといけないわけですが、そうなる可能性はほぼないでしょう。

それでも、従来の投資信託やファンドラップと比較して手数料が安い上、理論的に「正しい」ポートフォリオを組めます。自分で考える場合と比較しても、手間がかからず確実です。「そつのない」運用をするには適していて、十分おすすめできます。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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